「メロンの缶詰」、食べたことありますか?
黄桃缶詰で使用されている桃は、「缶桃(かんとう)」と呼ばれる種類だという
以前雑誌の記事で、拘置所に収容された経験のある人物が差し入れの缶詰について、「メロン、まずいっすよね。みかんはいい。
メロンは最悪」と語っているものがあった。

なんでも拘置所の売店には普段は見かけないような食品が置かれていて、マスクメロンの缶詰もその一つなのだという。確かに、いつも私が行くようなスーパーではメロンの缶詰を見たことはない。

私もかつて一度だけメロンの缶詰を食べたことはあるけれど、そこまでの悪印象はなかったような気もするし、あまりの言われようにメロンの缶詰がちょっと気の毒になってきた。
それにしてもメロンの缶詰、やはり果物缶詰の中ではダントツにお高いものなのだろうか。
メロンの缶詰を製造しているメーカーの問い合わせてみた。


「メロンの缶詰ですか? 製造開始から30年ほどは経っていますが、数はそんなに出るものではありませんし……」とあまり取材には乗り気でない様子。

「メロンの缶詰が一番高いということはありませんよ。白桃など高級種を作りだしている産地を限定したのものなどいろいろあります」

なるほど。調べてみると、産地を冠したこの缶詰1缶で約1500円ほど。確かにこれは果物缶詰としてはお高い。でも高級果物であるメロンを缶詰にしようと考えた時にはやはり高級志向で、ということもあったのでは?
「なぜメロンの缶詰を作ったのかですか? そうですねぇ、当時は珍しいものを作ろう、ということもあったかと思いますが。
でも、あの、あまり数が出るものではないので……」とやはり消極的な答えが返ってきた。

「数はあまり出ない」と言いつつも、それでも今なお製造販売されていることを考えると、それなりの需要というのはあるのではないかと思うのだが、どうなのだろう。

1871(明治4)年に長崎でいわしの油漬缶詰が作られたことから日本の缶詰製造の歴史はスタートする。日本缶詰協会によると、果物の缶詰製造は初期の頃から行われ、明治5年にはみかんの缶詰が作られ、明治13年には桃、ビワ、イチゴも試作されたという記録があるという。またかなり初期の頃にはスイカの缶詰も作られ、チャレンジ精神は旺盛だった模様。
「当時は果物というと食べられる季節が限られていましたから、缶詰にすれば一年中いつでも食べられるというのは魅力だったんではないでしょうか」と日本缶詰協会の話。


そして果物の缶詰について色々調べているうちに、ちょっと面白いことがわかった。
それは黄桃缶詰の桃は、「缶桃(かんとう)」と呼ばれる缶詰専用に育成された種類だということ。
缶桃は日本の白桃とアメリカ系の黄桃を交配して育成したもので、肉が硬くしまっていて、鮮やかな色沢と独特の香味を持っているのが特徴で、昭和の時代になってから出回るようになったという。

明治時代にスイカやらイチゴやら、色々な果物の缶詰が作られたというのは明治人のチャレンジ精神と考えられるけれど、戦後にメロン缶詰誕生というのは“なぜ?”とやはり気になるところではあります。
(こや)