冨樫義博が少年ジャンプで『HUNTER×HUNTER』の休載を発表してから3週目。今回は単行本の3巻を紹介する。

タイトルは「決着」。第3次試験の後半戦から4次試験序盤の話が続く。
巻頭コメントは『海に誓ったり誓わなかったり。』。ワンピースで髪の長い人物が、夕方の海をバックに立っている。その顔は逆光で見えない。

嘘の設定を誤ったマジタニの誤算『HUNTER×HUNTER』3巻を振り返る
巻頭コメントは『海に誓ったり誓わなかったり。』。ワンピースで髪の長い人物が、夕方の海をバックに立っている。その顔は逆光で見えない。

5人の長期服役囚とバトルする3次試験の団体戦。クラピカVSマジタニとのデスマッチが行われた。カッパ頭で整形失敗、歯もボロボロの男である。今までに19人殺してきて切りが悪いため、そろそろ20人にしたいらしい。
戦闘開始と同時にマジタニが右拳で床を粉々に砕いてしまった。そして、さりげなく見せつけてくる背中に彫られたクモのタトゥー。
レオリオ曰く、幻影旅団の証であるらしい。
幻影旅団はクラピカの同胞、クルタ族を根絶やしにした組織。これが事実なら、マジタニはクラピカにとっての仇敵ということになる。
が、クラピカ曰く、本物の旅団員のタトゥーにはナンバーが刻まれており、殺して人数はいちいち数えていないとのこと。マジタニは詐欺、脅迫の罪をこつこつと重ね、懲役108年となっているのだが、今回も嘘をついていたのである。
のちのち、出てくる幻影旅団の話を読んでいれば、マジタニの薄っぺらさがますます味わい深くなってくる。



ウソの設定にすごみがなさ過ぎたマジタニ


これから先の物語には幻影旅団がちょくちょく出てくる。非戦闘要員の連中はあまり殺生をしないが、戦闘向けの能力を持っているメンバーは息をするように人を殺す。
ウボォーギンは三國無双みたいにマフィアの集団を蹴散らしていたし、団長のクロロは天空闘技場でレフェリーを爆死させたり、見物人をヒソカに投げつけたりしていた。19人よりは確実に殺している。
「どっちがプレイヤー多く殺すか競争な」
ポケモン何匹ゲットしたかを競い合うように人を殺す奴もいる。本家の旅団を見ていると、床を粉々にできるほどの怪力男が殺害人数19人っていうのはちょっと少ないんじゃないかと思えてくる。


幻影旅団に対する世間の知名度


なんでこんなに明け透けなウソを練ってしまったのか。
それは幻影旅団の知名度の低さにある。
「ハンターを目指すものなら誰でも耳にしたことくらいはあるだろう 史上最凶との悪名高い盗賊団」
これがマジタニの幻影旅団に対するイメージである。19歳前後のレオリオは旅団は蜘蛛のタトゥーをしているらしい、という程度の知識量だったし、ゴンは旅団のことは何も知らなかった。
3巻が発売された1998年当時は、まだそこまでインターネットも普及していなかったし、新聞沙汰になることはない、知る人ぞ知る裏組織くらいのものだったんだろう。


そもそも、幻影旅団は基本的にはみんな念能力者であり、基本的に複数人で行動をとるため、警察に捕まって長期服役になるようなヘマもしない。マジタニ程度のレベルの人にクルタ族が殺されたってんなら、そりゃあクラピカも怒る。

結局、マジタニは負けを宣言する前に殴り倒され、気を失ってしまう。そして、同じチームの服役囚からは「全く くその役にも立たねーな」と呆れられるのであった。
(山川悠)

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