夏合宿特集の第3回は、大学駅伝3冠を達成した2022年度以来、4年ぶりの箱根駅伝総合優勝を狙う駒大。長野・野尻湖周辺などで、鍛錬を重ねている。

昨年度までチームを支えた「4本柱」が卒業。今季は絶対的なエースを欠く一方、就任4年目の藤田敦史監督(49)が掲げるのは「集団で戦う力」の強化だ。新エース候補、桑田駿介(3年)を中心に、チーム全体の底上げで頂点を目指すため、土台を築き、自信を深めるための夏合宿が続いている。

 真夏の太陽が照りつける中、藤色のユニホームをまとった選手たちは、己と向き合うように一歩一歩、足を進めていた。夏の鍛錬を積み重ね、秋、そしてその先の戦いへ―。駒大のランナーたちは、標高約1000メートルの野尻湖周辺で高地合宿を行い、着実に「自信」を深めていた。8月19日に行われた1000メートル×10本と400メートル×2本のポイント練習では、誰一人離れることなく最後までやり遂げた。藤田監督は「今日の練習がまさにこの合宿のテーマ。それがしっかりできた」と手応えを口にした。

 今季のチームの課題は明確だ。昨年度の「4本柱」と呼ばれた伊藤蒼唯(22)=富士通=、帰山侑大(23)=ヤクルト=、佐藤圭汰(23)=ナイキ=、山川拓馬(22)=トヨタ自動車=が卒業。これまで田澤廉、鈴木芽吹(ともにトヨタ自動車)ら、代々にわたって絶対的なエースを擁してきた駒大だが、今季は突出した存在が見当たらない。

主将の村上響(4年)は「絶対的なエースはいないが、チームを支える柱はたくさんいる」と語る。10000メートルのチーム最速は桑田駿介(3年)の28分07秒。エース1人に頼るのではなく、選手一人ひとりの力を底上げし、「集団」で戦うチームへと変貌を遂げようとしている。

 そのために、夏合宿では「誰も離れない」ことを重視する。極端に高い設定を課すのではなく、全員が最後まで集中してやり切れる練習を積み重ねる。藤田監督は「結局ふたを開けてみたら昨年と同等かそれ以上やれている」とうなずく。その成功体験を、駅伝シーズンを戦うための自信へとつなげていく。

 その集団の中心を担うのが桑田だ。藤田監督も「桑田が柱。『俺がエースだ』と思ってやってもらわないと困る」と期待を寄せる。2月のニューヨークシティーハーフマラソンで好走し、6月には10000メートルでも自己ベストを更新。入学後、大きな故障なく継続して練習を積んできたことも、上級生となった今の安定感につながっている。

桑田は「胸を張って任せられるような選手になりたい」とエース区間での出走で責任を果たしたい姿勢を見せた。

 同学年の実力者、谷中晴(3年)や、4年では駅伝経験のある村上、小山翔也、安原海晴に加え、駅伝未出走の植阪嶺児、新谷倖生も台頭。下級生では井本正凪(2年)らも力を伸ばしている。藤田監督が「エースの区間では差がつかない。差がつくのはつなぎ区間」と語るように、駅伝は1人の力だけでは勝てない。昨年の全日本大学駅伝では、伊藤をつなぎ区間に起用できるだけの選手層があったことが勝因の一つとなった。今年も全員が区間上位で走れるチームを目指し、選手層の底上げを進めている。

 今季の最大の目標は、4年ぶりの箱根駅伝総合優勝。突出したエースではなく、総合力で戦う―。4年生が抜けたことで生まれた不安を、夏の鍛錬で自信へと変える。秋の駅伝シーズンを見据え、駒大は「勝てる集団」へと歩みを進めている。(綾部 健真)

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 兄弟で駒大を選んだ2人が、箱根路の山で藤色のタスキをつなぐ―。

箱根駅伝で兄の牟田颯太は5区、弟の凜太(ともに2年)は6区での出走を目指している。長崎・鎮西学院高3年時の4月、大学進学を見据えた家族会議で、両親から「どこの大学に進学したいの?」と聞かれ、示し合わせることなく、2人とも「駒大」と答えた。中学、高校と兄弟で同じ道を歩んできたのは同じ環境で競い合うことが成長につながるとの考えから。偶然と駒大への進学希望が一致したのは、長崎まで足を運んだ藤田監督の熱意もあった。

 アップダウンへの適性を自負する颯太は5区の山上りに自信を持ち、凜太は「6区で56分台」を掲げ、「家族の夢でもある」と凜太が語る兄弟での山のタスキリレー。夏合宿では課題のスタミナをつけるため、重点的に距離を踏んでいる。2人がそろって山を担えば、4年ぶりの箱根優勝を引き寄せる大きな力となる。

 ◆箱根駅伝の主な双子ランナー 東洋大の設楽兄弟(兄・啓太、弟・悠太)は2011~14年大会に4年連続で箱根路に出走して2回の総合優勝に貢献。1年時と3年時は2区と3区でタスキをつないだ。村山兄弟(兄・謙太=駒大、弟・紘太=城西大)は14、15年大会で2区対決を実現させた。

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