アップルの2026年9月期1Qは、15.7%増収、18.7%営業増益。実質値下げした「iPhone17」シリーズが中国で好調。
毎週月曜日午後掲載
本レポートに掲載した銘柄: アップル(AAPL、NASDAQ) 、 マイクロソフト(MSFT、NASDAQ) 、 アマゾン・ドット・コム(AMZN、NASADQ) 、アルファベット( GOOGL 、 GOOG 、NASDAQ)、 メタ・プラットフォームズ(META、NASDAQ)
1.GAFAM5社の株価と大型自社株買いの関係を分析する。
今回はアップルを取り上げますが、その前にGAFAM5社の株価と大型自社株買いについて分析します。
最近のGAFAM5社の自社株買い枠の設定は以下の通りです(日付は、自社株買いを発表した月です)。
アップル:2024年5月1,100億ドル。2025年5月1,000億ドル。
マイクロソフト:2024年9月600億ドル。
アルファベット:2024年4月700億ドル。
メタ・プラットフォームズ:2024年2月500億ドル。
アマゾン・ドット・コム:2022年12月期3Q以降自社株買いはない。
GAFAM5社が大規模自社株買いを行う様になったのは、2021年4月にアルファベットが発表した最大500億ドルの自社株買い枠設定と、それに続いて2021年9月にマイクロソフトが発表した最大600億ドルの自社株買い枠の設定からです。この2つの自社株買いの発表後アルファベット、マイクロソフトとも株価が上昇しましたが、その後は米連邦準備制度理事会(FRB)による利上げによって下落しました。
最近自社株買いについて大きな話題になったのは、アップルが2024年5月に発表した1,100億ドルの大型自社株買いです。2025年5月には追加で1,000億ドルの枠が追加されました。現在のところ、2024年5月の1,100億ドルが過去最大の自社株買い枠です。
2024年はアップルの1,100億ドルの自社株買いを筆頭に、アマゾンを除く各社が大型自社株買いを発表しました。
2.欧米では株主還元として配当よりも自社株買いが好まれる。
欧米では、機関投資家中心に株主還元として配当よりも自社株買いが好まれています。
自社株買いを行うと、発行済株式数が少なくなるため1株当たり利益(EPS)が増えます。これは株価上昇の要因になります。ストックオプションの行使による発行済株式数の増加を抑える効果もありますが、これは株主や従業員に対する株価対策として重要です。
また、企業が余剰資金を単に社内に貯めこむだけの場合、財務がいびつな形になることを防ぐ効果もあります。
欧米の機関投資家の「投資」に対する考え方も重要です。投資先の企業が小さくても将来有望であれば、どんどん増資してどんどん投資(人材投資、研究開発投資、設備投資)すべし。赤字、無配が続いても構わない、株価が大きく上昇すればそれでよい。ただし、儲かるようになって、さらに企業が巨大化・成熟化して株価の上昇率が鈍くなってきたら、企業の中に蓄積されたお金を使って自社株買いをしてほしい。自社株買いを受け皿にした売却を含む保有株の売却によって、投資家は投資したお金を回収して次の投資に回したい、という考え方です。
一般論ですが、売上高、営業利益が数十兆円、時価総額が数百兆円の巨大企業(つまりGAFAMやマグニフィセント7)に新たに投資するよりは、大手企業であっても売上高、営業利益が数千億円から数兆円、時価総額が1兆円から数十兆円の会社のポートフォリオに投資するほうがパフォーマンスが得やすくなると思われます。長期投資した結果巨大化し株価が大きく上昇した企業から、より小さい企業のポートフォリオに資金を移すのは当然の流れであるということです。
実は、自社株買い、特に大型自社株買いは巨大企業にとっても重要になる場合があります。GAFAMの株価は過去10~20年間大きく上昇したため(10年前の2016年4月始値からその後のザラ場高値までの上昇率は、アップル10.6倍、アマゾン・ドット・コム8.8倍、マイクロソフト10.0倍、メタ・プラットフォームズ7.0倍、アルファベット9.2倍)、長期投資してきた機関投資家も多いと思われますが、同時にそろそろ売って、その金でより小さく成長性の大きい企業に投資したいという機関投資家も多いかもしれません。その場合、大型自社株買いが彼らの売りをある程度吸収して、マーケットインパクトが大きくなるのを防ぐことができるならば、大口株主も売りやすくなります。
また、GAFAM各社に新しい価値を見出した投資家が現れて投資した時に、昔からの大口投資家の売りをある程度吸収することができれば、新しい投資家は投資成果が出やすくなると思われます。
株価の上昇には業績も重要ですが、自社株買いによって、ある程度ですが、古い投資家が少なくなり新しい投資家が増える「手替わり」が実現して、その企業の株式の需給関係が新しくなって株価が上がりやすくなる効果が期待できるのです。
3.大型自社株買いは株価に対して一定の効果がある。
グラフ1は、GAFAM5社の四半期ベースの自社株買いと配当支払いを2022年10-12月期から見たものです。ChatGPTが公開されたのが2022年11月30日なので、この四半期を起点としました。アップルが高水準の自社株買いを続けていることがわかります。また、アルファベットは高水準の自社株買いを続けていましたが、設備投資が大きくなるにしたがって自社株買いが縮小してきたこともわかります。マイクロソフトの自社株買いはこれまで少なかったですが、少しずつ大きくなってきました。ちなみに、生成AI向け設備投資と株主還元のバランスをどう考えるかという問題は、GAFAM5社の2026年1-3月期決算発表において大きな焦点になると思われます。
表1は、GAFAM5社の2022年12月1日終値から2026年4月2日終値までの株価の上昇率を見たものです。生成AIブームが始まってからのアップルのパフォーマンスは他の4社に見劣りしています。アップルは生成AIのブームに乗らず、「Apple Intelligence(アップル・インテリジェンス)」という自前のAIを作っただけで(現在のところ高い評価は得られていない)、他社のような大規模設備投資はしませんでした。アップルの設備投資は他の4社の10分の1以下です。
一方、アマゾンを除く4社が大型自社株買いを相次いで発表した2024年年初からのパフォーマンスは、生成AIブームに乗らなかった割には比較的良好と言ってよいと思われます。
このように大型自社株買いは、成長性が評価されたときの株価の上昇率には及ばないものの、株価上昇に対して一定の効果があると思われます。
アップルは、現在年間1,000億ドル規模の自社株買いを行っています。これが続いた場合、次の問題は成長性です。
参考として、GAFAM各社の四半期ベース営業キャッシュフロー、設備投資と、営業キャッシュフロー・設備投資比率(設備投資÷営業キャッシュフロー)のグラフを示します(グラフ2~5)。アップルの営業キャッシュフローは他社と遜色なく大きいのに対して設備投資が小さいことがわかります。これはアップルが、年間約1,000億ドル、四半期平均約250億ドルの自社株買いをこなしつつ、さらに新しい投資にも耐えうるであろうことを示しています。
また、アップルがこれから生成AIないしAI全般に投資するときには、これまでの知識や経験を、これまでよりも低コストで吸収することができると思われます。生成AIあるいはAI全般に関して、アップルには後発の利益が生じる可能性があります。
グラフ1 GAFAMの株主還元
表1 GAFAM5社の株価の変化
グラフ2 米国の大手ITの営業キャッシュフロー動向:四半期
グラフ3 米国の大手IT設備投資動向:四半期
グラフ4 米国大手ITの営業キャッシュフロー・設備投資比率
グラフ5 アマゾン・ドット・コムの営業キャッシュフロー・設備投資比率
4.アップルの2026年9月期1Qは、15.7%増収、18.7%営業増益。
アップルの2026年9月期1Q(2025年10-12月期、以下今1Q)は、売上高1,437.56億ドル(前年比15.7%増)、営業利益508.52億ドル(同18.7%増)となりました。
カテゴリー別売上高を見ると、iPhoneは852.69億ドル(同23.3%増)でした。後述するように、昨年9月発売のiPhone17が実質値下げになったため、特に中国で人気がでて販売が増加しました。DRAM、NAND不足の中でiPhone生産に優先的にDRAM、NANDを振り向けたこともiPhoneの二桁増収に寄与しました。
一方で、Macは83.86億ドル(同6.7%減)、iPadは85.95億ドル(同6.3%増)となりました。Macは前1QにM4搭載MacBook Pro、Mac mini、iMacの発売で二桁増収だった反動がありました。iPadは昨年10月発売のM5チップ搭載のiPad Proの評価が高く、堅調でした。
ウェアラブル・ホーム&アクセサリーは114.93億ドル(同2.2%減)となりました。目立った新製品がないため減収でした。サービスは、300.13億ドル(同13.9%増)となりました。広告、クラウドサービス、音楽、決済サービス、App Store、ビデオなどが伸びました。
地域別売上高を見ると、最大地域の南北米が585.29億ドル(前年比11.2%増)、欧州が381.46億ドル(同12.7%増)と順調でした。
また、株主還元は前4Qの自社株買い201.32億ドル、配当38.62億ドルから、今1Qは自社株買い247.01億ドル、配当39.21億ドルへ増加しました。
表2 アップルの業績
表3 アップル:カテゴリー別売上高(四半期ベース)
表4 アップル:地域別売上高(四半期ベース)
グラフ6 iPhone平均出荷単価
グラフ7 Mac平均出荷単価
表5 世界スマートフォン出荷台数:四半期ベース
表6 世界パソコン出荷台数:四半期ベース
5.今期はiPhone中心に二桁増収増益が予想される。来期は2ナノ搭載のiPhoneとMacの寄与が期待される。
会社側は今2Q業績ガイダンスを、売上高前年比13~16%増、売上総利益率48~49%、販管費184~187億ドル、営業収支は1億ドルのプラス、税率17.5%としています。会社側は、増収率の予想にはメモリ不足等の供給制約要因を織り込んでいるとしています。これを参考に、楽天証券では今2Qを売上高1,100億ドル(前年比15.4%増)、営業利益350億ドル(同18.3%増)と予想します。
また楽天証券では、2026年9月期を売上高4,780億ドル(同14.9%増)、営業利益1,560億ドル(同17.2%増)、2027年9月期を売上高5,450億ドル(同14.0%増)、営業利益1,820億ドル(同16.7%増)と予想します。
iPhone17シリーズには今年3月から低価格版の「17e」が加わっています。Macは最新型チップ「M5 Pro」「M5 Max」搭載の新製品を、iPadは「M4」シリーズ搭載の新製品を3月に発売しました。新型MacはCPU、GPUの処理性能向上とともに、AI関連処理やストレージ、通信機能の強化を行っており、動画編集、3D制作など負荷の高い作業を想定した構成となっているため、一定の人気を集めると思われます。特に、大規模言語モデルの処理が短時間で行えるため、売れ行きが注目されます。
来期2027年9月期は、今年9~10月に最新型の2ナノチップ搭載の新型iPhoneが発売されると思われます。今期はiPhone17シリーズが勢いがあるため、来期もこの勢いが持続できるかが焦点になります。ただし、メモリ等の部材コストの上昇と新型iPhoneの価格政策が不透明要因になると思われます。
また、2026年1月、アップルとアルファベットの子会社グーグルはAIに関する提携を発表しました。グーグルの「Gemini」とクラウド技術を「Apple Intelligence」に取り込むことになります。また、2026年に投入する予定の次世代「Siri」(アップルのAIアシスタント)もこの提携によって強化される見込みです。
表7 アップルの四半期業績
表8 アップル:カテゴリー別売上高(年度ベース)
6.今後6~12カ月間のアップルの目標株価を310ドルとする。
今後6~12カ月間のアップルの目標株価を310ドルとします。
楽天証券の2027年9月期予想EPS10.16ドルに、大型自社株買いが継続していること、足元のiPhone17シリーズの好調、今年9~10月に発売されると予想される次期iPhone(2ナノチップセットが搭載されると思われる)への期待、アルファベットとの生成AIに関する提携への期待を考慮しました。
中長期で投資妙味を感じます。
本レポートに掲載した銘柄: アップル(AAPL、NASDAQ) 、 マイクロソフト(MSFT、NASDAQ) 、 アマゾン・ドット・コム(AMZN、NASADQ) 、アルファベット( GOOGL 、 GOOG 、NASDAQ)、 メタ・プラットフォームズ(META、NASDAQ)
(今中 能夫)

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