自動販売機が受け入れてくれない10円玉
自動販売機に拒否されてしまった10円玉はギザ十だった
電車に乗る時の切符の購入や、飲み物、タバコの購入と日頃お世話になっている自動販売機。
その自動販売機で先日立て続けに拒否されてしまった10円玉があった。


最初は飲料の自動販売機。はじめは間違って5円玉でも入れてしまったかと思ったが、見れば確かに10円玉。2、3度やってみるがどうしても受け入れてもらえない。その翌日タバコを買おうと再びその10円玉を入れたがこれまた拒否。
なんでだろう、とじっとその10円玉を見てみると製造を示す年銘は昭和27年となっている。ふ、ふるい。


もしかしかたらこの古さが原因かもしれない。
そこで、自動販売機は古いコインは使えないようになっているのかどうかを自販機の製造事業者の業界団体である日本自動販売機工業会に聞いてみた。
「古い10円玉というとひょっとして10円玉の周囲にギザギザはありませんか? 実はこのギザギザが入っているとダメなんです。自動販売機の内部で機械がどんな風にコインを識別しているか、などの構造については詳しくはお話できないんですが、機械の中で硬貨を飛ばす時に、ギザギザのあるものとないものとでは回転数が違うので、飛距離に差がでるんです。その違いで機械はギザギザのある10円玉を10円玉と認知しないんです」

私はてっきり重さで判断しているのかと思ったが違った。

「コインは使用しているとだんだん摩耗してきますから重さに関しては厳密にはせず、多少の幅を持たせています」

周囲にギザギザのついた10円玉はいわゆるギザ十(ぎざじゅう)というもので、昭和26年から昭和33年にかけて発行された十円硬貨(昭和31年は未発行。
コイン収集家なら誰でも知っていることではあるが、ギザ十は発行枚数が多いため未使用品でない限り特別な価値はない)。
でも昭和27年に作られた硬貨が、55年間も多くの人々の手を介し今私の手元にあるというのはちょっと感慨深いものがある。
一般的にお札の平均的な寿命は、一万円札では3〜4年程度、つり銭などのやり取りが多い五千円札と千円札では1〜2年といわれるが、これに比べると硬貨は長命だ。

財務省の国庫課によると、摩耗したりして機械処理しづらくなった古い硬貨は流通不便貨として銀行、日本銀行を通って国に回収され、再び新しい硬貨として生まれ変わるのだという。
「ギザ十のようにある特定の製造年の硬貨を意図的に回収することは不可能です。古く使いづらくなった硬貨は自然に回収されていきますから、古い製造年のものほど流通量は少なくなっていると思います」とのことだった。


ギザ十は自動販売機で使えなかったというだけで、お店で直接使う分には何の問題もないわけだけれど、自動販売機で使えるお金でないとイヤ!(こういう人はあまりいないと思うが)という場合には、お札のように銀行でギザギザのない10円玉に交換してもらうことは可能なのだろうか。
某都市銀行に聞いてみたところ、「そういうお問い合わせは初めてです」といいつつも、大丈夫とのことだった。
(こや)