2026年1-3月期、2-4月期決算発表が4月13日の週から始まる。今回の大きなテーマは、生成AI向け設備投資と株主還元になろう。
毎週月曜日午後掲載
本レポートに掲載した銘柄: アップル(AAPL、NASDAQ) 、 マイクロソフト(MSFT、NASDAQ) 、 アマゾン・ドット・コム(AMZN、NASADQ) 、アルファベット( GOOGL 、 GOOG 、NASDAQ)、 メタ・プラットフォームズ(META、NASDAQ) 、 エヌビディア(NVDA、NASDAQ) 、 ブロードコム(AVGO、NASDAQ) 、 インテル(INTC、NASDAQ) 、 アドバンテスト(6857、東証プライム) 、 ディスコ(6146、東証プライム) 、 東京エレクトロン(8035、東証プライム) 、 レーザーテック(6920、東証プライム) 、 ASMLホールディング(ASML、アムステルダム、NASDAQ)
1.2026年1-3月期、2-4月期決算の決算発表スケジュール
2026年4月13日の週のASMLホールディング、TSMCの2026年1-3月期決算発表を皮切りに、2026年1-3月期、2-4月期決算発表が始まります。
今回は、2026年1-3月期、2-4月期決算の注目ポイントを米国、日本のハイテクセクター中心に見ていきます。
まず、現在分かっている限りの決算発表スケジュールは以下の通りです。
表1 2026年1-3月期、2026年2-4月期決算発表スケジュール
2.GAFAM5社の決算の注目ポイント、生成AI向け設備投資と株主還元のバランスはどうなる?
生成AIブームが続いていますが、この実態を把握するには、まずGAFAM5社のうち、クラウドサービス大手3社、アマゾン・ドット・コム、マイクロソフト、アルファベットのクラウドサービス事業の動向と設備投資、メタ・プラットフォームズの業績と設備投資を確認する必要があります。
クラウドサービス大手3社の設備投資の多くは生成AI向けとなっており、オープンAI、アンソロピックなどの生成AI開発会社向けのAI半導体その他の計算用ハードウェア、ソフトウェアが大きな割合を占めていると思われます。2025年10-12月期決算発表時に各社が示した2026年の設備投資予想によれば、2026年も50~60%増と大幅に増えることになりますが、四半期ベースでの伸び方と各社の2026年予想に変更がないか、確認したいと思います。
グラフ1~5は、各社の営業キャッシュフロー、設備投資、全社営業利益(またはクラウドサービス営業利益、クラウドサービス以外の営業利益)を比較したものです。
マイクロソフトは巨額の設備投資を続けていますが、設備投資の主なターゲットであるインテリジェントクラウドの営業利益は大きく増えていません。減価償却費と人件費が増えているためと思われますが、いつ儲かるようになるのか、いつ株主還元があるのか、今回の決算の焦点です。しかし、もう一つの焦点はインテリジェントクラウド以外の事業です。アンソロピックの「クロード」の影響はないのか、会社側の説明を聞く必要があります。
メタ、アマゾンは営業キャッシュフローの伸びに見合った設備投資を行っていますが、これがいつまで続くのか。一方でアルファベットは大きな設備投資を始めていますが、営業キャッシュフローの規模が大きいので、まだ余裕があると言えます。ただし、今後設備投資が急増すれば、他社と同じ問題、株主還元が減少した状態がアルファベットも長く続くのか、という問題がでてくると思われます。
また、これら4社にアップルを加えたGAFAM5社と生成AIブームの中核企業であるエヌビディアの株主還元、特に自社株買いの実績を見たものがグラフ6です。各社の営業キャッシュフローと設備投資の差額が自社株買い中心に株主還元の余裕枠になります。これまでのように、アップルを除いて営業キャッシュフローの多くが設備投資に回ってしまうと、株主還元は少なくなります。2025年10-12月期まではアップルを除いて株主還元が縮小しました。
これは業績とともに株主、投資家から見た各社の投資価値にもかかわる問題です。グラフ7~12はGAFAM5社とエヌビディアのチャートですが、グラフ6とを比較すると、GAFAM5社とエヌビディアの株主の全てが満足しているわけではないと思われます。特に最近2年間のマイクロソフト、メタの株価は振るいませんでした。エヌビディアも過去1年間の株価は概ね横ばいでした。株価のパフォーマンスと株主還元の関係も2026年1-3月期決算の大きな焦点になると思われます。
注目決算の発表日
マイクロソフト、アルファベット、メタ・プラットフォームズ:2026年4月29日(水)
アマゾン・ドット・コム、アップル:2026年4月30日(木)
グラフ1 マイクロソフトの営業キャッシュフロー、設備投資、営業利益
グラフ2 アマゾン・ドット・コムの営業キャッシュフロー、設備投資、営業利益
グラフ3 アルファベットの営業キャッシュフロー、設備投資、営業利益
グラフ4 メタ・プラットフォームズの営業キャッシュフロー、設備投資、営業利益
グラフ5 アップルの営業キャッシュフロー、設備投資、営業利益
グラフ6 GAFAM5社とエヌビディアの株主還元
グラフ7 マイクロソフトのチャート
グラフ8 アマゾン・ドット・コムのチャート
グラフ9 アルファベットのチャート
グラフ10 メタ・プラットフォームズのチャート
グラフ11 アップルのチャート
グラフ12 エヌビディアのチャート
3.クロードの影響は?
アンソロピックの「Claude(クロード)」はシステム開発の現場で広く使われている生成AIです。代表的な製品である「Claude Code(クロード コード)」は、AI を活用したコーディングアシスタントで、機能の構築、バグの修正、開発タスクの自動化を支援するものであり、幅広く使われています(コーディングとは、プログラミング言語(HTML/CSS, JavaScript等)を用いて、コンピュータが理解できる形式(ソースコード)で指示を記述する作業)。
このクロードの最新版「Claude Cowork(クロード コワーク)」が2026年1月に発表されたときは、マイクロソフトを含むSaaS企業(Software as a Service、ソフトウェアをインターネット経由で配信する)の株価が大幅安となりました。クロードによって効率的に安いコストで各種のソフトウェアが開発できてしまうため、既存のSaaS企業のビジネスに悪影響を与えてしまうことが懸念されました。これが実際にどうなのか、これが2026年1-3月期、2-4月期決算での重要なポイントです。
そして今回は「Claude Cowork(クロード コワーク)」をはるかに上回る性能を持つ「Claude Mythos(クロード ミトス)」が4月7日に公開されましたが、あまりにも危険すぎるという理由で、アルファベット、マイクロソフト、アマゾンなど、約50の企業や組織に限定して提供されています。そして今回もパランティア・テクノロジーズなどのSaaS企業の株価が下落しました。
クロード ミトスを使うと、従来は見つけるのに時間がかかったソフトウェアの脆弱性がごく短時間に大量に見つかります。さらに、その脆弱性を攻撃するプログラムを自律的に作成する能力があります。システム開発の手間とコストが大幅に削減されることになりますが、危険性が高い生成AIでもあります。
クロード ミトスはクロード コワークを上回る性能を持つため、SaaS各社にとっては競争相手が増加し、システム価格が低下する可能性があります。ただし、SaaS企業にも様々な分野があります。パランティア・テクノロジーズのような軍事用で特色のある企業もクロードの脅威にさらされるのか、決算説明会での会社側の説明に注目したいと思います。
クロードを使ってソフト開発や運用を行うと、トークンが大量に発生し、クロードの契約料金内での利用限度に直ぐに達してしまうと言われています。生成AIの「トークン」とは、AIがテキストを処理・生成する際の最小単位(パーツ)です。このトークンが多いほどAI半導体を数多く使う必要があります。足元でのAI半導体の需要増加、クラウドサービスの設備投資増加は、クロードの利用が増加していることも要因と思われます。
ただしさらに進んで、クロードによってこれまでよりも効率的に生成AIの開発、運用が行えるようになると、AI半導体の需要の伸びがこれまでよりも鈍化する可能性があるかもしれません。クロードの影響はSaaSだけでなく、生成AIとAI半導体へも波及する可能性があります。
注目決算
パランティア・テクノロジーズ:2026年5月4日(月)
マイクロソフト:2026年4月29日(水)
4.生成AI向け設備投資が活況である限りAI半導体市場は好調だろうが、低価格化の動きは続こう。一方で2ナノとCPUに注目したい。
グラフ13は、TSMCの月次売上高の推移を示したものです。2026年4月の水準が高水準でしたが、これはAI半導体の生産出荷が好調だったためと思われます。
また表1は、米国の大手IT、マイクロソフト、アマゾン、アルファベット、メタの2026年暦年の設備投資予想を示したものです。この数字はAI半導体の需要に直結します。
AI半導体の世界には、低価格化の動きが出ています。エヌビディアの高額な汎用AI半導体(AI用GPU)に対して、ブロードコムが機能を絞ったため安価ではあるが基本性能が高い特注型AI半導体の設計、生産を行っています(TSMCに生産受託)。アルファベットが2015年から自社のデータセンターに導入しているTPUはブロードコムが設計、生産していますが、次世代版の推論特化チップをメディアテックが行う模様です。特注型AI半導体も競争が起きています。
また、CPUが注目されています。生成AIシステムが大規模化するにつれて、高性能CPUが必要になってきました。
CPUの重要性は別の角度からも言えます。高性能生成AIをこれまでより効率的に開発できた場合、より低いインフラコストで、例えば、通常のサーバーやパソコンで生成AIを動かしたいというニーズがあると思われます。この場合、高額なAI半導体だけでなく、高性能CPUの需要が増えると思われます。
注目決算
TSMC:2026年4月16日(木)
インテル:2026年4月23日(木)
AMD:2026年5月5日(火)
エヌビディア:2026年5月20日(水)
グラフ13 TSMCの月次売上高
表2 米国大手ITの設備投資額(暦年)
5.半導体製造装置も大手ITの設備投資が重要。
表1にある米国大手ITの設備投資は、AI半導体、CPU、メモリの需要増加を通じて半導体製造装置需要に繋がります。従って、半導体製造装置についてもIT大手の設備投資の動きに注目したいと思います。
AI半導体の生産ラインは、最先端ラインよりも1世代前のラインを使いますが、最先端CPUは最先端ライン(現在は2ナノ)を使います。多くの半導体製造装置では、最先端ライン向け製造装置のほうが一世代前の製造装置よりも価格が高いため、最先端CPUの需要増加は半導体製造装置各社の業績にプラスの効果があると思われます。
注目決算
ASMLホールディング:2026年4月15日(水)
ディスコ:2026年4月22日(水)
アドバンテスト:2026年4月27日(月)
東京エレクトロン、レーザーテック:2026年4月30日(木)
6.エンタテインメント企業は、海外の大型買収を念頭において注目したい。
大手映画会社、ワーナー・ブラザーズ・ディスカバリーの買収を巡るネットフリックスとパラマウント・スカイダンスの競争は、2026年2月に総額約1,100億ドル(約17兆円)を提示したパラマウントが勝利しました。
また、物言う株主、ビル・アックマン氏のヘッジファンド、パーシング・スクエアは4月7日、ユニバーサル・ミュージック・グループ(UMG)に対して、現金と株式の組み合わせで総額約557.5億ユーロ(約10.4兆円)の買収を提案しました。ユニバーサル・ミュージック・グループは、テイラー・スウィフトやビリー・アイリッシュなどを擁する世界的な音楽会社で、ソニーミュージックと並ぶ音楽の世界2強の1社です。
これらの買収金額を見ると、日本人が考えるよりも映画作品や音楽作品とそれを制作する映画会社、音楽会社の価値は大きいのではないかと思われます。ちなみに、ソニーグループの時価総額は約20兆円です。
このことを念頭に置きながら、ソニーグループ、ネットフリックス、スポティファイ・テクノロジーの決算に注目したいと思います。
注目決算
ネットフリックス:2026年4月16日(木)
スポティファイ・テクノロジー:2026年4月28日(火)
ソニーグループ:2026年5月8日(金)
本レポートに掲載した銘柄: アップル(AAPL、NASDAQ) 、 マイクロソフト(MSFT、NASDAQ) 、 アマゾン・ドット・コム(AMZN、NASADQ) 、アルファベット( GOOGL 、 GOOG 、NASDAQ)、 メタ・プラットフォームズ(META、NASDAQ) 、 エヌビディア(NVDA、NASDAQ) 、 ブロードコム(AVGO、NASDAQ) 、 インテル(INTC、NASDAQ) 、 アドバンテスト(6857、東証プライム) 、 ディスコ(6146、東証プライム) 、 東京エレクトロン(8035、東証プライム) 、 レーザーテック(6920、東証プライム) 、 ASMLホールディング(ASML、アムステルダム、NASDAQ)
(今中 能夫)

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