にじさんじ戌亥とこが1stソロライブ 豪華ゲストとともに17曲を熱唱
『Inui Toko 1st Solo Live "who i am"』で、約1年振り2度目となるリアルライブ出演を果たした戌亥とこ。「熱いから」とライブ仕様に袖を改造したメイド服は初披露だった

「にじさんじ」の戌亥とこ初のソロライブが開催

2020年12月10日(木)、人気バーチャルライバーグループ「にじさんじ」戌亥とこが初のソロライブ『Inui Toko 1st Solo Live "who i am"』をKT Zepp Yokohamaで開催。

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同じ日にデビューした同期ユニット「さんばか」の仲間であるリゼ・ヘルエスタアンジュ・カトリーナ、にじさんじの大先輩である樋口楓、所属事務所の枠を越えた友人の星街すいせい(ホロライブ)という豪華ゲストや生バンドとともに、プラチナチケットに当選した幸運な来場者と、ニコニコ生放送で見守る大勢の人々を熱狂させた。

ここでは、約2時間全17曲のステージの模様をレポートする。


最初のゲストは戌亥に"きっかけ"をくれた大先輩

開演5分前、リゼとアンジュの場内アナウンスが会場の空気を和ませ、暖める。そして、開演時間。ステージ奥のスクリーンに実写のイメージ映像が映った後、ライブのロゴへと切り替わると、バンド演奏がスタート。ステージにライトがついた瞬間、お馴染みのメイド服姿の戌亥が登場し、満面の笑顔で「横浜〜!」と叫び、客席へと手を振る。

記念すべき1stソロライブの最初の曲は、絢香の「Hello」。今年3月の3Dお披露目配信でも最初に歌った曲。新しい一歩を踏み出すような前向きな歌詞も含めて、この状況にぴったりの選曲だ。歌声からは緊張の色などはまったく感じず、優しくも安定して力強い歌声が2階の記者席までまっすぐに届く。

戌亥の歌声を生で聴くのは、ライブデビューを果たした2019年12月『Virtual to LIVE in 両国国技館 2019』以来だが、「歌声で時間を止めた」とレポートに記した1年前のステージの衝撃が一気に甦った。

2曲目は、ミュージカル的な華やかさも感じさせるMrs. GREEN APPLEの「Love me, Love you」。歌い終えた戌亥が「横浜のみなさーん」と叫ぶと、新型コロナウイルス感染予防対策で声出しNGの観客は、声援の代わりに大きな拍手で喜びの気持ちを伝える。

最初のMCでは、緊張しないまま開演を迎えたことを明かすと、「ここに立ったら、実際目の前にみんながいて。それが温かかったので、緊張する必要もなかったなって。
最後までお付き合いくださいね」とファンへ感謝を告げた。

続いて、この日最初のボカロ曲、西沢さんPの「ハンドメイドミライ」を歌うと、そのまま4曲目のイントロに。するとステージ左から、最初のゲスト樋口が登場。戌亥とのデュエットで、じん feat. IAの「夜咄ディセイブ」と、じん ft. メイリア from GARNiDELiAの「daze」を続けて披露した。

にじさんじを代表する二人の女性ボーカリストの初競演に、歓声は聞こえずとも、観客のテンションは明らかに高まっていく。また、最初の3曲との曲調の違いも要因だとは思うが、樋口に呼応する形で、戌亥のステージパフォーマンスもより大きくなったように感じた。

にじさんじ戌亥とこが1stソロライブ 豪華ゲストとともに17曲を熱唱
にじさんじで初めてライブハウスでのソロライブを開催し、その後のステージ経験も豊富な樋口。しかし、その隣に立つ戌亥も、先輩に引けを取らない存在感を放っていた

MCでは、樋口にゲストとして出演してほしいとお願いした理由を説明。戌亥が「にじさんじ」や「バーチャルライバー」という存在を知り、興味を持ったきっかけは、2019年1月に樋口がZepp Osaka Baysideで開催した『Kaede Higuchi 1st Live "KANA-DERO"』だったのだ。

自分が「バーチャルライバー戌亥とこ」誕生のきっかけであることを面と向かって話されて、照れたり恐縮したりする樋口。さっきまでの力強いパフォーマンスとはがらりと雰囲気が変わり、普段の配信でもあまり観られない貴重な姿だった。

「さんばか」が集まると初めてのライブでも大騒ぎ

退場した樋口と入れ替わるように登場したのは、2人目のゲスト、ホロライブのバーチャルアイドル星街すいせい

戌亥の「すいちゃんはー」という呼びかけに応えて「今日も可愛いー」と定番の挨拶を叫びながらステージに現れると、客席に向かって「客だー! 久しぶりに観たー」と大はしゃぎで手を振りファンサ。久々のリアルライブ出演の喜びを全身で表現していた。


歌とゲーム『あんさんぶるスターズ!!』が大好きという共通点をきっかけに親しくなった二人が初めて一緒に立ったステージで歌うのは、もちろん『あんさんぶるスターズ!!』の楽曲。『あんスタ』への愛をファンに伝えるため、「BREAKTHROUGH!」「翼モラトリアム」の2曲をダンス付きで披露した。

にじさんじ戌亥とこが1stソロライブ 豪華ゲストとともに17曲を熱唱
バーチャルアイドル事務所「ホロライブ」の中でも有数の歌唱力を誇る星街すいせい。ダンスでも"さすがアイドル"と思わせる動きを見せたが、戌亥も負けていなかった

アイドルである星街は、これまでのライブでもダンスを披露しているが、おそらく戌亥がここまで激しいダンスをファンの前で披露したのは初めてのこと。歌い終えた後はしばらく呼吸が整わず、MCを星街に任せる場面も。ダンスの練習は非常に大変だったけれど、この曲を選んだことを「一度も後悔はしなかった」と熱く語る戌亥。星街も嬉しそうにそれに同意。パフォーマンスはもちろん、MCからも二人の熱い「あんスタ愛」が伝わってきた。

星街が退場した後は、4曲ぶりで戌亥のソロ。「初めて聴いた時に惚れた」という阿部真央の「Such a beautiful day」を熱唱し、客席からもリズミカルな拍手が響いた。

曲が終わり、明かりの消えたステージを観ながら余韻に浸っていると、突然ステージが明るくなり、戌亥の左右にリゼアンジュが登場。観客の前で初めて「さんばか」が勢揃いした瞬間だ。

にじさんじ戌亥とこが1stソロライブ 豪華ゲストとともに17曲を熱唱
開演前の場内アナウンスでは噛みまくっていたリゼとアンジュだが、ライブでは戌亥とともに楽しいパフォーマンスを披露。MCも含めて、「さんばか」らしい楽しいステージとなった

三人は、「(」・ω・)」うー!(/・ω・)/にゃー!」の絵文字でも有名なアニメ『這いよれ! ニャル子さん』の主題歌「太陽曰く燃えよカオス」を熱唱。
ハイテンションにステージの上を動き周りながら可愛い振りも見せ、会場を大いに盛り上げた。

さらに、「さんばか」の2曲目は、アニメ『日常』の主題歌「ヒャダインのじょーじょーゆーじょー」。これまでのセトリとはまったく異なるテイストの曲を、楽しそうに歌う戌亥の姿。こんなにもハイテンションでコミカルな曲も似合うと感じるのも、リゼ&アンジュと一緒に「さんばか」としてステージに立っているからこそだろう。

本来は2020年3月に開催予定だった『にじさんじ JAPAN TOUR 2020 Shout in the Rainbow!東京公演』で、三人揃った姿をファンに初披露するはずだった「さんばか」。しかし、新型コロナウイルス感染拡大の影響で東京公演が中止となり、この日までお預けになっていたのだ。

三人の和気あいあいとしたMCを観ながら、そんな感慨にふけっていると、「さんばか」のオリジナルソングの話題に。たしかに、「東京公演」で披露される予定だったはずで、今回歌われるのだろうと思っていた「3倍!Sun Shine!カーニバル!」が披露されていない。すると、スクリーンに映像が映し出されて、『にじさんじ JAPAN TOUR 2020 Shout in the Rainbow!東京リベンジ公演』の開催が発表。「さんばか」のオリジナルソング初披露は、2月27日までお預けになったようだ。

リゼとアンジュが退場した後は、「落ち着いた曲」のコーナー。buzzGの「星の唄」、ナブナの「夜明けと蛍」、ヘブンズPの「それがあなたの幸せとしても」と、バラード系のボカロ曲を3曲続けて披露。
戌亥の伸びやかで美しい歌声の魅力を改めて堪能できるコーナーで、スクリーンの映像演出も含めて、不意に涙腺が刺激された。

にじさんじ戌亥とこが1stソロライブ 豪華ゲストとともに17曲を熱唱
まさかの東京リベンジ公演開催が決定。「さんばか」とともに東京公演に出演予定だった笹木咲とベルモンド・バンデラスからも喜びのビデオメッセージが届き、ファンに公開された

初のオリソン「地獄屋八丁荒らし」もライブ初披露

MCで残り2曲になったことを告げた後は、11月に発表したばかりの初オリジナルソング「地獄屋八丁荒らし」をライブ初披露。リズムも音程も変化の激しい難曲ながら、YouTubeで公開されているMVを越えるような熱量のこもったパフォーマンスを見せる戌亥の姿に、リアルライブの魅力を改めて実感した。

最後の曲を前に、このライブを会場や配信で観ている人たち、会場に来たかったけれど来られなかった人たちへの感謝の思いを述べる戌亥。「これで終わりにはしたくないから。1stって付いてるくらいですから、2ndもあるといいね!」と呼びかけると、客席からは大きな拍手が鳴り響く。

ライブ本編を締めくくったのは、Official髭男dismの「宿命」。美しさと力強さを兼ね備えた戌亥の歌声の魅力が存分に発揮され、ラストのロングトーンもまっすぐに伸びていく。ステージの明かりが消えると、客席からは当然のようにアンコールを求める大きな拍手が鳴り響いた。

「アンコール、おおきにー。もうちょっとだけ、お付き合いくださーい」

拍手に応え、笑顔でステージに戻って来た戌亥が歌うのは、カゲロウプロジェクトの「オツキミリサイタル」。疾走感ある曲に乗せられた戌亥の歌声は、わずか1曲で会場の雰囲気を最高潮にまで盛り返した。

MCでは、1階席の観客と記念撮影を行った戌亥。
「ほんまに最後」の曲を前に「今日は楽しかったですか?」と客席に問いかけると、この日、最大級の大きな拍手が響き、嬉しそうな笑顔を見せる。さらに、「次があったら、また観に来てくれますか?」「ニコ生をご覧の皆さんも、次があったら現地に来てくれますか?」という問いかけにも大きな拍手が。

ファンと次の約束をした後も「寂しいな」と名残惜しそうな戌亥が最後の曲に選んでいたのは、いきものがかりの「気まぐれロマンティック」。最後が明るく可愛いポップな曲という選択は、少し淋しい気持ちになりがちな初ライブの最後を楽しく終わりたいという気持ちの表れなのだろう。

にじさんじ戌亥とこが1stソロライブ 豪華ゲストとともに17曲を熱唱
アンコールでは、『オツキミリサイタル』『気まぐれロマンティック』と、明るく盛り上がれる曲を選んだ戌亥。最後の最後まで、歌声は美しい上に力強く、ピッチも安定していた

ステージにシャボン玉が舞う中、「また会おうねー」と大きく手を振る戌亥。最後は「せーの!」と声を合わせてジャンプ。多くのVTuberファン大注目の戌亥とこ1stソロライブは幕を閉じた。

観客を送り出す場内アナウンスも戌亥が担当。

「改めて、今日はご来場いただけまして、おおきにでしたー! 皆さん、帰り気を付けてね。帰ったら、手洗い、うがい、ちゃんとするんですよ。また会おうね。以上、戌亥とこでした!」

「バーチャルライバー戌亥とこ」を語る際には欠かせない仲間たちをゲストに招き、バリエーション豊富な楽曲を披露した『Inui Toko 1st Solo Live "who i am"』。
タイトルどおり、「これが"戌亥とこ"だ」とVTuber界や音楽シーンに表明するような1stソロライブだった。勝手に開催を確信している『Inui Toko 2nd Solo Live』では、どんな戌亥が観られるのか楽しみだ。いや、その前にまずは、約1年越しの東京公演のリベンジが待ち遠しい。

セットリスト

1. Hello
2. Love me, Love you
3. ハンドメイドミライ
4. 夜咄ディセイブ
5. daze
6. BREAKTHROUGH!
7. 翼モラトリアム
8. Such a beautiful day
9. 太陽曰く燃えよカオス
10. ヒャダインのじょーじょーゆーじょー
11. 星の唄
12. 夜明けと蛍
13. それがあなたの幸せとしても
14. 地獄屋八丁荒らし
15. 宿命
<アンコール>
16. オツキミリサイタル
17. 気まぐれロマンティック

■ライブ概要
公演名:Inui Toko 1st Solo Live "who i am"
日 程:2020年12月10日(木)
会 場:KT Zepp Yokohama

■配信ページ
https://live2.nicovideo.jp/watch/lv329203214

■チケット情報
6000ニコニコポイント(税込6000円)
販売期間は、2020年12月23日(水)23時59分まで。タイムシフト視聴期間は、2020年12月24日(木)23時59分まで。回数は無制限

Writer

丸本大輔


フリーライター&編集者。瀬戸内海の因島出身、現在は東京在住。専門ジャンルは、アニメ、漫画などで、インタビューを中心に活動。「たまゆら」「終末のイゼッタ」「銀河英雄伝説DNT」ではオフィシャルライターを担当した。にじさんじ、ホロライブを中心にVTuber(バーチャルYouTuber)の取材実績も多数。

関連サイト
@maru_working
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