アカデミーでは、全米各地から選抜された中学1年生から高校3年生までの有色人種の生徒13名が、作曲の創作面、技術面、ビジネス面についてリモート授業で学ぶ。
アカデミーの発案者はTikTokの音楽コンテンツ・レーベル提携部門のシニアマネージャー、ダニー・ギリック氏。同社が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の緊急食糧支援プログラムでAfter-School All-Starsと組んだのがきっかけだった。4月から具体的に動き出したが、ジョージ・フロイドさんの事件でさらに重要性が増した。
「これまで大事にされてこなかったコミュニティの生徒に、自分たちの声を届け、志を共にするクリエイティブな仲間とつながれるチャンスを提供する。そんなプログラムを立ち上げることにしました」と、ギリック氏は声明の中で述べた。
全4週間のコースにはスターらも手を貸している。TikTokとソニーは幅広いジャンルからアーティスト、ソングライター、プロデューサーを募り、プログラムに参加してもらった。その中にはグラミーを4度受賞したティンバランドや、リル・ナズ・Xの記録的ヒット曲「Old Town Road」を共作したJOZZY、ビッグ・ショーンの「I Dont F**k With You」やマック・ミラーの「Self Care」など数々のミリオンヒットを生んだプロデューサーDJ Dahiなどが名を連ねる。
さらにTikTokは、前述のアーティストやプロデューサーがそれぞれの作曲プロセスの裏側を披露するライブストリームも毎週配信する。第1弾はバンディエ・プログラムのディレクターを務めるビル・ワーディ氏の司会で、ティンバランドとJozzyの対談が予定されている。こうした対談はその週の授業にも絡んでいく予定だ。
人種の不平等は音楽業界でも長いこと問題視されてきた
アカデミーのカリキュラムを開発したのは、全米有数の音楽ビジネス専科のひとつ、シラキュース大学のバンディエ・プログラム。ソニーATVと、カリフォルニア週の教師サイラー・オニール氏も開発に協力している。オニール氏とワーディ氏はアカデミーの教授も務める。
「音楽はこれまでにも何度となく不平等に異を唱え、すべての人々の権利と自由を訴えてきました」。After-School After-Starsプログラム部門を担当するカルロス・サンティーニ氏は声明の中でこう述べた。「我々のアフタースクールプログラムは数々の都市で展開しています。こうした都市が抱えている問題には、COVID-19がもたらした不平等や、警察による暴行とジョージ・フロイドさんをはじめとする大勢の黒人の死によってまたも明るみになった根強い人種差別があります。このような素晴らしいコラボレーションをきっかけに、コミュニティ全体の声がもっと聞き届けられることでしょう」
人種の不平等は音楽業界でも長いこと問題視されてきた――6月に入ってから、ジャミラ・トーマス氏とブリアナ・アギェマン氏の音楽業界幹部が#TheShowMustBePaused(ショーを一時停止するべきだ)という活動を立ち上げ、そこからBlackout Tuesday運動がスタート。
TikTokをはじめ、いくつかの音楽企業やIT企業は黒人コミュニティの平等を訴える活動への寄付を発表。大手レーベルの中ではRepublic Recordsが真っ先に、今後音楽ジャンルに「アーバン」という用語を使用しないことを発表した。その後、ザ・レコーディング協会も、グラミー賞の「最優秀アーバンコンテンポラリー・アルバム部門」を「最優秀プログレッシブR&Bアルバム部門」に改名。だがいまだ多くの大手音楽企業からは、社内での大規模な修正は発表されていない。Blackout Tuesday運動以降も主張を続ける何人かの黒人幹部は、音楽業界の今後の発展のヒントとして、黒人アーティストや黒人スタッフ向けの指導プログラムや橋渡しの強化を提案している。
「幹部クラスや役員会における多様性の欠如が最大の課題です」。 iHeartMeadiaの編成副部長、テア・ミッチェム氏は以前ローリングストーン誌にこう語った。「こうした問題は、抜本的な戦略的行動プランでしか解決できません。まずは、若い黒人幹部の育成と指導、地位向上の仕組みづくりから取りかかっていくべきです。新しい人材をどんどん送り込んでいかなくてはなりません」
【動画】自転車で若者に突進する60歳男性、動画拡散で逮捕へ