プロ、アマを問わず、監督の色やチームの戦い方は「2番打者」を見るとわかりやすい。どんな打者を2番に据えているかによって、そのチームがどのような野球を志向しているのかが色濃く表れるからだ。

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【大分商が実践する「2番に強打者」のメリット】

「1番の河野(晃悠斗/あゆと)と2番の平田(玲翔/れいと)にはフリーで打たせています。勢いをつけてもらおうと思って。送りバントもしないですね。大分では明豊を倒さないといけないのですが、送りバントでは得点が追いつかないんですよ。攻めていくしかない」

 大分商の那賀誠監督はそう話した。

 2番に据えていたのは、投打ともにプロから注目を浴びる平田だ。1回戦では日本文理(新潟)との打撃戦を制したが、その攻撃的な打線を象徴する存在と言っていい。

 チームとして「送りバントをしない」という方針があるわけではない。下位打線では小技を使いながらチャンスをつくり、それを1、2番で還していった。

 2番に強打者を置く利点はいくつかある。ひとつは、プレーボール直後から攻勢をかけられること。そしてもうひとつは、下位打線からつくったチャンスで2番に回れば、クリーンアップのような役割も担えることだ。打線がつながれば、一気にビッグイニングをつくることもできる。

【捕手出身だからわかる嫌な2番打者のつくり方】

 2番に強打者を置いているのは大分商だけではない。2025年の選抜で準優勝した際、5番を打っていた荒井優聖(ゆうき)を2番に据える智辯和歌山の中谷仁監督は、その狙いをこう語る。

「バットコントロールがよくて、三振しないです。こちらの要求にも応えてくれる。1番の長友(悠成)を生かすには、めちゃくちゃ適任なんですよ。ロングも打てるし、出塁率も高い」

 荒井は高いバットコントロールを誇り、指揮官が厚い信頼を置く打者でもある。捕手出身の中谷監督は、1番の長友を生かす意味でも荒井の2番起用には大きな効果があると考えている。

「うちでは荒井が一番いいバッターです。去年はクリーンアップを打っていて、選抜で準優勝した時も5番でしたから、相手も名前は知っていると思うんですよね。その荒井を警戒しながら、塁上には長友がいる。キャッチャーからすれば、すごく嫌な状況だと思います」

【夏の甲子園2026】「一番いいバッター」をなぜ2番に置く? 智辯和歌山、大分商、三重に見る、送りバントに頼らない攻撃戦略
仙台育英戦で4安打を放った智辯和歌山の2番・荒井優聖 photo by Ryuki Matsuhashi
 中谷監督は続ける。

「一塁に足の速いランナーがいると、そちらを警戒しながら、バッターにきっちりストライクを投げられる高校生のピッチャーはなかなかいません。荒井は四球も選べるバッターなので、無死一、二塁のチャンスをつくれる。

実際、初回から点が入ることも多いですし、相手からすれば、2番にいいバッターがいるのは嫌だと思います」

 中谷監督は比較的、手堅い策を用いる指揮官だ。それだけに、荒井を2番に据えているところに、今大会の智辯和歌山がこれまでとひと味違う攻撃を目指していることが見えてくる。

【強打の2番が生んだ履正社戦の初回3得点】

 ベスト8に進出した三重も、2番に長打力のある前野元佑(げんすけ)を置いていた。初戦(2回戦)の松商学園(長野)戦、3回戦の履正社(大阪)戦では、ともに序盤から攻撃を仕掛け、そのリードを守りきって勝利した。

 たとえば、三重と履正社との試合は、両チームのスタイルが対照的だった。

 先攻の履正社は1回表、先頭の岩本倫之介が中前安打で出塁。続く2番・竿谷凛斗の送りバントが内野安打となり、無死一、二塁とチャンスを広げた。さらに3番・小杉悠人も送りバントを決めて一死二、三塁としたが、後続が倒れ、先制点を奪うことはできなかった。

 一方の三重はその裏、先頭の水野央清が四球で出塁すると、2番・前野の左前安打で無死一、二塁とチャンスを広げる。さらに3番・秋山隼人・も四球を選んで無死満塁とすると、4番・福田篤史の打席で相手のけん制悪送球が飛び出し、1点を先制。なおも1死二、三塁から、5番・立松宗馬の投手強襲の適時打などで2点を加え、この回3点を奪った。

 初回、手堅く走者を送った履正社に対し、三重は積極的に打って出て3点を先制した。両校の対照的な攻撃は興味深いものだった。

三重はその勢いのまま2回までに5点を奪うと、そのリードを最後まで守って逃げきった。結果を見れば、序盤から攻める姿勢を貫いた三重の狙いが、見事に実を結んだ試合だったと言えるだろう。

「うちのピッチャー陣の調子がそれほどよくなく、何点取られるかわからないのに、1点ずつ取ってもどうかなって思いました。それくらい大阪代表のチームは怖い。バントをしても点が取れない時は取れないので、確率的にはそれほど変わらないんじゃないかなと思います」

 三重の沖田展男監督はそう力説する。さらに2番・前野の起用については、長打力に加えて、もうひとつの狙いがあるという。

「(1番が出塁すると盗塁を警戒して)2番にはストレートが多くなってくる。それを狙ってくれたら、というのもあるんです。県大会ではそれでホームランを打っているので」

 前野は自らの役割について、次のように語る。

「うしろに信頼できる先輩がいるので、つないでいけたらと思っています。どちらかというと、自分は攻撃的な2番打者だと思っています。配球とかも読みやすくなったりするので、そこは強みになっています。

ランナーを進めたいというのは、どのチームも同じだと思う。それがヒッティングなのか、バントになるのかの違いであって、バッティングでつながりを持たせていくのがうちの打線かなと思います」

【2番打者に映るチームの個性】

 高校野球は、無死一塁、または無死二塁の場面で2番打者を迎えると、送りバントを選択するケースが少なくない。

 だが今回紹介した3人の2番打者は打撃技術が高く、ヒッティングでも走者を進めることができる。送りバントでアウトをひとつ相手に与えるより、進塁打から適時打まで幅広い結果が期待できるというわけだ。

 送りバントで走者を進めるのか、それとも打たせて一気に得点を狙うのか。どちらが正解というわけではない。大切なのは、自分たちの戦力を見極め、どうすれば最も得点の可能性を高められるかを考えることだろう。

 大分商の平田、智辯和歌山の荒井、三重の前野。3人に共通するのは、「2番だから送る」という従来の役割に縛られず、打つことで打線をつないでいることだ。

 2番打者を見れば、そのチームの野球が見えてくる──。今大会を見ていると、そんな思いをあらためて強くする。送りバントか、ヒッティングか。

その選択のひとつにも、指揮官が描く得点への道筋と、チームの個性がはっきりと表れている。

氏原英明●文 text by Hideaki Ujihara

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