銭湯のサウナや、カップラーメンのお供や、ゼルダの伝説などで今でも使われている砂時計。砂時計は、約1000年前から使われていたといわれているが、そこには、現代科学をもってしても解明できていない、様々な謎が隠されているらしい。


そんな、砂時計にまつわる謎が紹介されている本がある。タイトルはずばり、『砂時計の七不思議』(中央公論社)。著者は中央大学教授の田口善弘教授(執筆当時は東京工業大学助手)である。なんともロマンあふれるタイトルにいざなわれ、読んでみた。

本には、タイトルの通り、砂時計にひそむ七つの不思議が紹介されている。例えばこんなものだ。

「砂時計の砂が流れ出る速さは、砂時計の上半分に残っている砂の量によらない」

これ、一見すると当たり前のように見えるが、これが水だとこうはいかない。

紙パックの牛乳の底近くの側面に穴を開けたとする。最初はいきおいよく牛乳が出てくるが、最後の方はちょろちょろとしか出なくなる。これは、パックに残っている牛乳が多いほど、勢いよく出るからだ。お風呂にためた水を排水溝から流すときも同じ。砂時計の場合、このようなことは起こらず、どんなに残りの量が少なくなってきても、砂が落ちる量は一定である。


このような現象が起きるのは、砂が、ある程度の大きさをもったつぶつぶ(粉粒体)であるからなのだそう。つぶつぶであるがゆえに、水などの液体とはまた違った性質をもっているのだ。

このつぶつぶをよく調べると、砂時計がくびれの部分で目詰まりをしないのはどうしてか、ということもわかってくる。七不思議の一つに、「くびれ部分の直径が、砂粒の6倍よりも小さいと砂が流れなくなる」というものがあり、砂時計はそうならないよう、きちんと設計されているのだ。

本には、砂時計の七不思議にとどまらず、つぶつぶにまつわる様々な現象が紹介されている。1995年に執筆された本であるが、トピックが幅広く、今でも新鮮さが失われていない。専門的な内容もあるが、全体としては読みやすくまとまっているので、興味があれば読んでみていただきたい。そして読んだ後、サウナで砂時計を眺めながら、じっくりと物思いにふけってみるというのが、筆者がオススメする本の読み方である

ちなみに田口教授は最近、『高校で教わりたかった物理』(日本評論社)という本を執筆したとのこと。これを読むと、科学者が「幽霊はいない!」と断言できる理由がわかるのだそうだ。興味があればこちらもぜひどうぞ。最後に、田口教授から一言。

「身近なところにも科学のネタは転がっています。
ぜひ、考えてみてください」
(nadi/studio woofoo)
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