実はヒットしなかった『ショーシャンクの空に』 製作費をほとんど回収できず、オスカー受賞もなし
拡大する(全1枚)
映画『ショーシャンクの空に』(1994)

 スティーヴン・キング原作の映画『ショーシャンクの空に』が、今夜金曜ロードショーにて24年ぶりに地上波放送される。不朽の名作として知られるが、実は公開当時はまったくヒットせず、劇場はガラガラ、頼みのオスカーも蓋を開けてみたら無冠と、惨憺(さんたん)たる結果だった…!

【写真】24年ぶりに地上波放送 名作『ショーシャンクの空に』フォトギャラリー

 本作は、キングの中編小説『刑務所のリタ・ヘイワース』を原作に、ティム・ロビンスとモーガン・フリーマン主演で映画化。無実の罪で投獄された男を主人公に、囚人との友情や、長い苦難にあっても決して希望を失わない男が巻き起こすミラクルを描いた作品。

 “史上最高の映画”と称され、映画ランキングでは軒並みランクイン。IMDbのトップ250では、『ゴッドファーザー』や『ダークナイト』を抑え、1位に輝き続けていている。

 ところが、傑作と名高い本作も、公開当時はお世辞にも大ヒットしたとは言えず、興行成績は惨憺たるものだった。

 本作が公開されたのは、今から30年近く前の1994年9月。評論家からの覚えもよく、一般試写の手応えもあったことから期待されていたが、一番の観客動員が見込まれる公開初週の売上は、たったの72万7000ドル。監督のフランク・ダラボンとプロデューサーのリズ・グロッツァーが、当時一番クールな映画館、ハリウッドのシネラマ・ドームにお忍びで様子を見に行くと、900席もあるシートはガラガラだったそう。当初は限定公開だったとは言え、期待が高かっただけに、現場の落胆はかなりのものだったろう。

 公開4週目からは拡大公開するが、それでも客足は思うように伸びず。結果、全米興行収入1600万ドルと、制作費2500万ドルにも及ばない散々な結果に(このほかに宣伝費用や劇場公開の経費などもかかっている)。ちなみに、94年の興行収入トップは『ライオン・キング』で2億9500万ドル超とまさに桁違い。…『ショーシャンクの空に』は95位だった。

 年をまたぎ、アカデミー賞で7部門にノミネートされたのを機に再公開され、巻き返しに期待がかかるも、蓋を開けてみたらオスカーはまさかの受賞ゼロ。興行成績も北米で合計2800万ドル、その他海外で3000万ドルに留まり、ヒットと呼ぶまでには至らなかった。

 風向きが変わったのは、本作の権利をメディア王のテッド・ターナーが買ったことだった。ヒット作ではないのでライセンス料が安く、傘下のケーブル局でヘビロテされたほか、ビデオレンタルも好調で、1995年にはレンタルランキング1位となった。その後もテレビ各局で定期的に放送され、認知度が爆上がり。今や配信サービスにも幅を広げ、世界で観られ続けている。

 劇場公開時にヒットしなかった要因としては、90年代はブルース・ウィリスやアーノルド・シュワルツェネッガーなど、ド派手なアクション映画が人気だったことや、公開時期が『フォレスト・ガンプ/一期一会』(北米興行収入約3億3000万ドル)や『パルプ・フィクション』(約1億800万ドル)と重なったことが挙げられる。また、モーガン・フリーマンはタイトルが悪かったと発言しているし、監督はLos Angeles Timesの評価がイマイチだったことを挙げている。また女性の登場人物がほとんどいない本作は、男性の涙腺に訴える作品でもあり、周囲を気にせず男泣きするには、(当時は特に)自宅が良かったのかもしれない。

 まさかの大コケかと思われたが、興行収入に加え、ホームビデオに放映権と、その収入は増え続け、今やワーナーの屋台骨を支える一本に。刑務所の残酷な所長を演じたボブ・ガントンは、本作から定期収入があると明かし、その額は公開10周年の2004年ですでに10万ドル近く、「この先も娘は収入を得られるだろうね」と話している。ウハウハなのはガントンだけではないだろう。

 さまざまな紆余曲折を経て世界が認める名作となった『ショーシャンクの空に』。かつてテレビの前で初めて感動した視聴者のように、今夜の放送を堪能しよう。(文:寺井多恵)

 映画『ショーシャンクの空に』は、日本テレビ系『金曜ロードショー』にて5月20日21時放送。