■「寝たきり」の要因1位は認知症、では2位は…
寝たきりになってしまう原因をご存知でしょうか。
厚生労働省の「国民生活基礎調査」(2016)によれば、次のようになっています。
1位(18.0%)……認知症
2位(16.6%)……脳血管障害
3位(13.3%)……高齢による衰弱
4位(12.1%)……骨折転倒
5位(10.2%)……関節疾患
これらの中で認知症は有名ですし、高齢による衰弱も近年「フレイル」と呼ばれるようになり、知名度が上がってきています。
しかし2位の脳血管障害は、ややわかりにくいこともあってか、認知度が今一つ高くないようです。
脳血管障害は日本人の死因の第4位でもあり、脳梗塞の死亡者は年間6万人を超えていますから、予防のためにも知っておきたいところ。
脳血管障害の危険因子は、高血圧や動脈硬化、喫煙です。加えて運動や睡眠の不足、ストレスなども原因となります。
このうち動脈硬化は高血糖が原因になることも多いので、過剰な糖質も原因と言えるでしょう。
生活習慣全般にまたがってきますので、これだけやればいい、というお手軽な対策はありません。少しずつよい生活習慣を取り入れて、寝たきりを予防してほしいと思います。
■血糖値が高いと認知症になりやすい
認知症になる方が増えています。
この認知症のうち、約7割弱を占めるのがアルツハイマー型認知症、そして約2割が脳血管性認知症ですが、実はいずれも糖尿病との関わりが強いのです。
アルツハイマー型認知症では、脳細胞全体が縮小してきます。一説にはアミロイドβというたんぱく質がたまることが原因とも言われていますが、これを分解するのが「インスリン分解酵素」。
つまり血糖値が高いとインスリンの分解で手いっぱいになってしまい、認知症が進んでしまうのです。
また脳血管性認知症は、血流が滞って神経細胞に行き届かなくなることによって起こります。その原因は、元をたどれば高血糖による血管へのダメージで、そこからプラーク(不要な隆起)や血栓になることも多いのです。
いかがでしょうか。約9割もの認知症は、糖尿病に関係しています。必要以上の糖に取り囲まれている昨今、ご自分とご家族の身体を守ってほしいと思います。
■認知症は40代から始まっている
健康寿命を延ばす上で、できるだけ避けたいのが認知症です。その認知症の中でも、一番多いとされているのがアルツハイマー型認知症。
実は認知症の原因となるたんぱく質を分解してくれる酵素は、糖尿病に関係が深いインスリンの分解酵素と、同じものなのです。そのため、糖尿病になってインスリンの分泌が過剰になると、酵素がその分解で精一杯に。
そして認知症の原因となるたんぱく質、アミロイドβの分解は間に合わなくなります。こうしたしくみにより、認知症が進んでしまうという説が有力です。
またアミロイドβは、認知症の症状が出る20年以上前から脳に蓄積するとも言われています。もし60代で症状が出たとしても、実は40代ですでに始まっていた可能性が高いのです。
認知症も糖尿病も、少しずつ時間をかけて進行するもの。予防するのに早過ぎるということはありません。まだ若いと安心せず、ご長寿を意識した生活習慣を始めましょう。
■血管が詰まると脳が圧迫される
アルツハイマー型の次に多い認知症が、血管性認知症です。
血管が詰まったり流れが悪くなると、脳が圧迫されたり、神経細胞にダメージが行きます。
糖尿病は、このタイプの認知症とも深い関係があります。高血糖の状態が続くと、血液中のブドウ糖が血管にダメージを与えるためです。
動脈硬化により脳の血管が詰まりやすくなりますから、脳の細胞に十分な血液が送られず、機能が下がってしまうことになります。
なおアルツハイマー型と血管性認知症は、二大認知症と呼ばれています。
日頃から血糖値を意識した食事や生活習慣を心がけ、認知症になるのを予防したいものです。
■「かくれ糖尿病」に要注意
健康診断では血糖値の検査がありますが、それでは見逃してしまう「かくれ糖尿病」をご存知でしょうか。
かくれ糖尿病とは、空腹時の血糖値や1~2カ月の平均値は正常で、「食後2時間の血糖値だけが高い」状態をいいます。
一般的な健診では「空腹時血糖値」「HbA1c」「尿糖検査」の3つなのですが、これには引っかかってこないので、見逃しやすいのです。
「他が正常なら大丈夫なのでは?」と思った方もいるかもしれませんが、さにあらず。実はこの段階からすでに、血管へのダメージは進行しています。
統計学的な調査である「久山町研究」によれば、食後2時間だけ血糖値が高い人でも、冠動脈疾患の発生率が増え、同時に認知症の発症率も上がっていたのです。
「かくれ糖尿病」を見つけるためには、後述する「食後2時間血糖値(75gOGTT)」の検査が有効です。
あるいは保険適用外にはなりますが、センサーを皮膚に貼って自分で測れる「フリースタイルリブレ」というものもあります。気になる方は試してみてはいかがでしょうか。
■「グルコーススパイク」とは
食後に血糖値が急に上昇し、その後急降下すること。これを「グルコーススパイク」といいます。グラフで見るとトゲ(スパイク)のように見えるのが名前の由来です。
さてこのグルコーススパイク、身体へのダメージがあるにもかかわらず、検査でも見つけにくいので注意が必要です。
血管の内皮細胞がダメージを受けたり、頸動脈が狭くなってしまうことにより、動脈硬化が進むことがわかっています。しかし一般的な健康診断の検査では、空腹時と1~2カ月の平均的な血糖値しか測らないことから、食後の乱高下は見逃してしまいやすいのです。
グルコーススパイクが起きる生活習慣は、主に2つです。
1つ目は、精製された糖質が多い食事。
私たちの身体は白米や全粒粉ではないパンやパスタなど、精製された穀物にはうまく対応できないにもかかわらず、現代の食卓にはそうしたものが溢れています。
そして、こうしたものを早食いしたり、多く食べることは、さらに血糖値を急上昇させる原因になります。
2つ目は、肥満や運動不足によって、糖を身体に取り込むインスリンの効きが悪くなることも原因です。取り込めなければ、血液中に糖が溢れてしまいます。
定期的な運動によって脂肪を燃焼させることは、グルコーススパイクを防ぐ働きがあるのです。
■「食後2時間血糖値」の検査を受けよう
長寿にも病気にも関係が深いインスリン。そのコンディションを知ることができるのが、各種の血糖値検査です。
健康診断でも一般的な「空腹時血糖値」の検査では、文字通り空腹な時の血糖値しかわかりません。食後に血糖値が乱高下していても、いわゆる「かくれ糖尿病」になっていてもわからないのです。
そこでこの「食後2時間血糖値」の検査になります。
この検査は別名「75g経口ブドウ糖負荷試験(75gOGTT)」といって、ブドウ糖75gを溶かした水を飲んで、30分後や一時間後などの一定の時間で血糖値を測ります。
なおこの検査での診断基準は、次の通りです。
・正常 140mg/dL未満
・境界型 140~199mg/dL
・糖尿病型 200mg/dL以上
この検査は食後の血糖値の乱高下もわかりますので、いわゆる「血糖値スパイク」が起きていないかどうかもチェックできます。
「かくれ糖尿病」になっていないか気になる方は、ぜひ受けてみてください。
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玉谷 実智夫(たまたに・みちお)
医師・玉谷クリニック院長
1960年、兵庫県生まれ。京都大学薬学部、大阪大学医学部卒業。大阪大学医学部附属病院、東大阪市立病院(現 東大阪市立総合病院)で研修した後、最先端医療を学ぶためアメリカ国立衛生研究所(NIH)に留学。帰国後、大阪大学で循環器・糖尿病・脳梗塞・老年病の研究に従事し、博士号を取得。最高権威の「ネイチャー メディシン」はじめ、医療ジャーナルに論文が数々掲載される。2008年に玉谷クリニックを開院。「東淀川区のかかりつけ医」として、高血圧・糖尿病・脂質異常症などで苦しむ10万人以上の患者を診断してきた。健康セミナーやテレビ、YouTubeなどでの発信も行うなど、地域の健康増進に努めている。著書に、『“世界一わかりやすい”最新糖尿病対策』(時事通信社、2021年)、『血糖値がどんどん下がる1分早歩き』(自由国民社、2022年)、『糖尿病の名医が「血糖値」よりも大切にしていること』(サンマーク出版、2022年)などがある。
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(医師・玉谷クリニック院長 玉谷 実智夫)

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