ちなみに第100回の受賞作は芥川賞が南木佳士「ダイヤモンドダスト」と李良枝「由熙」、直木賞が藤堂志津子『熟れてゆく夏』と杉本章子『東京新大橋雨中図』でした。節目にふさわしいといえるほど華々しい受賞作かといえば別にそうでもない(話題性に限って、の話ですが)。あくまで通過点として淡々と両賞は歩んできたわけです。しかしニコニコによる記者会見生中継なども始まり、文学賞ならぬ文学ショーとしても注目度が高まってきた現状は25年前とは異なるでしょう。第100回と同じように淡々と「通過点」の作品を出すのか否か。そんな点にも着目して今回の賞の行方を見届けたいと思います。
それでは予想を。まずは芥川賞から。前回と同じで★で表しているのは今回の本命度ですが、作品の評価とは必ずとも一致しないことをお断りしておきます。(5点が最高。☆は0.5点)。
■「穴」小山田浩子(初。「新潮」2013年9月号)
今回の候補作は5作で初ノミネートの作家が2人いる。この辺にも新鮮さをアピールし、文学賞復興を印象づけたい芥川賞側の思惑が覗けて見える。しかし新しい才能の持ち主が注目されるようになるのは喜ばしい事態なのである。文句なし!
小山田浩子は2010年に「工場」で新潮新人賞を獲得してデビュー、同作は他の短篇とともに2013年に単行本化され、読書家の間では話題になった。