大人から子供まで広い世代に愛されている『実況パワフルプロ野球』シリーズ。いろいろな作品が現在までリリースされたが、その中でも一番やり込んだ思い出の作品は誰しもあるのではないか。
筆者の場合、2003年7月17日に発売され、今年で20周年を迎えた『実況パワフルプロ野球10』(以下、パワプロ10)に熱中した。20年前の作品と聞くとずいぶん昔に感じられる。しかし、プレイした当時の記憶を今でも鮮明に思い出せるほど、画期的でありやり込まざるを得ないほど魅力的なゲームだった。

【関連写真】ファミコンと同時1983年に発売された懐かしのソフト

 今ではパワプロの定番となった“マイライフ”が初めて導入され、プロ野球のレジェンドOBと勝負できる“対決!伝説選手”といった新要素が楽しめるなど、パワプロシリーズの“分岐点”と言っても良いパワプロ10。その中でも特に心を奪われたサクセスを語っていきたい。

 今では人気キャラであり、お馴染みとなった友沢亮と橘みずきのデビュー作がパワプロ10である。特に友沢の存在感はすさまじく、打撃面だけでなく、ショートが本職でありながらも投手としての能力も高い。さらには、打撃フォームが当時の日本を代表するショート・松井稼頭央氏という、もはやサクセスで作りたくなるスペック。

 友沢が印象的だった理由はその能力だけではない。以前のパワプロシリーズのサクセスでは、“猪狩守とのライバル関係”が一つの軸となって進行する。パワプロ10でも猪狩守は主人公の壁として立ちはだかるが、猪狩に並ぶ強力を持つ友沢の登場は、「サクセスはここから次の時代に進む」という決意表明のように感じた。

 登場キャラだけではなく、選択できるチームも個性的。
中でも極亜久やんきーズが記録に残る。極亜久やんきーズは番堂長児や半田小鉄 といった打撃面での友情タッグが可能な選手が在籍しており、打撃特化の選手を育成しようと思った際に選ばれがち。しかし、巨漢でパワーが自慢の半田が突如ダイエットに目覚め、シュッとした体形になってしまい、筋力の友情タッグができなくなってしまう。その代わり、“スピードフォルム”になった半田とは守備の友情タッグが可能になる。とはいえ、思い描いていた育成プランは当然崩壊。半田の体型に振り回される、という運要素は今思い返しても面白い。

 さらに極亜久やんきーズを掘り下げると、極亜久やんきーズは他球団から選手を奪える。やや契約面が気になるこの“移籍”ではあるが、実際に当時プレーしていた強打者やエースだけでなく、猪狩や橘といった固定選手を奪えるなどやりたい放題。奪ってきた選手と一緒にプレーや練習が可能で、疑似的に憧れの選手と練習するという夢のような時間を過ごせる。

 また、シーズン途中でアメリカへの野球留学というイベントは画期的。MLBのようにシングルスター・ダブルスター・レギュラーリーグの3ランクがあり、活躍すればランクが上がる。1年目にレギュラーリーグに昇格した場合、各ステータスがAやBが当たり前の一流選手の中に、平均ステータスがEかFの雑魚選手が混じる、という異様な光景が見られる。
さらには、英語での解説も聞け、ボールカウントもアメリカ方式のBSOになっているなど芸が細かかった。

 他にも、三石琴乃さんの声を聞く度、作中に三石さんが声優を務めた人気スポーツ番組「パワスポ」のキャスターの希保田響子が今でも思い浮ぶ。現在の人生の基盤を作ってくれるほどの影響を与えたゲームであり、次々と語りたいことが溢れてくる、そんな素敵な作品だった。

【あわせて読む】マリオが悪役に!? 7月15日でファミコン40周年、同じ年に発売された懐かしの初期名作ソフト9本
編集部おすすめ