【桧山珠美 あれもこれも言わせて】
今、地上波は食べ物であふれている。新規オープンの店、行列のできる店、食べ放題の店……。
もっとも、あの頃のようなほっこりゆったりした番組が消えてしまったわけではない。BSに目を向ければ、そこにはまだ癒やしの空間が残っていて、同じグルメ番組でもまったく違う様相だ。
例えば「サンド伊達のコロッケあがってます」(BS-TBS)。コロッケをこよなく愛するサンドウィッチマン伊達みきおが同じ事務所の後輩芸人「わらふぢなるお」の口笛なるお、そしてコロッケ仲間(ゲスト)とともに商店街を散策しながら精肉店や総菜店のコロッケをひたすら味わう。
近頃は咀嚼音を聞かせるASMR動画が人気らしいが、この番組では伊達がコロッケにかぶりつく「サクッ」という小気味よい音がそのまま極上のBGMになる。
コロッケだけでそう長くは続くまいと思っていたが、気がつくと2年以上。飽きるどころか見るたびに癒やされる。それもひとえに伊達の人柄故だろう。全身からにじみ出る「食べることが本当に好き」という飾らない幸福感が画面越しにも伝わってくる。
■食べたい衝動に駆られるドランク塚地の「立ち食いそば」
もう1本。
「飯尾和樹のずん喫茶」(BSテレ東)も。ずんの飯尾が昭和レトロな喫茶店を巡る。芸能界に番組ファンも多く、昨年初のゴールデンタイムでは明石家さんまがゲストに登場。さんまがBSテレ東に登場したのは初めてということで話題になるほどに。
飯尾といえば、今期は「田鎖ブラザーズ」と朝ドラ「風、薫る」に出演中。俳優としてもひっぱりだこ。その辺のおじさんよりも普通のおじさんっぽいところが貴重な存在なのかもしれない。
ケンドーコバヤシが地方のビジネスホテルに泊まり、その周辺で一人飲みを楽しむ「ケンコバのほろ酔いビジホ泊 全国版」(BS朝日)も貴重な癒やし系だ。
どれもやっていることは「おじさんが一人で自分の好きなものを食べたり飲んだりしている」だけ。派手な仕掛けも大がかりな企画もない。なのに見ていると肩の力が抜ける。そのほっこり感は地上波から失われてしまったものだ。ただただ穏やかな時間が静かに流れているのがいい。
(桧山珠美/コラムニスト)

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