「第十五話 昔の話をしよう」は今日10月22日(月)23:00より、TOKYO MXほかで放送。オンライン配信はFOD独占配信中。
今回からOPとEDが一新された。EDはエモーショナルな歌声が印象的な、北海道出身のロックバンドeastern youthの「時計台の鐘」が使われている。1988年からの活動で結成30年。道民にはぐっとくるものがあるEDだ。OPの絵は食ってばっかりだったね。

食事の時にいろんなものが見えてくる
杉元勢(杉元・白石・アシリパ・キロランケ)と土方勢(土方・尾形・牛山・家永・永倉)が合流し、緊迫する中で飯を食うシーンはちょっと興味深い。
土方歳三が「手を組むか、この場で殺し合うか、選べ!」と言い出した時、二人の争いを止めたのは、長時間鳴り続けるアシリパの腹の音だった。
この作品では、シリアスなやりとりやグロテスクなアクションと同じ比重で、食事のシーンが盛り込まれている。アニメでもそこをしっかり汲み取り、毎回のようになにかしら食べている。
「食事中にケンカすんなよ?」と言う白石。杉元側につきながら土方側に内通していた、一番生きた心地がしないであろう彼が、箸を進めながら言う。
人は必ず飯を食う。その時だけは、みんな一旦お休み。
腹に企みを抱いている連中がずらりと横に並んで鍋をつついている様子が、レオナルド・ダ・ヴィンチ「最後の晩餐」のパロディで描かれている。
配置は注目しておきたいポイント。
中心のイエス・キリストの位置にいるのがアシリパ。首をかしげるヨハネが白石、そこに顔を突きつけている(耳打ちしている説もある)ペトロが杉元。のけぞりぎみになっているユダがキロランケだ。
夕張の炭鉱事故
ガスを掘り当ててしまい、爆発で犠牲者が出るシーン。爆心が空気を吸い込む「戻し」の描写が恐ろしい。
夕張は「黒いダイヤ」とも呼ばれる良質な石炭が大量に採れる地域だった。
最盛期(昭和30年前後)だと、鉱山が20は稼働し、炭鉱労働者は二万人、人口は十二万人。「炭都」とすら呼ばれていた。
活気があった地域だが、炭鉱事故は頻発。大勢の人が亡くなっている。トータルで3000人以上の鉱夫が事故絡みで死んでいるらしい。
もっとも、第一次大戦から第二次大戦前後は記録が曖昧すぎて、どんな事故があり、何人死んだか、理由は何かなど、正確な部分がわからないことだらけのようだ。

夕張の採炭は1890年くらいから始まっている。「ゴールデンカムイ」が日露戦争(1904年)直後だとすると、鉄道が敷かれ、炭鉱会社ができ、一気に採掘が発展した時期のはずだ。
急に成長したがゆえに、事故の回数や規模がすさまじいのもこの時期。小さな事故での死者は当たり前。100人近くの事故が毎年のように続いている。
1912年は2回巨大事故が起き、それぞれ269人、216人死亡。1914年の夕張炭鉱・若鍋坑ガス爆発事故は423人の死者が出た(参考・1914年 夕張炭鉱・若鍋坑ガス爆発事故(朝日新聞))。
それでも止められないのが炭鉱。
ガス爆発での死者は、爆発そのものに巻き込まれたり、江渡貝のように轢死したりすることもあるが、ガスによる中毒・窒息死がとても多い。
おそらく今回の杉元らも、嘔吐やめまい、昏睡などの様子を見るに、一酸化炭素中毒になっていたのだろう。
事故が起きた際は、作中にあるように、中にいる人は諦めて塞ぐ(火がついた場合は酸欠で鎮火する)対処法は珍しくなかったようだ。
20世紀初頭は酸素マスクが高すぎて普及していなかった。穴の中での安全を保つ正しい知識も事前準備もほとんど無い。
ガス抜きが不十分で、通気経路を間違えてランプの火や静電気で爆発、なんてこともあったようだ。
「夕張 苦うばり 坂ばかり ドカンとくれば死ぬばかり」
原作にある、街のこどもが口ずさむ歌は、実際に夕張に歌い継がれていたもの。
高濃度のガスの突出と火災により、93人が死亡、火を消すために安否不明者がいるにもかかわらず坑内に注水した、という北炭夕張新炭鉱ガス突出事故の大惨事が起きたのは1981年。1985年にも三菱南大夕張炭鉱で62人が死亡している。
煙突の煙が二股になっているのを見て「炭鉱で誰かが死ぬよ!」と叫ぶ子供の死生観は、自然には勝てない人間の姿を描く「ゴールデンカムイ」らしいシーンだ。
ちなみに今は「ゴールデンカムイ」スタンプラリーを北海道中でやっており、夕張市石炭博物館ではARで尾形と撮影できるようになっている。
(たまごまご)