瀧先生に算数嫌い化を回避する方法を、自身の子育て経験を踏まえて語っていただいた。
方法2 なぜ一緒に解くと、わが子が算数好きに変わるのか?
■脳科学の「模倣の力」をフル活用して楽しませる
子どもの成績を伸ばす方法を考えるなら、最も大事なこと、子育ての土台になる「愛着形成」を大事にしてほしいと思います。
親子の心理的な絆のことですね。愛情を言葉で伝えたり、一緒に外で遊んだり、親子の時間を通して愛着形成をしっかり行ってください。そこで育まれた自信が、難しい勉強にもあきらめずに取り組む姿勢につながります。
そのうえで、脳科学的に、子どもの成績アップを親がサポートしようと思うと、一定量の「外発的動機づけ」はあったほうがいいといわれます。褒めるのはもちろん、やる気を出すきっかけに、算数を頑張ったご褒美にお小遣いを与えるのもいいと思います。「角度を求めるための公式を覚える」など問題を解くために必要な暗記をさせたり、理解できていない単元を復習させたりするとき、子どものやる気を短期的に引き出すエンジンとして、外発的動機づけは意外と使えます。
その結果、公式を覚えて解けるようになり、点数が取れるようになっていくと、子どもは「算数の面白さ」に目覚めて、「算数が面白いからやる」という内面から湧き上がる欲求――内発的動機づけに自然と移っていきます。親御さんが、外発的動機づけで最初のモチベーションをつくる役割を担うことで、子どもが内発的動機を育てていく――このような流れで子どもの興味を引き出せれば理想的ですね。
もう一つ、わが子を算数好きに変える方法についてお話しします。最強なのは、親が問題を子どもに見せて、楽しそうに親も一緒に解くこと。脳科学の「模倣の力」を活用するのです。親の楽しそうな姿を見て、子どもは共感したり、算数の解き方を学んだりします。

親子で算数の問題を解く際のポイントは次の三つです。
・よーいどん!で一緒に解く。

・頑張っている過程を褒める。

・ミスを防ぐ仕組みを教える。
最初は子どもにとってちょっと簡単な問題から始めてください。子どもは簡単すぎても難しすぎても、勉強が身につかないことが脳科学の研究からわかっています。だんだんと「ちょっとだけ難しい」問題に挑戦していくのが、効果的な学習につながります。
逆効果になるのは、「なんで解けないの?」と叱ること。問題を解けないこと自体を厳しく指摘すると、「算数を解く=親が怒る」というネガティブな学習がされて、算数嫌いな子になってしまうおそれがあります。
では、同じミスを繰り返す、問題を解くのに必要な引くべき線を何度言っても引かないときは、何と言えばいいでしょうか。「自分で自分の足を引っ張ってしまっていてもったいないよ」と穏やかに諭せば、子どももわかってくれるでしょう。
※本稿は、『プレジデントFamily2026春号』の一部を再編集したものです。


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瀧 靖之(たき・やすゆき)

東北大学加齢医学研究所教授、医師

1970年生まれ。東北大学大学院医学系研究科博士課程修了。医学博士。東北大学加齢医学研究所臨床加齢医学研究分野教授。東北大学スマート・エイジング学際重点研究センターセンター長。早生まれの息子の父。脳科学者としてテレビ・ラジオ出演など多数。著書に『16万人の脳画像を見てきた脳医学者が教える 「賢い子」に育てる究極のコツ』(文響社刊)など。

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(東北大学加齢医学研究所教授、医師 瀧 靖之 構成=本誌編集部)
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