蘇る名馬の真髄
連載第47回:ユキノビジン

かつて日本の競馬界を席巻した競走馬をモチーフとした育成シミュレーションゲーム『ウマ娘 プリティーダービー』(Cygames)。2021年のリリースと前後して、アニメ化や漫画連載もされるなど爆発的な人気を誇っている。

ここでは、そんな『ウマ娘』によって再び脚光を浴びている、往年の名馬たちをピックアップ。その活躍ぶりをあらためて紹介していきたい。第47回は、地方競馬出身のユキノビジン。春の牝馬クラシックでは、名牝ベガと真っ向勝負を演じた。その勇姿を今、振り返る。

『ウマ娘』でも描かれるド根性ぶり 二冠牝馬ベガと激闘を演じた...の画像はこちら >>
『ウマ娘』のユキノビジンは、岩手の田舎で生まれた純朴な美少女。可憐で素直な性格だが、簡単には折れないド根性の持ち主でもある。『ウマ娘』シリーズにおいて、初期から活躍する人気キャラクターだ。

 岩手生まれという生い立ちは、モデルとなった競走馬・ユキノビジンをもとに作られたもの。1992年の夏、同馬は地方競馬の岩手競馬でデビューしている。初陣から3連勝を飾るなどして、4歳(現3歳。※2001年度から国際化の一環として、数え年から満年齢に変更。

以下同)になった翌年、中央競馬に移籍した。

 移籍初戦となったのは、オープン特別のクロッカスS(中山・芝1600m)。初の芝レースながら、先手を奪って後続に3馬身差をつける圧勝劇を披露。9番人気の低評価を覆し、中央でも通用する実力をいきなり見せつけた。

 その結果を受けて、次戦では牝馬クラシック初戦のGⅠ桜花賞(阪神・芝1600m)に果敢に挑んだ。

 断然の1番人気に推されたのは、すでに「天才」の名をほしいままにしていた武豊騎手騎乗のベガ。前哨戦のオープン特別(現GⅡ)・チューリップ賞(阪神・芝1600m)も完勝しており、絶対的な存在と見られていた。

 対するユキノビジンは5番人気。地方競馬出身で、前走で初めて芝レースを経験したことを思えば、その評価は妥当なものだった。

 だがレース本番、ユキノビジンは大本命ベガと熾烈な争いを見せて大観衆を沸かせた。

 ゲートが開くと、好スタートをきったベガは2~3番手の絶好の位置を確保。ユキノビジンはその後ろ、5番手の内につけた。

3コーナーあたりで、ベガが早くも先頭に並びかけていく。ユキノビジンもそれに続いて、外から進出していった。

 直線に入って先頭に立ったベガは、楽々と抜け出して押しきりを図る。残り100mをきって、後続との差は2~3馬身差。誰もがベガの勝利を確信したことだろう。

 ところが、懸命に追いすがるユキノビジンは諦めていなかった。ジワジワと脚を伸ばして、外からベガに襲いかかっていく。

 はたして、ユキノビジンの逆転はあるのか――。ゴール板では、2頭の間を突いたマックスジョリーと3頭が並んで通過した。

 結果は、ベガがクビ差の勝利。ユキノビジンはわずかに及ばなかったものの、すばらしい走りを見せてベガを追い詰めた。

 2頭は、牝馬クラシック第2弾のGⅠオークス(東京・芝2400m)でも激闘を演じる。

 再び1番人気に支持されたベガ。ユキノビジンは、2番人気マックスジョリーに次ぐ3番人気だった。

 好スタートをきったユキノビジンは3番手の内を追走。ベガはそこから少し離れた4番手に構えていた。序盤の位置関係は、桜花賞とは逆になった。

 レースはそのまま淡々と運んでいって、4コーナーでユキノビジンが先頭をうかがう形となり、その外からベガが馬体を合わせていった。そして迎えた直線、2頭が激しい叩き合いを繰り広げた。

 ユキノビジンが力強く脚を伸ばせば、ベガもそれに追随。文字どおりのマッチレースとなったが、残り200mをきってベガがユキノビジンをかわす。それに対して、ユキノビジンも懸命に食い下がったものの、最後は勢いで勝るベガが突き抜けて二冠を達成した。

 再度ベガに屈したユキノビジンだが、桜花賞に続いて2着と奮闘。世代トップクラスの能力だけでなく、秀逸な勝負根性を秘めていることを世に知らしめた。

 このあと、ユキノビジンは「牝馬三冠」の最終戦となるGⅠエリザベス女王杯(京都・芝2400m)へのステップレース、GⅢクイーンS(中山・芝2000m)を快勝。悲願の戴冠なるか期待された。しかし、本番ではまさかの失速。10着と大敗を喫した。

 それでも、次走のオープン特別・ターコイズS(中山・芝1800m)では古馬相手に勝利。古馬になってからの活躍が見込まれたが、故障などもあって、以降はレースに出ることなくターフから去った。

 GⅠ制覇こそ果たせなかったものの、牝馬クラシック戦線で高い存在感を示したユキノビジン。その姿は麗しく、間違いなく美しかった。

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