『おちょやん』第9週「絶対笑かしたる」
第42回〈2月2日 (火) 放送 作:八津弘幸、演出:梛川善郎〉

コロンブスレコード発見
『おはよう日本 関東版』で高瀬アナがおやすみ中に桑子真帆アナが活躍。41回のジャズ喫茶の「福富」に『エール』に出てきた“コロンブスレコード”があったことを発見、報告していた。立派に高瀬アナ不在の穴を埋めた。【前話レビュー】なつかしい街・道頓堀に帰ってきた千代 高峰ルリ子(明日海りお)など新しい顔ぶれも
『おはよう日本』のエールを受けて『おちょやん』42回。千代(杉咲花)の「たこ入道」の熱演がすべてをかっさらっていった。ハゲヅラを凌駕するほどの思いきり。すごいぞ杉咲花。
心機一転、大阪・道頓堀で発足する新劇団に参加した千代。だが、座長が若く才能も定かでない一平(成田凌)であったことから、集められた劇団員(主に、元天海一座の人たち)は反発し、出ていってしまう。皆、ベテランの須賀廼家千之助(星田英利)が座長に当然なると思っていたからだ。
このぐだぐだな状況を見て、東京新派劇の名門・花菱団の元トップ女優・高峰ルリ子(明日海りお)、元鶴亀歌劇団の石田香里(松本妃代)、歌舞伎俳優・小山田正憲(曾我廼家寛太郎)も稽古場から出て行ってしまった。
このままでは劇団がなくなってしまうかもしれない。そうしたら居場所も弟を探す手立てもなくなってしまう。千代は慌てて千之助を連れてこようと試みる。このとき、床に置いた巾着をしゅっと取ってだっと走っていく千代の俊敏さは大河ドラマ『いだてん』の陸上少女・シマみたいだった。

エンギが良い
千之助の定宿にやって来た千代。付き人・須賀廼家百久利(坂口涼太郎)と一緒にいた千之助を得意のほげた(口のうまさ)を使って説得するも、千之助は頑として動かない。一平と対立した4年前とは今は変わっているかもしれないじゃないかと主張する千代。その根拠は自分も変わったからと。たしかにこの4年で千代は、大部屋とはいえ、映画業界で名前がポスターに載るような仕事をしてきた。千之助に面白いことをやれと言われて、カフェー・キネマで披露したネタ(神社と俳優ネタ)をやるが、カフェー・キネマと同じく見事にすべる。千之助が千代の話にぶるっと震えるところが良かった。
なんとか面白いことをしようと、千代は必死で鶏と猫の攻防のモノマネの練習するが、その方向性は間違っていて、玉(古谷ちさ)を笑わすどころか泣かしてしまう。千代の少女時代からの鶏のマネがまだ生きているのがすごい。
一平、動く。
去っていった天晴(渋谷天笑)がしのぎで子供相手の露天を営んでいるところへ一平が書き下ろしの台本を持って呼びに来る。昔の彼だったら、こんなことはしなかっただろう。やっぱり少しは変わっているのかもしれない。でも、少しは努力していることを、千代には一切言わない意地っ張り。「岡安」に間借りしている彼の部屋には演劇書の数々が置かれ、勉強していることも感じられる。
素直じゃないけれど、言葉もちっともうまくないけれど、一平の4年間の努力と演劇への想いはその台本に籠もっている。読んだ天晴は心を動かされ、稽古場に戻ってくる。彼もまた素直じゃないので、雨が降って商売できないからと理由をつけて。
その台本は従来の喜劇ではなかった。「笑えん喜劇になんの意味があるねん」と言う千之助の求める喜劇とは違うもの。千之助のような特異な才能がなくてもできるもの。そんなものを一平はやろうとしている。

時代は変わっている。鶴亀興行の社長(中村雁治郎)は、それを感じていて、だから一平に新たな劇団を任せ、これまでトップを走ってきた万太郎一座にぶつけて競わせようとしている。興行師の勝負熱。でも、それを語る口もとにはまた米粒。父・西川きよしのように目を剥いて凝視する熊田役の西川忠志。その瞳は、社長の厳しい考えに危機感を覚えているのか、それとも米粒が気になっているのか。米粒に静かにズームしていくカメラ。温故知新、これが朝ドラの挑む新時代に向けたエンタメなのか。
時代は変わっている。千代も変わったが、みつえ(東野絢香)も変わっている。しとやかになって、花嫁修業のように料理をつくる。シズ(篠原涼子)からいいところに嫁げと言われていると言う。
みつえのこさえたタコときゅうりの酢の物がきっかけになったのか、千代は「たこ入道」の芸を千之助に見せて、引かれまくる。彼女のこれは、千之助の求める笑いでもなく、ましてや一平の求める喜劇でもないと思うが、彼女の奮闘努力が生きることも絶対ある。
あゝ 酢の物、食べたい。
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■杉咲花(竹井千代役)プロフィール・出演作品・ニュース
■成田凌(天海一平役)プロフィール・出演作品・ニュース
■星田英利(須賀廼家千之助役)プロフィール・出演作品・ニュース
■板尾創路(須賀廼家万太郎役)プロフィール・出演作品・ニュース
■西川忠志(熊田役)プロフィール・出演作品・ニュース
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■渋谷天笑(須賀廼家天晴役)プロフィール・出演作品・ニュース
■大川良太郎(漆原要二郎役)プロフィール・出演作品・ニュース
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■桂吉弥(黒衣役)ニュース
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番組情報
連続テレビ小説『おちょやん』<毎週月曜~土曜>
●総合 午前8時~8時15分
●BSプレミアム・BS4K 午前7時30分~7時45分
●総合 午後0時45分~1時0分(再放送)
※土曜は一週間の振り返り
<毎週月曜~金曜>
●BSプレミアム・BS4K 午後11時~11時15分(再放送)
<毎週土曜>
●BSプレミアム・BS4K 午前9時45分~11時(再放送)
※(月)~(金)を一挙放送
<毎週日曜>
●総合 午前11時~11時15分
●BS4K 午前8時45分~9時00分
※土曜の再放送
作:八津弘幸
演出:梛川善郎
音楽:サキタハヂメ
主演: 杉咲花
語り・黒衣: 桂 吉弥
主題歌:秦 基博「泣き笑いのエピソード」
木俣冬
取材、インタビュー、評論を中心に活動。ノベライズも手がける。主な著書『みんなの朝ドラ』『ケイゾク、SPEC、カイドク』『挑戦者たち トップアクターズルポルタージュ』、構成した本『蜷川幸雄 身体的物語論』『庵野秀明のフタリシバイ』、インタビュー担当した『斎藤工 写真集JORNEY』など。ヤフーニュース個人オーサー。
@kamitonami