ダービージョッキー
大西直宏が読む「3連単のヒモ穴」

――今週から7週連続のGⅠ開催となる春のGⅠシリーズ。そのスタートを飾るのは、GⅠ天皇賞・春(5月3日/京都・芝3200m)です。

伝統の長距離戦となりますが、大西さんが重要視されるのはどういった点になりますか。

大西直宏(以下、大西)まず前提として、現代競馬においては長距離レースを目標に配合される競走馬はごくわずか。馬づくりにおいては、おおよそダービーを中心としたスピード競馬に焦点が当てられていますよね。

 そうした状況にあって、天皇賞・春でも近年は、基本的に軸となる要素は中距離向きのスピード。そこに、長距離ならではの要素......馬自身の個性や騎手の腕など、わずかな差が加わることで勝敗が左右される、といったイメージを持っています。

――"長距離ならではの要素"ということに関して、もう少し詳しくうかがえますか。

大西 先にも触れた騎手の腕については、やはりそれなりの影響があると考えています。一般の競馬ファンの方々のなかでも、3200mは長距離=難しい、という認識は強いですよね。実を言うと、それは多くの騎手にとっても同じなのです。

 施行回数はさほど多くなく、言うなれば不慣れなコース。加えて、GⅠの大舞台。そうなると、経験の少ないジョッキーは自分のリズムを保てないこともあり、それが最後の着差に表われます。

 一方で、トップジョッキーにはそういったブレはほとんどありません。ゆえに長距離GⅠでは、経験豊富な物怖じしないベテラン騎手の活躍が目立つのです。

――「長距離戦は騎手で買え」という格言は、まさにそのとおりなのですね。では、今年のレースで大西さんが中心視している馬を教えてください。

大西 GⅠ大阪杯(4月5日/阪神・芝2000m)を勝ったクロワデュノール(牡4歳)です。

 その大阪杯の前、国内レースで唯一馬券圏外(4着)となった昨秋のGⅠジャパンカップ(11月30日/東京・芝2400m)は、海外遠征帰りで万全の臨戦態勢ではありませんでした。しかし、そもそもダービー馬ですからね。復調した今、このメンバー相手には負けられないでしょう。

 距離延長に関しても、個人的にはまったく問題ないと見ています。というのも、クロワデュノールの強みのひとつに、折り合いに心配がないことが挙げられます。無理にギアを上げずとも一定の速度で走り続けられる優等生タイプ。長距離はかえって、同馬の本領が発揮される舞台となるのではないでしょうか。

――その他、注目している馬はいますか。

大西 アドマイヤテラ(牡5歳)は外せません。昨年のジャパンカップでは落馬のアクシデントがありましたが、カラ馬の状態ながら先頭でゴール板を通過。非常に真面目な馬だと思います。

 前走のGⅡ阪神大賞典(3月22日/阪神・芝3000m)でもレコードタイムで完勝。スピード対応にも問題ありません。

 また、鞍上の武豊騎手は馬のアタリが柔らかく、馬がゲートを出たなりの位置でレースを組み立てられます。先週のGⅡマイラーズCにおいて、アドマイヤズームを勝利に導いた際もそうでした。この胆力、さらに馬の気持ちを重視した騎乗スタイルは、まさに長距離向きです。

――現に武豊騎手は天皇賞・春では歴代最多の8勝。今年も「平成の盾男」と呼ばれる名手の手綱さばきが注目されますね。ところで、昨年の覇者ヘデントール(牡5歳)についてはどう見ていますか。

大西 ヘデントールは、3番手の評価です。前走のGⅡ京都記念(2月15日/京都・芝2200m)は8着でしたが、骨折明けの一戦で今回に向けては見直しができると踏んでいます。

 鞍上を務めるのがクリストフ・ルメール騎手というのも心強い限りです。彼も折り合いが巧みな名手で、最大の強みは自ら動けること。どんな大舞台であってもペースが遅いと見るや、大胆に仕かけていく光景はこれまでも何度も目にしてきました。馬の状態さえ整っていれば、手強い存在です。

――それら強力な面々がそろうなかで、伏兵が割って入る余地はあるでしょうか。

大西 大阪杯でも「ヒモ穴」に推したタガノデュード(牡5歳)に再度、一発の可能性を感じています。

【競馬予想】天皇賞・春はクロワデュノールが断然も、「決め手あ...の画像はこちら >>

――実際、大阪杯では13番人気ながら勝ったクロワデュノールからコンマ3秒差、3着ダノンデサイルとはタイム差なしの4着でした。

大西 タガノデュードには、以前とは異なる点が明確にあります。"決め手"です。年明けのレースでは、3戦すべてでメンバー最速の上がりをマークしているのがその証拠。

 キャリアも積んでおり、どんな流れにも対応できます。それだけに、今回も末脚が鈍った馬たちを差す形で馬券圏内(3着以内)に食い込んでくるシーンが想像できます。

 コンビを組む古川吉洋騎手も、経験豊富なベテラン。今回もさほど人気はないでしょうから、大舞台でも思いきった騎乗をしてくれるのではないでしょうか。

 ここに来て、完全に素質を開花させたタガノデュード。年明けからの上昇ムードに期待して、今回も同馬を「ヒモ穴」に指名したいと思います。

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