前回の記事で「SEASONIIは親父ギャグがパワーアップしている」「親父ギャグは箸休めではない」と書いたが、14日放送の『99.9-刑事専門弁護士-SEASONII』(TBS系)第1話を観れば、その意味はご理解いただけたと思う。
松本潤「99.9−刑事専門弁護士−」1話。親父ギャグが真相究明の一助になるも、木村文乃は不満顔
イラスト/まつもとりえこ

なんとこの回、親父ギャグが事件の真相究明を大きく前進させているのだ。


木村文乃は昔からのファンに受け入れられるか?


SEASONIに登場していた弁護士・立花彩乃(榮倉奈々)だが、現在は「まだ見ぬ世界へ」(嵐に同名のシングル曲がある)という理由で海外に留学中。要するに、SEASONIIのキャストに榮倉は加わっていない。
これは、ドラマ撮影時の彼女が出産してまだ間もなかったためだと思われる。そして、榮倉に替わり”ヒロイン役”として登場するのは尾崎舞子(木村文乃)。『HERO』(フジテレビ系)の第2期で、松たか子に替わり出演した北川景子のようなシチュエーションだが、果たして木村は受け入れられるだろうか?

SEASONIIの世界観は、「弁護士」と「検事」と「裁判官」によるトライアングル。深山大翔(松本潤)は裁判官という存在に心を開いているとは言い難く、「元裁判官」という経歴を持つ舞子との相性も決して良いとは言えない。
視聴者からは「榮倉奈々が恋しい」「SEASONIの方が華があった」という声が上がっているが、変化が起こればそれを敬遠するファンが出てくるのは世の常。初回を観ただけで結論を出すのは早計で、舞子と深山の立ち位置の違いがストーリーをどう転がしていくか注目していきたい。

また、舞子の脳裏には、時折“謎の男”(佐藤勝利)に懲役1年の判決を言い渡す場面がフラッシュバックしている。この過去が、彼女が裁判官を辞めた理由に深く関係しているのだろう。その辺りについても、後に詳細が明らかになっていくはずだ。

ちなみにだが、『99.9-刑事専門弁護士-SEASONII』放送中に流れるビオレのCMには榮倉が登場している。彼女が登場した瞬間、Twitterでは「立花先生!」といった歓喜の声があからさまに上がってしまった。
ある意味、これは特別出演ということになるか!?

深山は自身の境遇と依頼者を重ね合わせた?


今回の第1話では、深山大翔がどういう人物だったかをおさらいするような展開が用意された印象。
例えば、金欠でタクシー代を舞子に払わせたり。殺人事件の加害者とされる鈴木二郎(半海一晃)との接見では、わざわざ出身地の質問から始めたり。どれも、既視感のあるシーンばかりである。今回は、深山大翔の人となりを再確認する“復習編”といったところだろうか?

「法廷での証拠」を最重要視する舞子は、深山のやり方が理解できない。二郎の娘・加代(谷村美月)は父の無罪を信じて疑わないが、舞子は今までの裁判記録を見た上で二郎の有罪を確信している。なのに、どうして“出身地”から掘り起こすような無駄な作業をこの男はするのか?

舞子 早く事実を伝えるべきです!
深山 この時点で、誰に事実が見えてるっていうの?
舞子 揺るぎない強固な事実をもって起訴されてるんですよ? 
深山 強固な証拠……。だから、裁判官は嫌なんだよなぁ。裁判官っていうのは、起訴状を読む時点で有罪だと思い込んでいる。だからこの国は、刑事事件の裁判有罪率が世界一になるんだ。
舞子 起訴されるのは、覆せない強固な証拠があるからです。だからこそ、裁判官の手に委ねられた時には99.9%有罪になります。
深山 99.9%有罪だとしても、そこに事実があるとは限らない。
残りの0.1%に事実が隠されてるかもしれない。

いきなり、揉めてしまった2人。同時に、上記のやり取りで深山(弁護士)と舞子(裁判官)の立ち位置の違いがくっきり浮き彫りになったと思う。舞台挨拶の際、松本潤が同作のテーマとして掲げた「日本の司法の現状への問題提起」とはこのことを指すのだろう。

それにしても、「舞子ちゃんは、私のことを疑っているのかな……」とつぶやく二郎の表情が何とも切なかった。一方の深山は、舞子に反して事件を一から調べ直し“真実”にたどり着こうとしているのだが。
彼は有罪判決を受けて獄中死した自身の父・大介(首藤康之)が冤罪だったと、今でも信じて疑わない男である。

ダジャレを契機に深山をバックアップする佐田


深山との意見の相違で班目法律事務所への依頼を取りやめようとした舞子だったが、佐田篤弘(香川照之)の説得により、今回だけの特別契約で同事務所の弁護士となった。舞子は深山と同等の立場で裁判と対峙できる立場になったのだ。

しかし、そもそも両者は事件への先入観が異なり、いがみ合いが発生することは必至。舞子は情状証言を集めるため事務所に加代を呼び出し、「犯人はあなたのお父さんの可能性が高い」と方針を変えるよう説得を試みている。
もちろん、加代にとってそれは本意ではなく「お父さんは絶対にやってない」と主張。彼女が二郎の無罪を確信する理由として、事件当日夜の妙な出来事があった。
なんてことはない。風呂へ入る前の二郎は、お腹を気にしながら「脂肪め(しぼうめ)……、しぼめ!」と親父ギャグを放ったらしい。
「人を殺した人間が、その直後にそんなダジャレを言えますか?」(加代)

しかしこの事実が、舞子の方針へ傾きかけていた佐田に響いた。そして「あなたとお父さんが望むなら私たちは徹底的に戦います」と、堂々と宣言! 納得がいかないのは、舞子だ。

舞子 なぜ、方針を変えたんですか?
佐田 ダジャレだよ。私も殺人を犯した人間がその直後にダジャレを言うとは思えないからな。
舞子 そんなことで!? 法廷でダジャレなんか何の意味もありません! ダジャレですよ? 親父ギャグですよ!?
佐田 じゃあ君は、人を殺した直後に親父ギャグを言うのか? しかも「脂肪め~しぼめ~」だぞ!? あんな一級品の親父ギャグは、人を殺した直後に絶っ対に思い付きません!!
舞子 (呆れ顔)
佐田 とにかくだ。法廷で通用しないものこそ、強い証拠の可能性がある!

多くの視聴者が、カタルシスを覚えたシーンではないだろうか。こうして、佐田は深山の方針に理解を示し始めた。やはり、2人の関係性は一筋縄ではいかないのだ。

真実が判明して立つ瀬のない木村文乃


結論から言うと、二郎は無実であった。

まず深山は、重大な証拠とされていた写真のアングルに疑問を抱いた。
そして、二郎の部下の阿部充(長塚圭史)が取引先に電話した際の録音テープに、公園付近の噴水の音が入り込んでいたことを突き止める。これらを元に、阿部の証言が虚偽だと解き明かしたのだ。
要するに、この事件の真犯人は阿部。深山は阿部に、自身の罪を二郎になすりつけようとしていたことを認めさせている。“0.1%”に隠された事実を解き明かそうとする彼の姿勢が、この結果に結び付いたのだ。

二郎が無実だとわかり、舞子には立つ瀬がない。佐田から握手を求められるも「私は何もしてません……」と、彼女はそれを拒絶する。
舞子が班目法律事務所の弁護士という立場になったのは、今回限りだ。次回以降、彼女はより「元裁判官」としての立場を鮮明にしていくのか。それとも、次第に深山の姿勢に感化されていくのだろうか?

『相棒』(テレビ朝日系)や『踊る大捜査線』(フジテレビ系)ではないが、作品がシリーズものドラマとして定着していくか否かは、第2シーズンの出来が大きく影響してくる。
14日の第1話に関して言えば、15.1%という高い数字を叩き出した。
(寺西ジャジューカ)
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