中国のポータルサイトであるZAKERはこのほど、今回の男子サッカーワールドカップ(W杯)でスポンサーを務める中国のスポーツブランドが少ない理由を分析する、独立系メディアである正解局による記事を掲載した。
中国の大手企業は2008年の北京五輪大会を機に、五輪やサッカーW杯などの大規模スポーツ競技会のスポンサーになることに力を入れるようになった。
しかしそれでも、中国ブランドのスポンサー総額は依然として上位に位置し、国際サッカー連盟の27億ドル(約4400億円)のスポンサー総収入の5分の1近くを占めている。
国際サッカー連盟(FIFA)は、企業との協力についてさまざまなランクを設けている。中国企業の聯想はその中でも最上位のFIFAパートナーになった。同じく中国企業の蒙牛と海信(ハイセンス)は上から3番目のW杯スポンサーになった。
パートナーやスポンサーの役割は「金を出して広告を打って終わり」といった単純なものではない。例えば聯想は今年1月に、FIFAに対してサッカーAIスーパーエージェント、3Dデジタルヒューマン可視化ソリューション、審判視点AIビデオ拡張システムを含む多数のAIソリューションを提供することを発表した。つまり手掛ける最新技術を提供して競技会を支える役割だ。
海信は、サッカーの試合で誤審を防ぐためのビデオ判定(VAR)システムに対し、自社の最高峰のディスプレイ技術を提供している。同社の提供によるミニLEDは、「ミリ単位の超スロー映像」を実現し、しかも屋外の明るい環境でも問題なく視認することができるという。
その他にも、W杯に対してさまざまな角度から自社の技術を提供する中国企業は多い。
今回のW杯本大会に出場した48チームに対しては、13社のスポーツブランドがユニフォームを提供するスポンサーになった。しかしその中に、中国本土のスポーツブランドは1社もない。一方でアディダスは14チームにユニフォームを提供し、ナイキは12チーム、プーマが11チームで、合計すれば提供先のチームの割合は全チームの77%に達する。
なぜ、中国のスポーツブランドが、W杯というひのき舞台に登場しないのか。その理由の一つはW杯のスポンサーは、すでに独占状態にあることだ。例えばアディダスは1970年からFIFAと協力し、スポーツ用品カテゴリーの唯一の枠を長期にわたって独占している。つまりアディダスはナイキやプーマのような国際ブランドの排除にも成功した。アディダスは同年のメキシコワールドカップ以来、公式試合用ボールを提供してきた。他のブランドが入り込む余地はない。このことでナイキやプーマはユニフォーム提供、特に強豪チームのスポンサーになることに力を入れた。
そしてアディダスなど国際的なスポーツブランドは、各国のサッカー協会と共同でユニフォームやスパイクを研究開発し、選手のスポーツデータを共有し、ユース育成装備体系を共同で構築してきた。このことで、「協力すればするほど、切り離すのが難しくなる」という強固な関係が形成されることになった。すなわち新興の中国ブランドにとっては「割り込む余地がなかなかない」状態だ。
中国のスポーツブランドにとって、もう一つ問題になるのは費用対効果だ。W杯の「常連強豪チーム」の年間スポンサー料は2000万-5000万ドル(約32億-81億円)の間だ。2022年にナイキとフランス代表チームの契約更新では、金額が毎年5000万ユーロ(約92億円)に達したとされる。また、スイスやガーナのような中堅チームでも、スポンサー料は年間1000万-1500万ドル(約16億-24億円)の範囲にある。
しかし中国のスポーツブランドでも、安踏(アンタ、ANTA)や李寧ならば十分に拠出できる金額だ。問題は出費に見合う効果を得られるかということだ。まず、今年のW杯は米大陸で開催され、多くの試合が北京時間の深夜から午前中に行われる。中国での観戦のゴールデンタイムではない。
数千万米ドルを費やして、わずか1カ月間、しかも試合の多くが深夜というブランドの露出しか得られないのでは、本国での売上への貢献は相対的に限られてしまう。
W杯は1大会当たり全世界の視聴者の延べ人数が50億を超える。特に人気がある地域は、欧州、南米、アフリカ、アジア、中東と世界のほぼすべての国をカバーする。スポンサーになった場合には、PRできる対象に明確な地域の壁がなく、先進国市場と新興国市場に同時に訴えることのできる唯一のスポーツ大会だ。
企業にとってW杯を放棄することは、数十億の海外消費者に向けた最も直接的なブランドの窓口を自ら捨てることに等しい。これがアディダスが50年以上にわたり公式スポンサーを独占し続けている理由であり、ナイキやプーマが重点的に強豪チームのスポンサーになる目的でもある。
しかし中国の男子サッカー代表は、すでに6大会連続でW杯の本大会に出場できなかった。中国チームが出場しなければ、中国人は大会に本格的に感情を移入することができない。感情が爆発しなければ、市場の爆発はない。市場の爆発がなければ、ブランドの投資の採算は合わない。
率直に言えば、中国のスポーツが強くなってこそ、中国のスポーツブランドは真に強くなることができる。中国のスポーツブランドも当然ながらそのことに気づいており、中国のスポーツ事業の発展を支援するための投入を続けている。
例えば安踏は早くも2015年に、「とにかく蹴れ」のスローガンに基づくサッカー戦略を打ち出し、大会、コーチ、装備、グラウンドの四大計画を通じて青少年サッカーの発展を推進している。安踏はさらに、24年10月から中国児童少年基金と協力して中国すべての省(自治区、中央直轄市を含む)での女子スポーツ成長キャンプなどの活動を展開することを支援する「春蕾茁壮公益計画」を行っている。安踏はこの計画のために、2025年上半期までに、累計14億元(約330億円)分の現金と装備を寄贈した。
この安踏の動きは、中国のスポーツの未来を支えることであり、同時に自社ブランドの未来のために種をまくことでもある。いずれにせよ、中国の男子サッカーがW杯の本大会に出場できる力を得てこそ、中国のスポーツブランドも、世界に向けて大きく躍進することが可能になる。(翻訳・編集/如月隼人)











