中国でかつて高級住宅よりも高価だった墓地が、今や消費者の冷たい視線にさらされている。

上海市にある高級マンション「湯臣一品」の価格をもしのぐ墓地が登場したのは、2023年のことだった。

中国最大手の葬儀関連企業、福寿園が販売を開始した上海・松鶴園の新しい墓地区画。わずか0.6平方メートルの三穴墓が45万7800元(約1020万円)で販売され、1平方メートル当たりの単価は76万元(約1690万円)に達した。

これはまさに「陰宅(あの世の住宅)バブル」の頂点を象徴する出来事だった。「葬儀界の茅台(中国の高級酒)」と呼ばれる福寿園の墓地ビジネスは、長年にわたり80%を超える高い利益率を維持してきた。

業績の急落

だが、こうした中、「陰宅バブル」の崩壊が始まった。25年上半期、福寿園は創業以来初の赤字を計上した。売上高は前年同期比で約44.5%減少し、純損失は2億6100万元(約57億9000万円)に達した。

かつての成長は目覚ましかった。福寿園の売上高は13年に上場して以来、6億1200万元(約135億8000万円)から23年のピーク時には26億2800万元(約583億2000万円)へと4倍以上に成長していた。23年の純利益は約10億元(約221億9000万円)に達していたが、わずか2年で業績は急転直下した。

同じく墓地販売を主な事業とする万桐園と安賢園も苦境に立たされている。25年上半期、万桐園の売上高は約1106万元(約2億5000万円)とほぼ半減し、利益は黒字から赤字に転落した。

墓所価格の変遷

墓所価格の急騰は、不動産市場と似たメカニズムで進んだ。墓地の供給が限られ、需要が安定しているため、売り手が価格決定権を握っていた。

中国民政部の統計によると、21年時点で中国全国の営利目的の墓地はわずか1443カ所しかなく、県・市・区の7割以上が都市部向けの公益性墓地を持っていなかった。この供給不足が墓所価格の高騰を支えてきた。

福寿園の営利墓地の平均販売単価は、17年の1基当たり10万2400元(約230万円)から24年には12万1200元(約270万円)に上昇した。これを平方メートル単位で計算すると、24年の平均価格は1平方メートル当たり24万2000元(約537万円)に達し、広東省深セン市中心部の高級住宅の価格を上回った。

消費者心理の変化

墓地を巡る消費者の購買態度は大きく変わった。以前は「先祖を敬う」という伝統的価値観と「メンツ」のために、高価な墓地を購入することが当然とされていた。英保険会社サンライフの20年の調査によると、中国の平均葬儀費用は約3万5140元(約78万円)で、平均給与の半年分に相当した。

しかし、消費者の価値観と経済状況の変化が消費行動を変えた。今では多くの人が高価な墓地を購入する代わりに、遺骨を一時安置所に預け、埋葬を無期限に延期することを選んでいる。

重慶市の例では、近年顧客の購買力が低下し、販売担当者は高級墓所の販売に苦労しているという。顧客は墓地を購入する代わりに、遺骨を保管し、埋葬時期を無期限に延期することを選んでいる。

福寿園も「販売促進策」に追い込まれた。同社の最新の財務報告書によると、高価格帯を減らして中価格帯の供給を増やした結果、営利墓地の平均価格は前年の1基当たり12万1200元(約270万円)から今年の6万3400元(約140万円)にほぼ半減した。

政策の影響

中国政府の政策も葬儀業界に大きな影響を与えている。24年末以降、全国で葬儀業界の大規模な整備が開始され、25年には民政部が「葬儀管理条例(改正草案意見募集稿)」を発表した。

この新規則では、遺体の搬送から防腐処理までの葬儀の主要な過程が政府の定価または指導価格の範囲に組み込まれ、事業者の価格操作の余地が大幅に制限された。

墓地面積にも「上限」が設けられ、単一の納骨区画の面積は0.5平方メートルを超えてはならないと規定された。政府は海への散骨や樹木葬などの「生態葬」を積極的に推進している。

上海では25年2月に「上海市葬儀サービス項目リスト」が新たに発表され、墓地の設置から遺体の搬送、保管に至るまでの価格がさらに制限された。

遺体の化粧料は以前、1体当たり基本的に500元(約1万1000円)からだったが、現在は最高でも150元(約3300円)以内に制限されている。墓地の維持管理費用は1平方メートル当たり最高45元(約1000円)、公益性遺骨安置施設の使用料は年間で区画料の1%を超えてはならない。

社会環境の変化

消費者が高価な墓地を購入することへの疑問も高まっている。墓地は購入時に高額なだけでなく、20年ごとに高い管理費を支払わなければならない。

親の墓を維持するための費用を、自分が亡くなった後に誰が支払うのか―。これに対して、省スペース型の生態葬は安価で、一部の地方政府は補助金まで出している。

このような変化は中国全土で見られる。

北京市では16年、省スペース型生態葬の割合が55.97%に達し、初めて半数を超えた。人口の多い広東省では25年までに、この割合が63%を超えた。

この現象は、消費者の選択の変化だけでなく、政府の政策と相互作用している。葬儀サービスが公益事業として位置付けられるようになるにつれ、葬儀で巨額の利益を得る企業の収益モデルは脅威にさらされている。

墓地バブルが崩壊する中、上海の福寿園松鶴園ではかつて人気を博した高級墓地区画が閑散としている。墓地の需要が減り、業績が低迷する福寿園は、目立つ場所に「特別割引」の看板を掲げている。

松鶴園の職員は「シンプルで節約的な葬式」の契約が増えていることを認めている。この変化は、消費者の価値観の変化を反映しているだけではない。省スペース型の埋葬方法への社会的シフトも表している。

一方、地方政府も積極的に動いている。江蘇省南京市では、海洋散骨をする家族に2000元(約4万4000円)の補助金を提供し、樹木葬などの生態葬を推進している。市民の墓に対する考え方も大きく変わってきている。

中国で高級墓所が売れない理由とは?高騰する価格と変わる消費者の選択
江蘇省南京市の南象山墓園

中国人の葬儀観は、より合理的で環境に優しい方向へと静かに変化している。(取材/RR)

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