
日本最大級のバーチャルアーティスト音楽フェスが開催
1月30日(土)と31日(日)の2日間、総勢60名のバーチャルアーティストによる音楽&トークライブ「VTuber Fes Japan 2021」が開催された。当初は2020年4月のオフラインイベント「ニコニコ超会議2020」内の企画の一つだったが、新型コロナウイルス感染症拡大による緊急事態宣言の発令を受けて延期。約9カ月の時を経て、単独のイベントとして行われた。【関連記事】にじさんじ戌亥とこが1stソロライブ 豪華ゲストとともに17曲を熱唱
しかも、声を出しての応援の禁止など新型コロナウイルス感染対策を徹底し、川口総合文化センターリリアでリアルイベントとして実施。もちろん、ニコニコ生放送によるリアルタイム配信も実施され、国内外の多くのファンが豪華出演者による夢のステージに熱狂した。
ここでは、2日間で全46曲(メドレーは1曲で計算)が披露された日本最大級のバーチャルアーティスト音楽フェスの魅力をダイジェストでレポートする。
VRアイドルえのぐは魂のこもったパフォーマンスで爪痕を残す
神様VTuber天神子兎音の『シャルル』で開幕した「DAY1」。2曲目、「しずりん」こと静凛と、緑仙による『乙女解剖』のデュエットが最初の驚きだった。人気VTuberグループにじさんじの出演者は、人気ユニットJK組の月ノ美兎、樋口楓、静凛と、緑仙。JK組は3人で、緑仙はソロで登場すると思い込んでいたため、レアで嬉しいサプライズ。VTuber界でも有数の美声で知られる「しずりん」と、中性的な歌声が魅力の緑仙によるハーモニーは相性ぴったり。基本的にはステージにスッと立ち、小さな手振りとともに歌う緑仙と、手足を元気よく動かしながら歌うしずりんという対比も楽しいステージだった。
出演者の多くは、YouTubeなどでの配信や動画投稿を中心に活動するVTuber(バーチャルYouTuber)だが、4組目に登場した「えのぐ」は、2018年のデビューから一環して、ライブや握手会などの"現場"を中心に活動してきたVRアイドル。膨大なライブ経験値に支えられた熱いパフォーマンスは、ファンだけでなくバーチャル界でも高く評価されている。昨年12月にエキレビ!で公開したインタビューでも「爪痕を残したい」と意気込んでいたこの大舞台では、勝負曲3曲のメドレーを披露。
1曲目のAメロ冒頭、鈴木あんずのソロパートで、日向奈央と夏目ハルがいきなり側転するパフォーマンスで観客の心をがっつりつかむと、約6分間、息をつく間もない激しいステージで会場をさらに熱くした。
ちなみに、二人はステージを往復するように2回、側転したのだが、配信ではカメラが1回目の側転を追いきれておらず、2回目だけが綺麗に映っている。スタッフも予想外のパフォーマンスだったのかもしれない。また、ムードメーカーでもある白藤環も、おそらくできないはずの側転に挑戦するそぶりを見せ、違う意味でファンを驚かせた。

ライブ中盤では、「きゃりーぱみゅぱみゅ」や「Perfume」などのプロデューサーとして知られる中田ヤスタカのバーチャルな姿「バーチャル中田ヤスタカ」も登場。DJパフォーマンスを披露しながら、ミライアカリ、猫宮ひなた、月ノ美兎、キズナアイら人気VTuberとも共演。会場を盛り上げた。
アニソン人気の高まりからアニソンとDJの親和性が高くなり、近年はDJと二次元キャラクターを関連付けた作品やプロジェクトも次々と登場。また、VTuberの楽曲限定のクラブイベントなども人気を集めているだけに、今後もバーチャル中田ヤスタカに続く存在は生まれていくのかもしれない。
二大VTuberグループがそれぞれのアンセムを披露
一部の演目では、ギター、ベース、ドラム、キーボードによる生バンドも楽しめた本公演。バーチャル空間から届くボーカルに、ミュージシャンの生演奏が融合することで、バーチャルアーティストたちの存在感がさらにリアルに感じられるステージとなっていた。「DAY1」の終盤、18曲目では、にじさんじの月ノ美兎、樋口楓、静凛、緑仙がバンドの生演奏とともに『Virtual to LIVE』を披露。にじさんじのファンなら何度聴いても感情が揺さぶられる名曲は、4人のミュージシャンの生み出す音の力も加わることで、涙腺破壊力をさらに強めていた。
バンドが退場した後の21曲目では、ホロライブのときのそら、白上フブキ、湊あくあがグループを象徴する曲の一つ『Shiny Smily Story』を熱唱。
にじさんじ&ホロライブという現在のVTuber界を牽引する人気グループのアンセム的な曲を一緒に聴けるのもこの大型フェスならではの魅力だろう。

『Shiny Smily Story』で「DAY1」のライブ本編は終了。この日のMCを務めた猫宮ひなたとミライアカリによるトークを挟んだアンコールでは、ときのそら、名取さな、猫宮ひなた、樋口楓、ミライアカリの5人で『惑星ループ』をカバー。この日限りのスペシャルユニットが約2時間半、全22曲のステージを締めくくった。
バーチャルゴリラら男性アーティストも魅力を発揮!
「DAY2」は、人気クリエイターユニット「HoneyWorks」のスペシャルステージで開幕。1曲目は、女性アイドルキャラクターの「mona」が代表曲『ファンサ』を披露。女性VTuberの歌ってみた動画の定番曲でもあり、VTuberファンにもよく知られている曲だが、筆者と同じくmonaが歌う『ファンサ』をライブで聴くのは初めてという人も多かったはず。可愛いさをキープしながら強く響く歌声は、さすが本家の貫禄だった。また、会場でもスクリーン下に表示されていたニコ生視聴者のコメントでは、サビやMCでコールの声が聴こえたことに対して、「会場、声出しNGでは?」と困惑していた人もいたが、会場で聴く限り、ルールは守られており、コールは音源のようだった。

2曲目は、HoneyWorksがプロデュースする2人組男性バーチャルアイドルユニット「LIP×LIP」のデビュー曲『ロメオ』。勇次郎と愛蔵の2人は、自己紹介の時点から身体の動きがキレキレ。
「DAY1」は出演者全員が女性あるいは性別不詳の存在だったが、「DAY2」は「LIP×LIP」の後も、複数の男性バーチャルアーティストが出演した。
その中でも、特に強烈なインパクトを残したのが、8曲目でオリジナル曲『ゴリヶ島』を歌ったバーチャルゴリラ。見た目は普通のゴリラだが、低音で色気のある美声と歌唱力が魅力。さらに、人気ゲーム『Apex Legends』の腕はVTuber界上位で、VTuber事務所「VEEMusic」の"バーチャル社長"も務めるなど多才なゴリラだ。
9曲目では、「VEEMusic」に所属するバーチャル忍者YouTuber乾伸一郎とのデュエットでEXILEの『Ti amo』をカバー。途中、原曲のMVを再現して恋人同士のようにイチャつく小芝居も披露し、大声で笑うこともできない会場のファンを困らせた。
バーチャルドリカムがドリカムの名曲のアレンジ版を披露
「DAY2」の12曲目と13曲目で、特設のバーチャルステージに登場したのは、「バーチャルドリカム」のMASADOとMIWASCO。「DREAMS COME TRUE」の吉田美和、中村正人が「あっちのドリカム」と呼ぶバーチャルミュージシャンで、ドリカムの代表曲をダンスミュージックアレンジした『うれしい!たのしい!大好き! - DOSCO prime Version -』と『未来予想図II - DOSCO prime Version -』を披露した。『うれしい!たのしい!大好き!』の大サビでは、ボーカルのMIWASCOが歌いながらステージ上空を飛行。ある意味、2日間を通じて最もバーチャルライブらしいパフォーマンスだった。

15曲目では、ホロライブ1期生の赤井はあと、アキ・ローゼンタール、白上フブキ、夏色まつり、夜空メルが、前日の『Shiny Smily Story』と同じくグループを代表する曲の一つ『夢見る空へ』を披露。1期生の5人がこの曲を歌うのは、2020年1月に開催されたホロライブ初の全体ライブ「hololive 1st fes.『ノンストップ・ストーリー』」以来のことで、現在も続くホロライブ大躍進の出発点ともいえる伝説のライブの感動が甦った。
HIMEHINAの完成度の高いステージがフェスでも披露
「DAY2」でも、数多くのスペシャルユニットが実現したが、最も意外な組み合わせが観られたのは、20曲目の『太陽系デスコ』。最初にステージに現れたピーナッツくんが超高音の曲を必死に歌っていると、「おーお、おー」と歌いながら、KEMZ LIZと電脳少女シロが左右に登場。ステージに3人が並んだ瞬間、思わず驚きの声を出しそうになったのは筆者だけではないはず。ルックスも歌声も動きも可愛すぎる美少女二人と、何もかもが個性的すぎるピーナッツくんのステージは、まさに、このフェスでしか観られないもの。大サビで歌詞を間違えて、涙するピーナッツくんも可愛かった。

「DAY2」のライブ本編を締めくくったのは、ゲーム実況などバラエティ系の活動でも人気だが、シンガーとしての評価も非常に高いHIMEHINA(田中ヒメ&鈴木ヒナ)。VTuberファンにはお馴染みの曲『命に嫌われている(バラードver.)』をカバーした後は、昨年11月に発表したオリジナル曲『水たまりロンド』をライブ初披露。現在も続くコロナ禍の世界に対する憂いと、未来に訪れるはずの晴れ上がった世界への渇望を歌った曲で、モーションタイポグラフィでスクリーンに歌詞を映し出していく演出も、詞に込められたメッセージの浸透力をさらに高めている。
MCを挟んだ最後の曲は、田中ヒメいわく「テンション爆上げな曲」の『ヒトガタRock』。動きでしか感情を表現できない観客は、さらに激しくペンライトを振っていた。

「DAY2」のMCを務めたピーナッツくんと甲賀流忍者ぽんぽこのトークを挟み、アンコールを務めたのは、燦鳥ノム、獅子神レオナ、電脳少女シロ、富士葵の4人。2007年に発表された懐かしのボカロ曲『メルト』で、2日にわたるバーチャルアーティストの祭典を締めくくった。
このレポートに記した以外にも、4曲メドレーでバーチャル界屈指のダンススキルを披露したまりなす(仮)、バイオリンの生演奏を伴奏に、それに負けない美しい歌声で魅了したYuNi、フェスでも独特の世界観が揺らぐことはなかった花譜ら、語りたくなるバーチャルアーティストのステージがまだまだ楽しめた「VTuber Fes Japan 2021」。
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セットリスト
■DAY11. シャルル(天神子兎音)
2. 乙女解剖(静凛、緑仙)
3. 矢文のシグナル(アメノセイ)
4. e☆Jump!→Dream!!〜it's 笑 time!〜スタートライン(えのぐ)
5. R U GAME?(KMNZ)
6. からくりピエロ(KMNZ LITA、水科葵)
7. ゴールデンスパイス(GEMS COMPANY)
8. ボーダーレイン2〜亜空の先へ〜CANDY HAPPY LOVE PARADE〜WONDERLAND2(まりなす(仮))
9. さなのおうた。(名取さな)
10. 気まぐれメルシィ(花京院ちえり、金剛いろは、もこ田めめめ)
11. エイリアンエイリアン(花京院ちえり、金剛いろは、天神子兎音、名取さな、もこ田めめめ)
12. White Cube (+Voice Version) [feat. 苺りなはむ]、ぴこぴこ東京 (feat. 眞白桃々)、NANIMONO (feat.米津玄師)、Love Don't Lie feat. ROSII、あいがたりない(feat. 中田ヤスタカ)、ぼくらのネットワーク(バーチャル中田ヤスタカ)
13. AI AI AI(Kizuna AI 、バーチャル中田ヤスタカ)
14. the MIRACLE(Kizuna AI)
15. Fly to NEW WORLD(ミライアカリ)
16. ILLUMINATE(ミライアカリ)
17. ロキ(月ノ美兎、樋口楓)
18. Virtual to LIVE(静凛、月ノ美兎、樋口楓、緑仙)
19. メランコリック(花京院ちえり、KMNZ LIZ)
20. 六兆年と一夜物語(白上フブキ、ときのそら、湊あくあ)
21. Shiny Smily Story(白上フブキ、ときのそら、湊あくあ)
22. 惑星ループ(ときのそら、名取さな、猫宮ひなた、樋口楓、ミライアカリ)
■DAY2
1. ファンサ(mona)
2. ロメオ(LIP×LIP)
3. ダダダダ天使(燦鳥ノム、夏色まつり、富士葵)
4. 46(電脳少女シロ)
5. 叩ケ 叩ケ 手ェ叩ケ(電脳少女シロ)
6. ヒバナ(獅子神レオナ)
7. ロスタイムメモリー (燦鳥ノム、富士葵)
8. ゴリヶ島(バーチャルゴリラ)
9. Ti amo(乾伸一郎、バーチャルゴリラ)
10. White Hole(WHITEHOLE)
11. うれしい!たのしい!大好き! - DOSCO prime Version -(ヴァーチャルドリカム MASADO MIWASCO)
12. 未来予想図II - DOSCO prime Version -(ヴァーチャルドリカム MASADO MIWASCO)
13. Write My Voice(YuNi)
14. ジレンマ(YuNi)
15. 夢見る空へ(赤井はあと、アキ・ローゼンタール、白上フブキ、夏色まつり、夜空メル)
16. 食虫植物( 理芽)
17. メルの黄昏(花譜)
18. まほう(花譜、理芽)
19. シンビジウム(富士葵)
20. 太陽系デスコ(KMNZ LIZ、電脳少女シロ、ピーナッツくん)
21. 命に嫌われている(バラードver.)(HIMEHINA)
22. 水たまりロンド(HIMEHINA)
23. ヒトガタRock(HIMEHINA)
24. メルト(燦鳥ノム、獅子神レオナ、電脳少女シロ、富士葵)
ネット視聴チケット概要
「VTuber Fes Japan 2021」公式サイトhttps://vtuberfesjapan.jp/
ネットチケット販売URL
https://dwango-ticket.jp/
『料金(税込)』
DAY1、DAY2 各4800円
2日間通し 9000円
※GoToイベントキャンペーン対象の割引後価格
『販売期間』
〜2021年2月28日(日)23:59まで
『視聴可能期間』
〜2021年3月1日(月)23:59まで
※視聴回数は制限なし
丸本大輔
フリーライター&編集者。瀬戸内海の因島出身、現在は東京在住。専門ジャンルは、アニメ、漫画などで、インタビューを中心に活動。「たまゆら」「終末のイゼッタ」「銀河英雄伝説DNT」ではオフィシャルライターを担当した。にじさんじ、ホロライブを中心にVTuber(バーチャルYouTuber)の取材実績も多数。
@maru_working