少年は、古い時計の針を集めた。
むかしの時計の針には、夜光塗料としてラジウムが塗られていた。
時計を分解して、ラジウムを削りとった。他にも煙感知装置やランタンのマントルからも、放射性物質を回収していた。
結局、五軒先からガイガーカウンターが反応するほどの放射線物質を母親の物置に溜め込んで、“米国連邦放射線緊急事態対応が発動され、FBIと原子力規制委員会がやって来て、お母さんの物置はスーパーファンド浄化地帯”に指定される。
このエピソードが紹介されているのは『Made by Hand~ポンコツDIYで自分を取り戻す』の「どう学ぶかを学ぶ」の章だ。
著者のマーク・フラウエンフェルダーは、“現代社会の馬鹿げたカオスから抜け出して”ラロトンガ島に移住することを決意。
旅行でラロトンガ島で一週間すごしたときの“壮観な大自然、豊かな果実が実る木々、穏やかな気候”に囲まれた生活を夢見て、ライフスタイルを変えるべく移住することにしたのだ。
ところが、“車窓の景色を二分間ほど見たところで、この島の生活に抱き続けてきた幻想をかき消されて”しまう。観光客の目には気にならなかった景色が、移住者にはくっきりと見えてしまったのだ。
“肺炎と気管支炎とシラミと白癬と足の爪の水虫と社会的孤立に耐えかねて”、家族は四ヶ月半でロサンゼルスにもどる。
しかし、著者は心に誓う。ロサンゼルスでも“ココナッツの日”に相当するものを見つけようと。