第79回カンヌ国際映画祭の授賞式が23日(日本時間24日)、フランス南部のカンヌで行われ、濱口竜介監督の映画「急に具合が悪くなる」(6月19日公開)にダブル主演したモデルで女優の岡本多緒(41)、ベルギー出身の女優ヴィルジニー・エフィラ(49)が女優賞を受賞した。同映画祭では2004年に柳楽優弥(36)、23年に役所広司(70)が男優賞を獲得しているが、日本人の女優賞は史上初。

2人は26日に都内で凱旋会見を行う。

 発表の瞬間、岡本は「信じられない」とばかりに目を丸くした。ほどなく熱い涙が流れ出す。妊娠7か月の岡本を気遣い、手を差し伸べたエフィラと連れ立ってステージに上がると、会場からは万雷の拍手が起こった。

 エフィラに続いてスピーチした岡本は「皆さんが選んでくださったおかげで、私のような平凡な日本人女優がこうしてここに立っていられます。本当に信じられないことで、まるで夢さえも超えている。私の期待をはるかに超えるものでした」と喜びを爆発させた。

 カンヌ、べネチア、ベルリンの三大映画祭で主要賞を獲得し、米アカデミー賞でも国際長編映画賞を受賞している濱口監督の3時間16分の最新作では、フランス語を流暢(りゅうちょう)に操り、エフィラ演じる介護施設の施設長・マリー=ルーと交流する、末期がんの舞台演出家・真理役。病に冒されながらも、前向きに生きる女性を軽やかに演じ、公式上映ではスタンディングオベーションが14分間にも及ぶなど、評判は上々だった。

 日本国内では知名度は高いとはいえないが、176センチの長身を生かし「TAO」名義でモデルとして世界中を飛び回る。13年にはハリウッド大作「ウルヴァリン:SAMURAI」に主要キャストとして出演。物おじしない国際感覚を身につけた。

それはエフィラとの関係性にも生かされ、「初めて会った際、言葉にできない安心感と高揚感を覚えました」というほど相性抜群。撮影が進むにつれて、絆は深まった。

 撮影期間は充実した日々だったという。「毎日がかけがえのない時間でした。文化や言葉を超えた心地よさと信頼感があり、カメラが回っていない時にも自然に感じられていたからこそ、2人のケミストリーとしてしっかりと映し出されていたことをうれしく思っています」と胸を張る。

 私生活では15年に雑誌編集長と結婚。今回は身重での晴れ舞台となった。「新しい命を授かることが夢だったので、一緒に(レッドカーペットを)歩けて、うれしい。生まれてきたら、自慢しなきゃなと思います」と喜びをあふれさせた。

 ◆岡本 多緒(おかもと・たお)1985年5月22日、千葉県出身。41歳。14歳でモデルデビュー後、2006年に渡仏し、パリコレに参加。

以降、「TAO」の名前で世界各地でモデルとして活動する。23年から拠点を日本に移し、現在の名前に。他の出演作に映画「マンハント」(17年)、「沈黙の艦隊」(23年)など。

 〇…濱口竜介監督は受賞に「本当に素晴らしいです。原作の魂を引き継ぐような形で演じてくださった。それをカンヌ国際映画祭が評価してくれたと思います。本当にうれしいです!」と心から祝福した。2人同時受賞には「共同ということが、映画そのものを評価してもらったという感覚がある」とコメント。「2人の仕事は(賞に)ふさわしい。演技が素晴らしいだけじゃなくて、2人が重ねてきた努力も見ていたので…。本当にありがとうございました」と感謝した。

 ◆「急に具合が悪くなる」 がんの転移を経験しながら生き抜く哲学者と人類学者が交わした20通の往復書簡集が原作。

パリ郊外で介護施設「自由の庭」を運営するフランス人女性・マリー(エフィラ)と末期がんの日本人舞台演出家・真理(岡本)による心の交流を繊細に紡いだ物語。同じ名前の響きを持つ2人が出会い、人生の最期をどう過ごすか。偶然から始まる交流と、その関係の変化を描く。

編集部おすすめ