いきなり食欲を刺激してくる三浦貴大、夏帆主演のドラマ25「ひとりキャンプで食って寝る」(テレビ東京・金曜深夜0時52分~)。ゆるい「ソロキャンプ」をテーマにした、趣味ドラマである。
そういえば、つい先日、同じテレ東の深夜枠でキャンプがテーマの人気コミック「ゆるキャン△」のドラマ化が発表された。キャンプブームなんだなぁ、と思うと同時に、やっぱり「趣味ドラマ」の潮流が来ているような気がする。
テントは俺の小宇宙だ
部屋の中でサバ缶のホットサンドにかぶりつくも、腰痛に悶絶し、元カノが置いていったアウトドアブーツを見て、力なく仰向けになる。先週放送された第5話は、キャンプに出かけなったせいか、これまででもっとも寂寥感が漂うエピソードだった。
台風が接近してきたある週末、健人(三浦貴大)はソロキャンプに出かけることを断念し、アウトドアショップを物色する。
「テントの中は俺の小宇宙だ。何人たりとも踏み入れられない、俺だけの宇宙」
陳列されたテントに入り、横になってこんなことを一人思う健人。テントを購入すると、待ちきれないとばかりに部屋の中で設置する。その気持ち、わかるなぁ(テント持ってないけど)。
ちなみに健人が購入したテントはアウトドアブランド「NEMO」の「ギャラクシーストーム2P」。
それにしても、健人の部屋は広い。明らかに2人で住むためのサイズだ。部屋の外には小さな家庭菜園まであった。恋人の理恵子と別れたばかりということだろう。壁にはリュックが2つ、ブーツもテントも置いていっている。彼女は健人と別れて、趣味も捨てていった。健人の趣味に付き合ってくれる恋人だったのかもしれない。
女は男のロマンに興味がない
フラッと遊びに来た友人の武志(福士誠治)と2人で、部屋の中でビールとサバ缶尽くしの飲み会に。武志のオーダーで健人が振る舞った缶詰料理が「サバ缶チーズポテト」。レシピはイラストをご覧ください。

わざわざ部屋を暗くして、買ったばかりのテントの中で2人仲良く缶詰料理をつついていると、武志が「これ、テントの中で食べる意味あった?」と根本的なことを言う。
「お前はロマンがないね」
「でも、女って意外と男のロマンに興味ねえよな」
理恵子は健人のロマンに付き合っていたが、実は興味がなかったということを武志はさりげなく指摘しているようだ。なお、偶数話の主人公・七子は「男のロマン」とは関係なく、ソロキャンプにずいずいとのめり込んでいる。男のロマンに付き合うのではなく、女は女のロマンを持つ時代だ。
武志によって、健人がソロキャンプに出かける理由が、「一人で部屋にいると寂しいから」というものだと明らかになった。一人でいると寂しいから、自然の中で一人になる。矛盾しているようだが、なんだかんだとソロキャンプの先で誰かと出会ったりしているのだから、案外正解なのかもしれない。
武志は女の子と飲むために帰っていき、理恵子のテントと彼女が置いていった傘を持っていってしまう。図々しくてデリカシーのない振る舞いに見えるが、健人のそばから別れた恋人の痕跡を持ち去って立ち直らせようとしているようにも見える。
一人残された健人は、タブレットでたき火動画を見ながら日本酒をあおる。彼が口ずさんでいるのはGOING STEADYの「銀河鉄道の夜」。作詞作曲は峯田和伸で、後に銀杏BOYZでもカバーしている。
泥酔した健人は、テントの中で絶唱する。
「飛び立ってしまいたい あなたを想いながら」
そのまま、腰を痛めて悶絶する健人。もう若くはないということだ。コミカルなエンディングは作り手側の優しさ。それがなければ辛い終わり方だった。
「 裸のまま 一人ぼっち 涙も枯れた あああああ」
本日放送の第6話は、センチメンタルな感じとは無縁な七子(夏帆)がメジナを釣って食らう。今夜0時52分から。
(大山くまお)
作品情報
ドラマ25「ひとりキャンプで食って寝る」
監督:横浜聡子(奇数話)、冨永昌敬(偶数話)
脚本:冨永昌敬、保坂大輔、飯塚花笑
音楽:荘子it(Dos Monos)
出演:三浦貴大、夏帆
主題歌:Yogee New Waves「to the moon」
プロデューサー:大和健太郎、滝山直史、横山蘭平
制作:テレビ東京、東京テアトル
※動画配信サービスひかりTV、Paraviで放送1週間前から先行配信
※放送後にTVerで配信中