顔が良く、それでいて歌が上手い人っていますよね。福山雅治とか桜井和寿(Mr.Children)とか宮本浩次(エレファントカシマシ)とか、その辺りのイケメンたち。うらやましい。

あと、彼の登場も驚きだった。突如、「しょーしゅーりいきーっ!」と美声を響かせ我々の前に姿を現した、ポルトガル出身・ミゲル君のことである。
実は、あの初登場から2年以上が経過。どうやら、彼も“大人の階段”を登っているようだ。何しろ、最近のCMではダンディな衣装に身を包み、新境地を開拓しているのだから。
そして、もう一つ。現在の『消臭力』CMにおいて、ミゲル君の隣に、なぜか演歌歌手・さくらまやちゃんが寄り添っている。彼女は彼女でセクシーな衣装に身を包み、今までのイメージを払拭。

この2人、どうもマジらしい。その名も「MarMee(マーミー)」というユニットを結成し、自身のロックスピリットを世に問う動きを見せているのだ。
そこで、ユニバーサルミュージックの落合氏と一緒に「MarMee」プロジェクトに携わっている鹿毛康司さんに、詳しい話を伺ってきた。今回のカップリングを発案した、ゴッドファーザー的な存在である。



――そもそもミゲル君って、どこで発見したんですか?
鹿毛さん 当時は、震災が起こって間もない時期でした。電気も少なく、日本で撮影しちゃいけないと思ったんですね。なので「海外で撮影をしよう!」と。フランスやイギリスも候補地に挙がっていましたが、ポルトガルは特に子どもを起用する際の締め付けが緩かったんです。外国にいる普通の子で撮りたいと思ってたので、現地でオーディションし、そこにミゲルがいたんです。
――“普通の子”にしては、歌が上手いですよね。
鹿毛さん そう! ミゲルは歌が上手すぎるから、当初は補欠だったんです。他にメインで考えていた子が2人いて、その子たちで撮影もしたんですよ。
――へぇ~!
鹿毛さん 当時はデリケートな時期なので、水をCMに映したくなかった。

震災報道による、色々な惨状を思い出させてしまうでしょう。なのに補欠だからと、ミゲルの撮影となるとクルーがなぜか噴水の前で撮ろうとするんです。あたりまえですよね、補欠での撮影の仕方もきめてたんですから。

「いや、ライティングの関係で……」と言うことでよくわかるんですが、大きな声で「ミゲルが主役だ!」
で、みんなが「えー主役だったんですか」笑

――流れ的に、ミゲル君が主役になっちゃった(笑)。
鹿毛さん だからあの時の映像は、ライティングが急遽変わってみんな困ったんです。撮影の時間帯が良くなくて。本当なら太陽の昇り降りも計算し、撮影時刻を決定するものなんですけど。でもみんながリカバリーしてくれました

【さくらまやちゃん起用のきっかけ】
鹿毛さん 昔、まやちゃんのステージにミゲルを出してもらい、デュエットする機会があったんですよ。で、「あ、2人はちょうど同い年だな」と思って。
――15歳同士ですよね。
鹿毛さん そう。それでミゲルに対する声援も、最近は「カワイー!」から「カッコイイ!」に変わってきたんです。だから、今回は思いっきりカッコ良くしてやろうと思って。スーツもヘアメイクもカッコイイのにして、作り上げたの。
――だから、ああいう雰囲気なんですか。
鹿毛さん 少年の時代もありましたが、ミゲルも声変わりしてキーが変わってしまった。ところが、もう一方で「カッコ良くなった」という反響もある。さくらまやちゃんも15歳で、人生の同じ時期に差し掛かっていますよね。
――なるほど。子どもの時期から「キレイ」「カッコイイ」という方向に進んでいく時期に。転換の年頃2人だからこそ、このコスチュームだったんですね。
鹿毛さん これで、みんなが喜ぶと思ったんだよね。『スターを作ろう』とかじゃなく、『こうしたらみんなが喜ぶだろう』ということで、思いっきりカッコ良くした!

【MarMeeの音楽性】
鹿毛さん 「イナズマロックフェス」(西川貴教が主催する野外ロックフェス)に行ったんですけど、まやちゃんはその時、初めてロックを観たんですね。特にT.M.RevolutionとUVERworldは食い付いて観てました。で、「私はコレを歌いたい!」って。
――あ、「やりたい!」と。
鹿毛さん 「ロックがいい!」って。
――へぇ~! 確かにデビュー・アルバム(12月18日発売『MarMee』)は、1曲目からガンガンのロックチューンですね。
鹿毛さん ガンガンですよ! 

それでユニバーサルレコードの落合さんってプロデューサーがいきに感じてそれを形にしようっていってくれて。彼は今回来日のKISSだとIL DIVOだとかROD STEWARTだとかを日本で担当してる大物なんですよ。笑。その彼が本気でCDを今回作り上げたわけですよ。なんだかすごい動きになりまして。CMから生まれたけど、すごい展開になってますよ、このCDは。

それも、まやちゃんのリクエストに応えた形で。僕たちは「本当? やる!?」って(笑)。彼女は「歌う!」って。

【音作りに関して】
鹿毛さん 最近のJ-POPって「ヴォーカルが前面に出て、バックに演奏がある」という音作りが主流なんですね。要するに、平坦なんです。でもMarMeeでは、曲そのものがロックとして成り立つようにミックスしました。「2人の若い子どもの歌があって、大人の演奏があって」は違うなと思って。
――ギターの音も主役だし、ドラムの音も主役だし、という音作りですか。なるほど、確かに!
鹿毛さん 実は、CMでもそういう音作りになっているんですよ。
――へぇー! 気を付けて聴くと、他のCMと音の鳴り方が違っているんですか。
鹿毛さん うん。あのCM、そこら辺も珍しいんです。単にCMソング作るんだったら、演奏は打ち込みでもいいんですよ。だけど、これは全部演奏してる。今回のアルバムでは2曲(『獏の夢』と『I Just Sing For You ~卒業~』)、すかんちのポンプ小畑さんがドラムを叩いてるから。
――マジっすか!? 僕、大好きなんですけど(笑)。
鹿毛さん いいですよね(笑)。そこも聴きどころかな。

【2人はロック初挑戦】
鹿毛さん 当初、2人はロックをどう歌っていいか戸惑っていました。というのも演歌を歌う場合は、先生が来て指導するらしいんです。今回も指導をお願いされたんですけど「いいよ、好きに歌って」って。
――まやちゃん、演歌の時と明らかに歌い方が違いますもんね。一方のミゲル君は、ロック好きだったんですか?
鹿毛さん ミゲルはロック、好きですよ。でも、当初は歌えなかった。ファド(ポルトガルの民謡)の経験しかなかったんです。だから、僕が歌ってみせたりね。
――鹿毛さんが歌ったんですか(笑)。

【MarMee初の楽曲は、約60の候補から厳選!】
鹿毛さん MarMeeは作曲家さんなど色んな方が集まり、プロジェクトになっています。一番初めの曲は、約60の候補曲の中から選びましたよ。
――60曲ですか!
鹿毛さん なぜかと言うと、僕が首を縦に振らなかったんです。今年の6月に撮影しなきゃいけなかったんですけど、5月になってもまだ決まらない。でもその直前にようやく「これだ!」という音楽が送られてきました。それが『お気楽 ウッキーラッキー』の曲。
――鹿毛さんが作詞を担当されている曲ですね。あの曲には、どういう意味が込められているんですか?
鹿毛さん 震災が起こってから少しだけ時間も過ぎ、みんなの気持ちが変わったところにボールを投げてみようと思ったんです。
――ボール、ですか?
鹿毛さん 震災直後、みんなが「あの頃に戻りたい」という気持ちの時期に『チカラにかえて』という曲を作りました。だけどあれから一年が過ぎると、「引きずるな」という声をいただくこともある。でも、福島ではまだ終わっていない。その時、ある人から「“涙を拭いた後の笑い”でいいんじゃない?」って言われたんです。いいこと言うなぁと、思った。そこで「そいやっさー!」というフレーズを思い付いたんです。「もうクヨクヨするの、やめようよ」という意味を込めた言葉です。
――曲の肝となるフレーズですね。
鹿毛さん それを、バカバカしく伝えたい。ミゲルもまやちゃんも着飾っているんだけど、どこかコミックだよね。だから「どうぞ、笑ってください」って、そんな気持ちを込めました。

【デビューアルバムのコンセプト】
鹿毛さん 今回はテーマ設定していないんです。
――でも、一貫したテーマがあるように聴こえますよね。一言で表すと「夢をあきらめないで」だと感じました。

鹿毛さん 皆がそれぞれ持ち寄ったアイデアが、偶然それだったんです。結果的にコンセプシャルになって、スゴイなぁって思いましたよ(笑)。
――まやちゃんが作詞を担当した『獏の夢』は、そのコンセプトのクライマックスの一つでした。
鹿毛さん うん、まやちゃんも同じことを考えていた。「小さい頃に語り合った夢は」なんてフレーズも出てきますしね。

【MarMeeの本気度】
――お話を聞くと、MarMeeはいわゆる“企画もの”のユニットではなさそうですね。
鹿毛さん 2人ともガチでやってます。今回のアルバムにも最後に『消臭力のうた』が入っていますけど、僕は「入れなくていい!」って言ったぐらいです。でも時すでに遅しで、収録された形CD製作が進んでいてしまったんですね。
――そこまで本気でしたか!
鹿毛さん 本音としては『消臭力』から外れ、MarMeeとして活躍してもらおう、と。それを、我々がみんなで応援する「MarMeeプロジェクト」もありますから。
――ということは純粋なミュージシャンとして音楽番組への出演、2作目以降の発表等の展開も予定されているわけですか?
鹿毛さん これはねぇ、皆さんがどこまで支持をしてくれるかに懸かっています。
――その辺、切実になりますね……。
鹿毛さん 出させてあげたいーっ!
――では、ゆくゆくは紅白出場も……
鹿毛さん (遮って)その前に、「ミュージックステーション」に出たいな(笑)。

【MarMeeの未来について】
鹿毛さん 俺、言ってるんだよね。ミゲルに「まやちゃんと結婚しろ」って。
――ガハハハハ! 炊きつけますね(笑)。
鹿毛さん 恥ずかしがって「ノー! ノー!」とか言ってるけど(笑)。「おまえ、いいぞ。日本国籍、取れるかもしれないぞ」って(笑)。まやちゃんには「外国人が好きらしいじゃない。ミゲル、外国人だよ?」って。「う~ん」って言ってたけど。
――まやちゃん、外国人が好きなんですか?
鹿毛さん いや、わからないです(笑)。
――なんですか(笑)。でも、そういう展開があると面白いですね。
鹿毛さん 俺は結婚してほしいと思ってるんですけど、本人たちはどうなのか……。結婚式で、歌を歌おうかな! 何を歌おうかな……。
――鹿毛さん、先走ってるじゃないですか(笑)。
鹿毛さん 本当に2人が結婚したら、たぶん俺たち、新しい曲を作るだろうね。……それ、いいねえ! その時しか歌わない曲を。
――贅沢ですね。

そんなロックユニット・MarMeeのデビュー・アルバム『MarMee』は、12月18日にリリースされる。若さと大人っぽさが同居した、純正ロック作です! みなさんもぜひチェックしてみてください!