「スタジアムのキャパシティ約2万5000を上回る4万の大台に、アプリのダウンロード数はまもなく届こうとしている」
この数字が意味するものは何か。SNSで手軽に情報が手に入る時代に、なぜクラブは自社プラットフォーム強化を目指すのか。その背景には、2026年に迎えるクラブ30周年、さらには将来的な「等々力新スタジアム」を見据えたロードマップがあった。
今回は、川崎フロンターレのアプリ運営のキーマン、小林幸太氏と森澤諒大氏を直撃。ビジネス的な成果から、現場ならではの泥臭い課題感まで、クラブの未来を握るデジタル戦略の全貌を語ってもらった。
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“フロンターレ全部入り”のガイドブックをつくる
まずはSNSなどに点在していた情報を集約し、ライト層からコア層まで誰もが迷わず楽しめる「入り口」を整えること。それがアプリの第一歩だった。
森澤:目指しているのは、いわば「フロンターレのガイドブック」です。これさえダウンロードしておけば、試合情報も、選手の裏側も、チケットもグッズも全部分かる状態。これまでは公式サイト、YouTube、X(旧Twitter)と情報が点在していましたが、それらを集約するハブとしての地位を確立したいと考えています。
小林:意識しているのは、まだスタジアムに来たことがないライト層の方々です。
グッズ購入の約25%がアプリ経由というインパクト
アプリは単なるメディアではない。プッシュ通知などを活用し、ファンの熱量をダイレクトに「購買行動」へとつなげる強力な武器になりつつある。
小林:手応えを感じている数字があります。ECサイトの数字を見てみると、グッズ購入の約25%がアプリ経由だったんです。これはなかなかの数字だなと。アプリを開いて、そのままノンストップでグッズ購入までいけるのは大きいです。今後は、ファンの皆さんの日常行動の中に、いかに自然にアプリを使う習慣を組み込んでもらえるかがカギになります。
森澤:サポーターの皆さんはXをはじめSNSでの情報収集に慣れていますし、クラブもいちはやくSNSで情報発信を行うことに特化してきました。ですが、SNSのタイムラインは流れていってしまう。
「広報の一枚」がつなぐ、日常のコミュニケーション
ビジネス的な数字だけでなく、ファンとの情緒的なつながりも当然アプリの魅力といえる。選手とサポーターの距離を縮める、フロンターレらしいコンテンツづくりとは。
小林:こだわっている機能の一つに「広報の一枚」があります。毎日(練習場の)麻生グラウンドに行けないファン・サポーターのために、選手が食べているご飯や移動着など、日常の姿を毎日更新しています。「毎日アプリを開くワクワク感」を大切にしたいんです。
森澤:オフラインの現場でも反響を感じますよ。「安藤(駿介=2025シーズン限りで現役引退)選手のラジオブログ聴きました!」「通勤中に聞いています」と、ファンサービスの時に声をかけていただくことが増えました。デジタルの施策が、リアルのコミュニケーションのきっかけになっているのはうれしいですね。
小林:ただ、もっと改善の余地はあります。例えば選手が食べている食事を紹介するなら、そこにスポンサーさんの食品情報を連動させたり、レシピを紹介したり。
2030年、アプリは「街のパスポート」になる
見据えるのは未来だ。2029年度末には等々力が球技専用スタジアムに生まれ変わるなど緑地全体の再整備が完了する予定。このアプリはスタジアムの中だけでなく、川崎という街全体を楽しむためのインフラへ進化しようとしている。
小林:ゆくゆくは、アプリを地域活性化のツールにしたいんです。現在も「フロンターレシティ」として位置情報を出していますが、今後は地元の商店街やサポートショップへの送客にも活用したい。アプリ内にクーポンを出して、試合の帰りに街のお店に寄ってもらう。そんな相互送客のハブになれればと考えています。
森澤:究極の理想は、スタジアムの入場ゲートにアプリの画面をかざして入るのが当たり前の光景になることですね。何をするにもアプリが中心にある状態。2030年頃の新スタジアム本格稼働に向けて、そんな世界観を作っていきたいです。
大きな構想を掲げつつも、二人は「まだ始まったばかり」と口を揃える。Jリーグというビジネスフィールドの状況を、彼らは冷静に見つめている。
小林:正直なところ、社内での評価も含めて、まだまだこれからです。「アプリって本当に効果あるの?」という空気がないわけではありません(笑)だからこそ、しっかり数字で貢献度を示して、クラブ全体の共通ツールにしていかなきゃいけない。
森澤:発展途上だからこそどんどん良いものにしていきたいし、ファン・サポーターの皆さんの「もっとこうしてほしい」というリアルな声が必要です。アプリ内にはご意見ボックスも設置しているので、ぜひ忌憚のない意見を寄せていただき、一緒にアプリを育てていきたいですね。
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「Jリーグは30年経ちましたが、ビジネスとしては他業界に比べてまだまだ導入期。だからこそ、ここには大きな可能性があります」
インタビューの終盤、小林氏はそう口にした。 入場者数の記録を更新したり、ピッチ上の熱戦が繰り広げられる裏側で、クラブ経営というビジネスの現場もまた、過渡期にある。クラブの節目となるタイミングに向け、川崎フロンターレはアプリというデジタル領域から、クラブと街、そしてファン・サポーターとの新たな関係性を築こうとしている。

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