米国の半導体大手エヌビディアのジェンスン・フアン(黄仁勲)最高経営責任者(CEO)が7月中旬に日本を訪れ、高市早苗首相やソフトバンクグループの孫正義会長と面会すると台湾で報じられた。フアンCEOは今年、台湾積体電路製造(TSMC)や鴻海精密工業(フォックスコン)などがAI半導体の製造網を担う台湾、そしてSKハイニックスやサムスンが記憶媒体などを、ネイバーなどが情報基盤を提供する韓国を立て続けに訪問したが、当初の歴訪日程から日本は外されていた。

日本には東京エレクトロンや信越化学工業など、デジタル関連の製造で優秀な企業があるが、それらの企業は供給網の上流に位置する部品供給の裏方に甘んじており、世界標準を創り出すAIの主役にはなれていない。

日本がデジタル分野で主導権を失った大きな理由の一つが「投資に取り組む姿勢」だ。TSMC、サムスン、SKハイニックスは近年、ともすれば数兆円を先端プロセスや新工場に投じてきた。しかし日本企業の投資は明らかに保守的だ。インド太平洋戦略シンクタンクの矢板明夫執行長はかつて、日本企業の定期預金が過去2年間で約25兆円増加したと指摘したことがある。つまり、日本企業には資金がないのではなく、リスクを冒してまで投資したがらないのだ。

このままではAIの新たな秩序において、日本は単なる「不可欠な下請け」に取り残されるという危機感が、日本の経済界には広く存在している。こうした中でのフアンCEOの来日は、日本がAI分野の主戦場に返り咲くための極めて重要な機会になる。フアンCEOが求めているのは単なる部品供給者ではなく、AIの社会基盤全体を一度に大規模に構築できる国家規模のパートナーだ。そのような状況にあって、これまで大胆な投資を繰り返してきた孫氏は日本で唯一、「体系構築の全体像」を語れる企業家と言える。

エヌビディアとソフトバンクはかつて、日本最強のAIスーパーコンピューターを共同構築し、AI演算と5G通信を結合したシステムを開発すると発表した。孫氏が目指しているのは、日本の通信網やデータセンター、企業顧客、そしてAIの計算能力を統合し、巨大な「AIグリッド(AIネットワーク)」を構築することだ。

これが実現すれば、ソフトバンクは日本全土の企業や医療機関、製造業にAIの計算能力を行き渡らせる入り口になる。

一方、高市早苗首相がフアンCEOとの面会に臨むこと、すなわち首相が表に出ることは、エヌビディアとの協力関係を国家の競争力やエネルギー政策の次元に引き上げることを意味する。日本は深刻な高齢化と労働人口不足に直面しており、生産力向上のためにAIとロボットを世界で最も必要としている。しかし、AIデータセンターの稼働には莫大な電力と土地が必要だ。冷却機能や電力網の安定性は、世界を見渡してもAIの普及を推進する上での最大の障壁となっている。高市首相はフアンCEOに対し、日本政府が政策やインフラ整備を通じて、エヌビディアが長期的に投資するに値する市場を築けることを証明せねばならない。

フアンCEOが日本を後回しにしたからといって、日本の価値を認めていないわけではない。日本は世界のAI供給網にとって、実は極めて重要だ。日本はインターネットの基盤競争では出遅れたものの、ロボットや自動車、精密制御、センサーといった現実の物理世界と結びつく分野では、今も確固たる強みを維持している。エヌビディアの持つ圧倒的な計算能力を、トヨタ自動車やファナック、ソニーなどによる日本独自の精密製造や通信網と組み合わせることができれば、日本は再び世界の最前列に立つことができる。

フアンCEOが描くアジアのAI工業地図において、台湾は製造、韓国は記憶媒体と情報基盤、そして日本は材料、装置、ロボット、通信などの応用環境を担っている。台湾、韓国、日本の役割は明確に異なる。

日本はついにフアンCEOを交渉のテーブルに引き戻した。しかし、真の勝負はこれからだ。日本がAIの中核に返り咲けるかどうかは、トップ層の面会そのものではなく、その後の行動にかかっている。

日本企業が巨額の資金を投じる覚悟を持ち、政府が電力や土地の問題を迅速に解決し、産業界が単なる優秀な部品供給者から脱却して自ら市場を定義する側へと回れるかどうかが、日本にとって主戦場を取り戻すための最大の鍵となる。(翻訳・編集/如月隼人)

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