第102回箱根駅伝(1月2、3日)で日大は総合10位となり、12年ぶりにシード権を獲得した。3年連続予選会敗退から箱根12度優勝の古豪を再建したのが、5月で就任4年目を迎える新雅弘監督(65)だ。

岡山・倉敷高を全国高校駅伝3度の優勝に導いた名将は、速さよりも強さを重んじた土台づくりを徹底。学生の主体性を重んじた独自の調整法で復活に導いた。1期生の新エース候補・山口彰太、新主将の聡太の双子兄弟(ともに4年)らとともに、シード定着を目指す1年をスタートさせた。

 箱根駅伝シード校復帰から定着へ。日大が次の段階に進むための大事な1年だ。新監督は「来年の箱根はシードを確実に取る」と力強く意気込む。26年1月。長きにわたり低迷してきた名門の92回目の箱根路は、復活を印象づけた。2区から10区までシード圏内を安定して走り、総合10位で12年ぶりのシード権を奪回。好成績で施設の管理や合宿費など大学側の支援も手厚くなったという。

 箱根後も快進撃は止まらない。2月の日本学生ハーフマラソンで、新エース候補の山口彰太が日大日本人歴代最高記録の1時間0分54秒で8位。

双子の弟で新主将の聡太も1時間2分17秒の自己新記録。さらに4月から、5000メートル13分44秒74の岡山県高校記録を持つ首藤(しゅどう)海翔(1年)=倉敷=ら有望選手も加わった。

 箱根伝統校を再建させたのは、3度の高校日本一を誇る指揮官の手腕だ。練習メニューは一律ではなく、ビルドアップ走やペース走、ジョグ、補強など複数の選択肢から選手個々が選ぶ。「自分の体調と対話しながら決めてほしい」と故障を防ぎながら主体性を育てる。さらに、指揮官が求めるのは速さ以上の強さだ。「トラックの集団走で28分30秒は1人で走った時の29分30秒くらいだと思う。自分で走って28分50秒を出せる、そういう強い選手をつくりたい」。単独走でも崩れない強さが、駅伝で戦うための条件だと強調する。

 前回の箱根では1万メートル28分台ランナーを17人そろえ、「日大史上過去最速布陣」と話題を集めた。それでも、指揮官は「風が吹いたらすぐ吹き飛ぶ28分台」と冷静に振り返る。箱根シード校定着へ、鍵を握るのは新監督1期生となる4年生だ。

聡太主将は「目標が上がった分、生活の部分とか練習の部分も、もう一段レベルを上げていかないと」と責任感を燃やす。彰太は「4年生の力って、すごかったんだなって思わせられるように」と意気込む。

 指揮官は就任時に「3年で箱根出場、5年でシード獲得」と掲げた目標を1年目で箱根出場、3年目にシード復帰と前倒しで達成してきた。今季は10月の出雲駅伝にも16年ぶり(12年前は台風のため中止)に出場し、箱根予選会の時期も強化を積み重ねる。「夏の合宿で鍛えて、再び良い意味で期待を裏切ってくれるようなレースを」と新監督。「古桜復活」への誇りを取り戻すシーズンへ。桜色のタスキが大学駅伝界の台風の目となる。(綾部 健真)

 2年生のホープ・奥村櫂陸(かいり)、後藤玄樹(いぶき)、岸端悠友(ゆうと)の3人が1月から2月、男子マラソン日本記録保持者の大迫傑(34)=リーニン=の米国での高地トレーニング合宿に初参加した。

 きっかけは、昨年5月から大迫が日大陸上部グラウンドで練習を行っていること。練習時間は入れ違いだが、新監督が「何かコラボレーションできないか」とお願いしたところ、若手育成を志す大迫側が快諾。3人は約3週間米国の大迫宅に住み込み、3月の東京マラソンに向けたトップランナーの質の高い調整を体感した。会話も交わし、後藤が「血液状態の計測による最適なペース配分」を学べば、奥村も「食事量の多さや絶対にレースを外さないコンディションの合わせ方」と大迫の求道者的な自己管理に衝撃を受けた。

「箱根でいい走りをして、遠征に選んでいただいた期待に応えないといけない」と岸端。“大迫効果”も日大完全復活の力に変えていく。

 ◆新 雅弘(しん・まさひろ)1961年1月28日、兵庫・上郡町生まれ。65歳。中学では剣道部に所属しながら駅伝大会に出場。岡山日大高(現・倉敷)で本格的に陸上を始める。3年時に主将で全国高校駅伝初出場に貢献。79年に日大入学。箱根駅伝は4年時10区11位。83年に実業団の日本電気HEへ。86年に引退し倉敷の教師、陸上部コーチ。94年監督昇格。

2023年4月に退職、同5月に日大駅伝監督就任。

 ◆日大 1921年創部。箱根駅伝には22年の第3回大会で初出場。35年からの4連覇を含め、歴代3位の優勝12回。出雲駅伝は優勝5回。全日本大学駅伝は優勝3回。学生3大駅伝通算20勝は駒大、日体大に続き、早大と並んで3位。長距離部員は48人、学生スタッフ10人。練習拠点は世田谷区。タスキの色は桜色。主なOBはマラソンで五輪3大会出場の宇佐美彰朗氏、箱根駅伝2度出場の俳優・和田正人ら。

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