「波音」でなくて「白金の影」

 中国で、アメリカの航空機メーカー「ボーイング」と一字違いの愛称を持つ無人ヘリコプターが開発されています。この機体、設計もボーイングが手掛けた軍用ヘリCH-47「チヌーク」にそっくりですが、どのような狙いがあるのでしょうか。

中国がヤバいヘリ出してきた! 清々しいほど“本家”寄りの「ボ...の画像はこちら >>

「中国がボーイングの無人ヘリコプターを量産化に向けて開発」。日本語変換のオプションを組み込んだ状態でインターネット検索すると、中国とアメリカのメーカー、ボーイングの協働を思わせる記事が出てきます。ただよく見ると、中国の無人ヘリの英語表記は「boying」で本家の「Boeing」と一字違い。このboyingなる機体T1400は、ボーイング製ヘリコプターCH-47「チヌーク」にそっくりです。しかし、そこから無人機を使った輸送の大容量化を狙う中国の思惑が透けてきます。

 ひとことでいえば、中国の大型無人ヘリコプターT1400は、CH-47をスケールダウンしたようなルックスです。この機体は中国の無人航空機メーカー、ハルビン連合飛機科技有限公司が開発し2025年10月に初飛行しました。全体の外形は、機体上部にメインローター(主回転翼)を縦列配置し胴体は太くまっすぐ。こうしたところも、CH-47に似ているポイントだと筆者は分析しています

 ただ、これはヘリコプターとして一般的な外形でもあるため、メーカーは大きな冒険はせずにこの形を選んだと考えられます。

 T1400の愛称の「boying」の中国語の表記は「鉑影」となります。「鉑」は「白金(プラチナ)」を意味し、2026年2月のシンガポールでの航空ショーで展示された機体も簡体字で胴体に愛称が記されていました。ちなみに、アメリカの“本家”ボーイングは人名が由来で、中国語での表記は「波音」なので、T1400とつながりはないと分かります。

 では、どのような狙いで似た発音の愛称を付けたのでしょうか。

 初飛行を伝えるSNSでも「なぜボーイング?」とでリプライでツッコまれていましたが、筆者が出席した海外の航空ショーの会場では生憎、同社に愛称に込めた意味を聞くことはできませんでした。しかし、プラチナと言えば貴金属で、アクセサリーとしても自動車のマフラーの触媒など工業用品としても活用されています。このため、「貴金属プラチナの影となり、その価値に付き従う」――。そんな想像もできますが、このメーカーに幾分でも茶目っ気があれば、CH-47にそっくりだから愛称も「ボーイング」に似せようとしたのかもしれません。

物流は無人も有人も同じ

 とはいえ、無人機であるT1400、有人機であるCH-47もともに、ヘリコプターの中では大型の部類に入ります。大型の輸送用無人機は各国で開発にしのぎが削られている状況で、T1400の場合最大離陸重量1400kgで貨物搭載量650kg。最大高度6500mを時速180kmで飛ぶことができ、最長の航続時間は8時間に及ぶということです。

 T1400は物流輸送のほか、森林防火など幅広い分野での活用が期待されるといいます。森林防火は恐らく消火用ヘリコプターを指し、運用環境もマイナス40度の気温から55度の暑さまで耐えられ、中国国内のあらゆる場所での運用を想定していると伺えます。実際に間近で見た機体は、日本国内でよく見るマルチコプター型の小型ドローンと異なるもので、大きく太い胴体は貨物の積載をスムーズに行うことができると思えました。

 一方でCH-47に目を転じれば、もともと初飛行したのは1961年。

2026年現在もアメリカ軍や航空自衛隊をはじめ多くの国々で使われるベストセラー機になっています。

 先述のとおりCH-47にそっくりな機体だから、遊び心とともに「boying」を愛称に付けただけなのかもしれない反面、有人無人を問わず航空機開発に昨今は熱心な国だけに、大型機の開発経験も豊富なボーイングにあやかり、無人大型ヘリコプターでのベストセラーを狙い「boying」と名付けたか可能性もあると筆者は考えています。そうしたところは、まさに中国らしい“なりふり構わない野心”が顕現したものといえるでしょう。

【写真】えっ…これが「中国版ボーイング(?)機」全貌です

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