【MLB】ホワイトソックス・村上宗隆が開幕前の低評価を一蹴 ...の画像はこちら >>

前編:村上宗隆が前評判を覆した理由

シカゴ・ホワイトソックスの村上宗隆が好調だ。本塁打はすでに2ケタを超え、高い長打率を残しており、昨冬のFA市場で受けた低評価を覆している。

村上はなぜ活躍できているのか。現地取材を通して、その理由を探ってみる。

【現在の状態ならシュワバー級の評価】

 4月22日、ホワイトソックスの試合前。村上宗隆に1対1でインタビューしていた『USAトゥディ』紙のベテラン野球記者、ボブ・ナイチンゲールは、「村上は、フリーエージェント市場で彼を見送った多くの球団を、今まさに"愚かに見せている"」と報じた。

 バットに当たれば、その打球の破壊力は2023年のワールドベースボール・クラシック(WBC)で証明済みだ。決勝戦ではアメリカのメリル・ケリーから、打球速度115.1マイル(約185.2キロ)、飛距離432フィート(約131.7メートル)の本塁打を放った。あのような打球は、まぐれでは打てない。この一発は大会最速の打球速度を記録した本塁打だった。しかも、フリーエージェント市場に出た時は25歳の若さである。

 スポーツ専門サイト『ジ・アスレチック』のティム・ブリットン記者は、8年総額1億5800万ドル(約250億円)規模の契約を予想していた。しかし、2025年の日本での空振り率36.7%、三振率28.6%が評価を下げる要因となった。さらに、ゾーン内コンタクト率も72.6%と、三冠王に輝いた2022年の77.1%から大きく低下していた。いくら強い打球を打てても、バットに当たらなければ意味がない。

その懸念から、ほとんどの球団が長期の大型契約を敬遠し、村上は2年総額3400万ドル(約52億7000万円)で、再建途上のホワイトソックスに落ち着いた。

 ところが、ふたを開けてみると、26試合終了時点(4月24日=日本時間25日)で本塁打11本はMLB全体でトップタイ、OPS(長打率+出塁率)1.020は3位と打ちまくっている。かつてヤクルト・スワローズでプレーし、村上に関心を示しながらも獲得には至らなかったアリゾナ・ダイヤモンドバックスのトーリ・ロブロ監督は、その活躍をただ見守るしかない。

 21日、ホワイトソックスとのシリーズ初戦。筆者が会見で、スワローズの後輩である村上の活躍をどう見ているかと尋ねると、ロブロ監督はこう語った。

「私とスワローズの縁もあり、彼がうちに来るのが自然な流れだと思っていました。彼は多くの球団のレーダーに引っかかっていましたし、うちも特別な選手だとわかっていた。ずっと注意深く見てきましたし、個人的にもファンです。彼がメジャーで成功を収めていることに、心からおめでとうと言いたいですね」

 会見後、同席していたナイチンゲール記者に、「今、FA市場に戻れるとしたらいくらになりますか?」と聞くと、カイル・シュワバー(フィラデルフィア・フィリーズ)の5年総額1億5000万ドル(約240億2500万円)規模ではないか、との答えが返ってきた。年平均で約3000万ドル(約46億5000万円)である。

【空振り率と三振率が変わったわけではないが......】

 今、この状況を最も喜んでいるのはホワイトソックスだろう。しかし、保有権はわずか2年。

2024年が41勝121敗、2025年が60勝102敗と低迷したチームが、2年以内に優勝を狙うのは現実的ではない。契約当初から、もし村上が期待どおり、あるいはそれ以上の活躍を見せれば、将来を見据えてトレードし、複数の若手有望株と交換するという見方もあった。そして、この活躍を受け、『スポーティング・ニュース』誌などは、チームOPSが.636で29位に沈むボストン・レッドソックスが獲得に動くべきだと早くも報じている。7月までに、村上が別のユニフォームを着ている可能性も否定できない。

 そんななかでも、村上は淡々と自身のルーティンに集中している。連続試合本塁打の記録を伸ばしたことで、米メディアの数は一気に増え、22日の試合前には広報の手配で特別に囲み取材が行なわれた。当然、質問は本塁打に集中する。全米に衝撃を与えている現状について問われると、村上は落ち着いた口調でこう語った。

「いや、あんまり気にしてはないですね。自分のやるべきこと、自分のスイングをするっていうことだけを心がけながらやっていますし。まだ始まったばかりなので。これからいろんな経験があると思いますし、結果が出ていることはうれしいですけど、こうしてケガなく毎日試合に出られていることが、すごくうれしいです」

 それにしても、契約が抑えられた理由は、日本での空振り率と三振率の高さにあったが、実際それはメジャーでも同じだった。

空振り率は40.3%でメジャー平均の25%を大きく上回り、三振率も32.1%と、同22.2%をはるかに上回っている。しかし、ひとたびバットに当たれば、その打球は圧倒的な迫力を持つ。

 筆者が現場で取材した9号は、打球速度113マイル(約182キロ)、打球角度30度で右翼スタンド中段へ飛び込み、飛距離は426フィート(約130メートル)。続く10号は、打球速度110.2マイル(約177.4キロ)、角度29度で右中間へ運ばれ、飛距離451フィート(約138メートル)と、今季ホワイトソックス最長の一発となった。いずれも大きな快音を響かせ、うっとりするような美しい放物線を描く。まさに"ホームラン・アーティスト"と呼ぶにふさわしい打球である。なお、打球速度95マイル以上の打球割合を示すハードヒット率64.2%はリーグ1位だ。

後編につづく「元サイ・ヤング賞投手、監督、打撃コーチが語る村上宗隆の強み」

編集部おすすめ