針穴写真って知ってます? この高感度デジカメ全盛の時代に、レンズもなく手で開けた針穴から写真を写す写真が静かなブームなのです。

針穴写真とはピンホール写真ともいわれ、レンズもいらず、ピント合わせがないという原始的な技法で撮られる写真。
針穴の原理は、すでに江戸時代には知られており、雨戸の節穴から差し込む光によって、葛飾北斎が障子に「逆さ富士山」を写し出している様子が描かれているほど。
カメラにする箱に、針穴くらい0.2~0.3ミリの小さな穴を開け、そこから被写体に向けて箱を置き、シャッター代わりの扉を開ける。もちろん、原始的なカメラなのでフラッシュはない。光のあるところでないと写真は撮れないが、夜間でも電灯などの光があれば撮影は可能。海辺などの眩しいくらい明るいところでは約1秒、晴れの日に普通の外で取るときは3秒、ライトしかない室内では10分と、撮影時間は変わってくる。
採り込む光の量が少なく、普通のカメラに比べたらものすごく時間がかかるため、スピードの速いものは写真に写りこまない。つまり今見ている風景が、そのまま写ることがないということ。そして、明るいところで速く動いているものは写らず、ゆっくり動くものは撮影時間によっては写り込む。

また針穴写真は、デジカメのように、焦点が一点に当たらないため、撮っている全景にピントが合うのが特徴。針穴写真は近いところも遠いところも自然と同一のピントで撮影できるのだ。
でも、長く撮影時間がかかるため、被写体がゆっくり動くと、動きのままにふんわりとした影ができ、幻想的に写ることも。
針穴写真をやっている写真家さんは針穴カメラを自作することも多いそう。
カメラは穴を開けられ、フイルムを入れられれば何の入れものでもいいので、お菓子や紅茶の空き缶や段ボール箱でも作ることも可能(う~ん、エコ?)。

8年前に針穴写真に出会い、個展を開くほどにすっかりはまった針穴写真作家の大木靖子さんは、「目で見ているものと違う出来が面白い。出来あがりが現像してみるまでわからないところが魅力」と語ってくれた。
大木さんいわく、「時間もいっしょに写す」感覚だそう。時間をかけて、時間とともに映像を作り出す、まるでスローライフをそのもののような針穴写真。今まで気に留めていなかった風景も針穴を通すとまるで新しい風景に見えてきますね。

話を聞いているうちに、ううっ、私もやりた~い!!!
すっかりはまってしまいました……(単純)。
(カシハラ@姐御)
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