◆現実眺めるラッパーの日記
ECDは、ラッパーだ。ラッパーは言葉を武器にすることのできる稀有な音楽をやっている人たちである。
だから彼は彼の日常と地続きの現実を鋭く眺めている。自分が関わる日常がどれだけ息苦しく、自分にとってよそよそしいものであるか、この日記を読むとよくわかる。たとえばイラクでの邦人人質事件のとき、彼は「自作自演でも支持します」とBBSに書き込む。当然、2ちゃんねるでは相当ひどい書き込みがある。彼は一人で敵となるが、少しも怯(ひる)まない。
アナキストだな、と思う。ラッパーはもともとそうだったなどと言うつもりはない。いかなる権力の匂いとも無縁のありようは、どこか竹中労さえ思わせる。ヒップホップが、どんどんポップになっていく中で、ECDの存在はブキミで、貴重だ。巻末の短篇小説も興味深い。
【書き手】
陣野 俊史
1961年長崎生まれ。文芸評論家、フランス文学者。ロック、ラップなどの音楽・文化論、現代日本文学をめぐる批評活動を行う。最新作に『戦争へ、文学へ 「その後」の戦争小説論』(集英社)。その他の著書に『フランス暴動 - 移民法とラップ・フランセ』『じゃがたら』(共に河出書房新社)、『フットボール・エクスプロージョン』(白水社)、『フットボール都市論』(青土社)など。
【初出メディア】
日本経済新聞 2004年9月30日
【書誌情報】
ECDIARY著者:ECD
出版社:レディメイド・インターナショナル
装丁:単行本(189ページ)
発売日:2004-09-19
ISBN-10:4902824000
ISBN-13:978-4902824001