独自の馬づくりで仕上げる愛馬とG1初制覇へ挑む。「馬に恨まれて蹴られたり、かみつかれたりするホースマンにはなりたくない」。

千田調教師が送り出すパラディレーヌは昨年のオークス4着、秋華賞3着、エリザベス女王杯2着の実績馬。前走の福島牝馬Sは8着に敗れたが、「元気が良すぎたね。小回りも良くなかったし、人間の方のイレ込みも伝わったかな」と悲観はしていない。

 馬を心から愛している。「馬は元気なのが一番だよね。ちょっとでもリスクを減らしたい」。調教でも目を引くような時計を出さないのはそのためだ。追い切り後には塩を摂取させ、鞍も不安を与えないように、必ず2人がかりで外す。「家だからね。中ではなるべく自由にしてほしい」と、馬房の中は最低限の馬装で過ごさせている。

 騎手時代の88年から95年は伊藤雄二厩舎に所属。G1級12勝の名伯楽の下で見習いの頃から重賞馬の調教をつけ、馬乗りとしての腕前は関係者も一目置くほどだった。

「ジョッキーをやってて、馬は鍛えて走るよりメンタルで走るなって、一番思ったんでね。元気のいい馬じゃないと走らない」と精神面を重視する。

 騎手時代の90年代、尊敬する武豊と米国修行を経験した。「イエロー」と呼ばれながらも、厩舎を回り、乗り鞍を確保する日々。1勝を挙げたが、厳しさはよく知っている。坂井がフォーエバーヤングと昨秋のBCクラシックを制したことは信じられない偉業だ。「だからもう俺からしたら坂井瑠星なんて神様だよ(笑)。俺が生きているうちに勝つんだと思ったもんな。涙出たね」。そんな厚い信頼を寄せる坂井に1週前追い切りを任せ、本番の手綱を託した。

 管理馬を「家族だし、友達だし、俺らの生活を担ってくれているからね。もっと上の存在なのかもしれない」とリスペクトする千田師。

「パラディレーヌにタイトルを。東京のマイルが合わないとは思わない。大きい競馬場で気分よく走ってくれれば」と晴れやかな笑みを浮かべた。

(松ケ下 純平)

 ◆千田 輝彦(ちだ・てるひこ)1969年8月23日生まれ。神奈川県出身。56歳。88年3月に栗東・伊藤雄二厩舎所属で騎手デビュー。JRA通算4261戦278勝(重賞6勝)。2008年11月から調教助手に転身。10年に調教師免許を取得し、11年3月に栗東で開業。15年ファルコンS(タガノアザガル)の重賞1勝を含むJRA通算3720戦234勝。

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