オリックス・バファローズ
アンドレス・マチャド インタビュー(前編)
実力伯仲のパ・リーグで、オリックスが多くのケガ人を出しながらも首位争いを演じている。僅差の展開が多いなか、チームを勝利に導いているのが、守護神のアンドレス・マチャドだ。
16試合に登板して13セーブ、1ホールド、防御率1.69(今季の成績は5月19日時点)。16回を投げて17奪三振、与四球3と抜群の支配力を見せている。
【マチャド流コンディショニング】
シーズン開幕前にはベネズエラ代表としてワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で6試合に登板したが、ゴールデンウイークが始まった頃の取材日、「疲労はない」と言いきった。
「自分としては、WBCをスプリングトレーニングの一環として捉えて調整を進めてきたからね。WBCで登板して、しっかり準備が整った状態でシーズンを迎えられた。今は調子がいい。オリックスが勝利する力になれるように、コンディションは100%の状態だ」
WBC直後に迎えた2026年シーズン。激闘の影響でコンディションを崩す各国代表選手は少なくない。長いシーズンを目前に控えるなか、心身に大きな負荷がかかるWBCへ選手を派遣したくないというMLB球団の"本音"は、毎回のように聞こえてくる。
一方、ベネズエラ代表で唯一の"NPB組"として出場したマチャドは、全7試合中6試合に登板。悲願の初優勝をつかむまで、強い緊張感のなかで投げ続けた。
シーズン開幕後も、オリックスで好投を続けている。その無尽蔵とも言えるエネルギーは、いったいどこから湧いてくるのだろうか。
「たぶん、シーズンオフの準備の仕方が関係していると思う。もともと、スプリングトレーニングでたくさん投げるのが好きなんだ。いつも7、8試合くらいは登板している。昨年12月にはベネズエラのウインターリーグで7試合に投げ、日本でもWBCへ行く前に、たしか1試合に登板した。それがちょうどいいバランスになったんだと思う。シーズンに向けてしっかり準備を整えながら、疲れを感じない状態に持っていくことができた」
マチャドは17歳の時、MLBのカンザスシティ・ロイヤルズと1万ドルで契約。33歳となった今季でプロ16年目を迎え、長いキャリアのなかで自分なりの調整法を確立してきた。シーズンオフに母国ベネズエラのウインターリーグで投げる年もあれば、あえて登板を見送る年もある。自身のコンディションと向き合いながら最適な選択を重ねてきたことこそ、息の長い活躍を支える秘訣なのだろう。
【マチャドを奮い立たせた侍ジャパンの存在】
プロ野球選手として所属チームで結果を残すことは最重要ミッションだが、母国のために戦うWBCも特別な舞台だった。
「ベネズエラを代表してプレーするのはとてもうれしく、本当に幸せだった。ベネズエラを代表できることを誇りに思っている。日本人やアメリカ人、どの国の選手にとっても、自分の国を代表するのは同様に特別なことだと思う。
マチャドにとって2023年につづく2度目のWBCは、闘志をかき立てる要因がいくつもあった。そのひとつが、準々決勝で日本と激突したことだ。
「とても特別な試合だったよ。スプリングトレーニングの時点で、『準々決勝で日本と対戦することになったらプレーしたいか』と聞かれて、もちろん『はい』と答えた。すごい試合になるだろうと思っていた」
実際、ベネズエラはロナルド・アクーニャJr.(ブレーブス)の先頭打者本塁打で先制すると、日本も大谷翔平(ドジャース)の一発ですぐさま同点に追いつく。その後、日本が5対2とリードを広げたものの、中盤にベネズエラは打線が爆発し逆転。結局、8対5でベネズエラが勝利した。
マチャドは3点リードの8回に6番手として登板。3番・森下翔太(阪神)を空振り三振、4番の吉田正尚(レッドソックス)をセンターフライに打ちとるも、5番・岡本和真(ブルージェイズ)、6番・村上宗隆(ホワイトソックス)に連打を浴びて一、二塁のピンチを招く。それでも7番・牧秀悟(DeNA)をショートゴロに抑え、得点を許さなかった。
いずれも日本を代表する強打者だ。彼らがマチャドの闘志に火をつけた。
「自分にとって本当に大きかったのは、日本が今まさにプレーしている場所であり、多くの日本人選手を知っていたことだ。宮城(大弥/オリックス)もいるしね。本当にすばらしい試合だった。日本はとても強いチームだったけど、結果としてベネズエラが勝利をつかむことができた。それでも、WBCで対戦したチームのなかで、日本がトップクラスの強豪であることに変わりはない」
【世界一を呼び込んだ結束力】
では、この試合で勝敗を分けたものは何だったのか。
「ベネズエラが勝てたのは、細かいプレーをしっかり徹底できたからだ。盗塁、送りバント、そして守備も非常によかった。大きなミスもほとんどなかったしね。チームとしての結束力もあった。それが優勝できた大きな要因だったと思う」
ベネズエラ代表をまとめ上げたのが、強打とリーダーシップで知られる捕手サルバドール・ペレス(ロイヤルズ)だ。数々の名捕手を輩出してきたベネズエラにおいて、その系譜を受け継ぐペレスにとって、今大会は4度目のWBCだった。
2023年大会に続いてバッテリーを組んだマチャドにとって、ペレスは特別な存在だと語る。
「サルバドールとは、カンザスシティで一緒にプレーしていた頃から、とてもいい関係が続いている。
大柄なペレスの構えるミットをめがけ、マチャドをはじめ、左腕のアンヘル・セルパ(ブルワーズ)、剛腕のダニエル・パレンシア(カブス)らが力強いボールを次々と投げ込んでいく。ベネズエラ自慢のブルペン陣は、チームを頂点へ導く大きな原動力となった。
多くの選手たちがプレーするアメリカの地で世界一を勝ち取ったことは、ベネズエラにとって大きな意味があったはずだ。歓喜の抱擁を交わし、国歌を高らかに歌い上げる選手たちの姿は、画面越しでも伝わってくるものがあった。
【混乱の母国を勇気づけた世界一の価値】
筆者は2015年にベネズエラを訪れ、物資不足やハイパーインフレ、高い犯罪率に苦しむ市民たちの姿を目の当たりにした。現在はオンラインでベネズエラ人の先生からスペイン語を学んでいるが、現地の停電によってレッスンが中断されることもある。
長らく厳しい状況が続くベネズエラの人々にとって、国技とも言える野球は大きな希望のひとつとなっている。WBCでベネズエラ代表はひとつにまとまり、国民が最も待ち望んでいたものを届けた。
「本当に特別なことだった。自分たちの国を代表してプレーするのは、いつだって大きな意味がある。今のベネズエラではさまざまな問題が起きているけれど、それは自分たちがコントロールできることではない。野球選手だからね。
だからこそ、優勝という形で母国に喜びを届けられたことは、本当に感動的で胸が熱くなる出来事だった。ベネズエラ中のファンが喜び、祝福している姿を見ることができた。それが、自分たちにとって何より大切で、心を動かされることだったんだ」
特別な思いを胸にWBCへ臨み、仲間たちとともに最高の結果をつかみ取った。そして今は、自らの居場所であるオリックスに戻り、チームのために力強く右腕を振り続けている。
つづく>>
アンドレス・マチャド/1993年4月22日生まれ、ベネズエラ出身。2010年にカンザスシティ・ロイヤルズと契約してプロ入り。










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