◆JERAセ・リーグ 巨人4×―2広島=延長12回=(13日・福井)

 これぞ千両役者だ!! 巨人は1点を追う延長12回、坂本勇人内野手(37)が逆転3ランを放って広島に2戦連続のサヨナラ勝ち。今季最長4時間43分の死闘に終止符を打つ一発は、史上48人目のプロ通算300号にもなった。

巨人の右打者での300本塁打達成は、444本の長嶋茂雄、382本の原辰徳に次いで3人目と偉大なOBに肩を並べた。投げては先発・則本から計8投手がつないで、2年目の宮原駿介投手(23)がプロ初勝利をマーク。福井のG党に忘れられない1勝を届けた。

 祈るような思いだった。夜空に描いたアーチの終着点を、坂本はバットを持ったままサイドステップして見つめた。「感触はすごいよかったので、なんとか行ってほしいなと。よかったです」。白球が左翼席に飛び込むと、福井のG党の大歓声が背番号6に注がれた。土壇場で試合をひっくり返す逆転サヨナラ3ラン。ナインに本塁でもみくちゃにされても、笑顔が絶えない。この上ない形で、史上48人目の通算300号の節目に到達した。

 1点を追う延長12回1死一、二塁。

広島・遠藤の初球チェンジアップを捉えた。「個人のことより、チームの勝利に貢献できたことが本当に嬉しい。サヨナラという形で決められたこともすごく良かった」とほっと息をついた。直前で安打を放ち、好機を演出してくれた岸田とダルベックに「きっしゃん(岸田)とボビーがいい形で回してくれた」と感謝も忘れなかった。

 雪辱に燃えていた。1―1の同点の10回2死満塁で代打として送られたが、空振り三振に終わった。「最初に代打で出た時からすごい大歓声を送ってくれていたので、何とか期待に応えたいなと思って」。巡ってきた“リベンジ”の機会で一発回答。「最高の形で福井の皆さんの前で見せられてよかった」とほっと一息ついた。サヨナラ本塁打は通算7本目。巨人では王の8本に次いで、長嶋、阿部、亀井と並び2位。名だたる打者に名前を連ねた。

 20年目の今季、自主トレや春季キャンプでは10代、20代で取り組んでいた「動から動」を意識するフォームに挑戦。試合前にしていたウェートトレーニングを、試合に万全な状態で臨むために試合後にするようになるなど悩みながら調整を続けてきた。「本当にね、もう300号打てないんじゃないかとかそんなことも考えることもありましたけど。まだこうやってファンの皆さんの期待に応えられるんだなと思えたので。本当にいい一本になりました。一生忘れないと思います」。試合で歓声が自分を信じさせてくれた。

 もちろん、後輩への貢献度も計り知れない。送球を課題にかかえる石塚と共に自主トレをすることになった際には、自身が若い頃に守備を教わった名手・宮本慎也氏に相談。体を縦に使って山なりに投げるキャッチボールを教えてもらい、伝授した。石塚は「僕が自主トレでお願いした時からすごい考えてくれていて。惜しみなく教えてくれるので、感謝しかないです」。

後輩からのヒーローでもあり続けている。

 試合終了は午後10時43分だった。「こんなに遅い時間までファンの方が残ってくれて、本当に力になりました。子どももたくさんいるので早く帰って寝てください」と優しく呼びかけた。節目には到達したが、これで気を休めるつもりはさらさらない。「今日の1本でまだまだやれるんだっていうのは思ってるので」。この強烈な自尊心こそ、坂本勇人がファンに神とたたえられるゆえんだ。(臼井 恭香)

 ◆宮本和知Point さすがの坂本、千両役者。しびれたね。10回に代打に出る時も早めにネクストバッターズサークルに入って心を整えていたし、12回の打席の前もチャートを見て相手投手の分析をしていた。しっかりと準備をした成果。若手も見習うところだね。

前日(12日)は佐々木、この日は坂本と若手とベテランが競うようにヒーローになって、岐阜、福井で2日連続のサヨナラ勝ち。これでチームが勢いに乗らなきゃウソだし、思い起こすのは1996年7月9日の札幌での9連続安打での勝利。あの時の相手も広島だし、地方から始まる「メークドラマ」は、大きな浮上のきっかけになると思うね。(スポーツ報知評論家・宮本 和知)

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