SV.LEAGUE 大河正明チェアマン

インタビュー 後編

(中編:SVリーグの「主役」たちへの感謝を大河正明チェアマンが語る 外国籍選手の枠拡大はリーグ強化へのメッセージ>>)

 SV.LEAGUE(以下、SVリーグ)のチェアマン、大河正明は67歳になるが、頑強な体つきだった。ジャケットの肩が若々しく張っていた。

ジムトレーニングで鍛えているという。弁舌も鮮やかで、アイデアに富み、記憶力もよく次々と言葉が紡ぎ出される。

 発信することで、さらに熱を帯びる。それは"野望"とも言い換えられるかもしれない。日本バレーボール界に降臨した先駆者の肖像だ。

SVリーグが目指すは「総売り上げ500億円」 チェアマンが思...の画像はこちら >>

 改革を目指す上では、当然反発もある。そこで向き合って理解を求めながら、話を進めるわけだが......。本来の意図とは違う形で情報が発信されてしまうこともある。

「昨年末も、なぜか『Vリーグ消滅』という見出しのニュースが出たんです。その件は、将来的にプロ化、SVリーグを目指すクラブが所属する『SV.LEAGUE GROWTH』を創設し、SVリーグの2部相当として運営するということなんです。一方でアマチュア志向のクラブは、協会管轄でそれに合わせた環境のリーグをつくっていく。より各クラブの志向に合わせたリーグ運営をするための再編案なんですが、現行Vリーグの運営は今季で終了になるので、そこを違った形で切り抜かれてしまいました」

 プロスポーツにおいて、プロとアマチュアと分離されるのは当然のことである。

Jリーグも、JFLとは切り離されている。しかし、アマチュア特有のノスタルジーが、プロ化への移行期には軋轢を生み出すのだ。

 しかし、大河には障害を乗り越えるだけの戦略と実行力がある。

【総売り上げ500億円を成し遂げるための戦略】

――ビジネスの原則で、始めた事業は大きくしていくしかありません。SVリーグもプロ化を推進し、拡大していくことになります。SVリーグは5年後の2030-31シーズンには、各クラブとリーグの総売り上げについて、約2倍の500億円を目指していますね。

「ここから売り上げを250億円増やすには、今までの協賛金、入場料、グッズ販売、放送配信の4つだけ追いかけても難しいと思います。アリーナの運営で利益を出しているクラブもあるので、それも参考に、『スポーツビジネスの周辺の分野で"落ちているところ"をもっと拾っていこう』という話をしています。500億円は、それができた場合の指標ですね」

――昨年、フィリピンで世界選手権を取材したのですが、日本人選手の人気はすさまじかったです。東南アジアのタイ、ベトナムなども日本バレーが人気なので、ワールドチャレンジシリーズのような大会を開催し、外貨を稼ぐこともターゲットになりそうですね。

「確かにその3カ国では、観戦スポーツとしてバレーが人気ですね。すでに、海外で試合をすることは考えていて、2026-27シーズンには男女ともタイで2試合ずつ公式戦を開催する予定です。渡航費もかかるのでどこまで黒字化できるかわかりませんが、何年か続けていけば成果も生まれてくるでしょう。

 SVリーグ女子はタイの選手もプレーしてますし、男子も漫画『ハイキュー!!』の影響もあって人気が高い。試合の開催が恒例になったら、SVリーグへの興味関心はどんどん高まっていくと思っていますし、その結果として、放映権を買ってくれる人が出てくると期待しています。それまでには、タイからでもチケットを購入できる仕組みを作って、スポーツツーリズムじゃないけど、日本にも来てもらえる仕組みも整えたいですね」

――SVリーグが世界最高峰になっていくことで、海外に輸出できる事業になりますね。

「日本では、少子化、高齢化、人口減少などの問題も関係してくるところですが、スポーツはグローバル事業です。野球、ラグビーに比べて、サッカー、バスケ、バレーは海外マネーを引っ張りやすい競技だと思います。

 中でも、バレーは"輸出型"でチャンスがあると思っています。たとえばサッカーは、タイではプレミアリーグが人気ですし、バスケもNBAを上回るのは難しい。一方でバレーは、少なくともアジアではSVリーグの人気が一番高い。そこに活路を見出せると考えています。2030年にはLEDの広告、スポンサー企業が半分近く外資になっていても不思議ではないでしょう」

【将来的に男子は16チームを目指す】

――SVリーグが44試合と試合数が多いことにさまざまな意見もあるようですが、各クラブの売り上げ増加など、事業拡大には譲れないラインだと思います。ただ、チャンピオンシップの期間が少し短く、「レギュラーシーズン1位のクラブに不当だ」という声に関してはいかがですか?

「将来的にチャンピオンシップを長くすることは考えています。ただ、現状ではアリーナのキャンセルコストの問題があるんですよ。アリーナは1年以上前から抑えなければならず、しかも結果的にホーム開催が叶わなかったら直前に多額のキャンセル料を支払わなければならないのです。

だからこそ、『夢のアリーナの実現』を謳っているんですが、客席が多くて自由に抑えられるアリーナを確保しないといけません。

 それでいつか、ベスト8からホーム&アウェイで2戦先勝から3戦先勝にできるようにしたいですね。少なくとも、チャンピオンシップのファイナルだけは3戦先勝にして、大阪で土・日に試合をして、翌週に東京や横浜などで金・土・日という日程でやりたい。そうすれば、最短でも2週目の3戦目までは試合があることになりますし、金曜で試合が終わっても『土・日に予定されていた試合のキャンセルコストはリーグが持つ』ということであれば文句も出ないでしょう。

 ただ、1000人キャパの体育館しか押さえられない、ではちょっと困るなと」

――リーグ全体のチーム数も増やしていくのでしょうか?

「女子は当面、14チームの予定です。男子は、来シーズンは12チームにします。北海道イエロースターズとフラーゴラッド鹿児島はすでにライセンス交付が決定しています。

 将来的には関東にあと2,3チーム欲しいので、そこも動いています。男子は16チームまで増やしていくつもりです。SVリーグのグロース(成長性)を作るのは、中間層を分厚くする必要性を感じたからです」

【今後の「大事な仕事」】

――ほかに、ユース年代の育成という問題も絡んできますね。

「今は学校体育だけでなく、クラブユースからのルートも作るなど、さまざまなことを考えています。少なくとも中学時代の環境は充実させる必要があるでしょう。

中学の部活が少なくなっている傾向がありますからね。競技によっては、全国大会も成り立たなくなっていくので、地域クラブが育っていく必要があります」

――先日、イタリアで石川祐希選手とお会いしたそうですが、いつか"石川きょうだい"をSVリーグに呼びたい、という気持ちはありますか?

「もちろんです! 特に石川祐希選手は、長く世界で勝負している唯一無二の存在ですからね。『いつか帰ってきてほしい』とは伝えましたが、それは彼の考えが前提です。とにかくバレー界を発展させていくため、1時間くらい話をしました」

――チェアマンの任期は2年ですが、まだまだ大河チェアマンの手腕は欠かせません。最終的に見据える大仕事は何でしょうか?

「後継者を見つけることが大事な仕事です。なかなか難しい世界で、マニュアルがないところでゼロから物ごとを作っていかないといけない。企画力、創造力はあったほうがいいでしょうね。

 自分にそういった能力がある、というわけではないですが......後任は自分とは違い、現場のことも知っている、グローバルにやれる人がいいですかね。平和に引き継ぎたいです(笑)。僕がいなくても、しっかり回る組織にして去るのが理想です」

<プロフィール>

大河正明(おおかわ・まさあき)

1958年5月31日生まれ、京都府出身。銀行員時代にJリーグへ出向した経緯があり、退職後にJリーグへ入社。常務理事を務め、クラブライセンス制度の導入などに携わる。

その後、Bリーグのチェアマンや日本バスケットボール協会の専務理事・事務総長などを務めた。2020年からびわこ成蹊スポーツ大学の副学長、学長を務め、2022年9月にVリーグの副会長に就任し、新リーグ構想に着手。2024年7月、SVリーグチェアマンに就任した。

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