華為技術(ファーウェイ)の汪濤副会長(輪番会長)は6月末に開催された世界モバイル大会・上海(MWC上海)で、「衆智で新機軸を開き、移動通信の今後の10年を共に創る」と題した基調講演を行った。以下は、その主要内容を再構成した文章だ。
世界の5G利用者数はすでに31億人を突破し、中国の5G-A(進化型5G)の利用者数は1億1000万人を超えた。今後の核となる論理は、産業面では1つの通信網で人、物、人工知能(AI)の多様な接続需要をまかない、宇宙と地上を一体化させて接続の境界を広げ、超広帯域を通じて、各世代の通信規格がもつ性能や価値を最大限に引き出すことだ。
技術面ではAIと移動通信の結合を通じて通信網の能力を向上させ続け、AIを前提とした構造に基づいた次世代型コア網(通信網の基幹部分)により自律型AIの新たなサービスを可能にする。事業面ではモバイルサービスの新たなモデルと利用場面を積極的に模索し、持続的に成長できる新たな商業価値を創造する。これら3つの道筋を連携して推し進め、移動通信の次の黄金の10年を共同で定義する必要がある。
第1に、AIと移動通信の結合による「3階層のスマート化」という解決策の枠組みだ。一つ目の階層はネットワーク構成要素のスマート化であり、基地局やコア網などの関連設備にAIを活用した制御アルゴリズムを導入することで、無線周波数帯の効率向上やエネルギー効率の向上、通信網の自己防衛機能の向上を実現する。このことで大きな収益がもたらされる。
二つ目は通信網のスマート化であり、運用や保守の全工程にAIを導入することで、無線やデータ伝送といった個別の技術分野において、完全な自動制御を推し進める。ファーウェイは2026年に、通信事業者と協力して重点地域における無線や伝送など多くの分野でこの方面の実用化を加速する。
三つ目はサービスのスマート化だ。コア網にスマート化基盤を導入して自律型AIと深く融合させ、通信事業者の主力事業を刷新して増収を可能にする。
第2に、宇宙と地上を一体化させた通信網の構造体系を構築する。衛星通信が移動通信と深く融合し、地上から宇宙・空・地上の一体化へと向かい、通信の対象である人、物、AIのつながる領域や活動範囲をさらに拡大する。衛星通信網では受信範囲の広さを活用し、将来的には大容量で高品質な地上通信網と需要に応じて補完し合い、世界を100%網羅することを実現する。これらにより、地上の通信事業者は衛星通信事業者を柔軟に選択して圏外地域を補完するローミング(他社回線の借り受け)と、総合的な強みを発揮してインフラ設備を共同で構築する地上主導の協調形態が形成される。
第3に、全業界を対象に科学的かつ合理的な周波数帯の配分を計画的に行い、共同で超広帯域を構築することが必要だ。とりわけU6GHz(6ギガヘルツ帯のなかでも周波数が高い部分)は自律型AIインターネット時代の需要に合致する次世代の黄金の周波数帯と位置付けられており、20を超える国と地域が国際移動通信に使用する、すなわち同じ目的で使用することを明確にしている。該当する人口は世界の80%近くに達する。2026年はU6GHzの商用化元年であり、中東や中国の香港、マカオなどで商用利用を開始する。
第4に、AIを前提とした構造を持つ次世代型コア網を定義する。新世代の移動通信技術は、単なるデータ伝送という位置付けを突破し、テラビット級の超広帯域(1テラビット=1000ギガビット)、1ミリ秒未満の超低遅延、極めて信頼性が高く安定した伝送能力を備える必要がある。将来のサービスの通信量の仕組みは、従来の下り回線を中心とした情報の取得から、上り回線と下り回線が均衡したスマート化された協調へと変わる。多くの情報を組み合わせたリアルタイムの感知や協調による学習と推論は、上り回線の通信量の急速な増加を促し、通信網の遅延や通信速度に対しても極めて高い要求を突きつける。ファーウェイはこれらの課題に対してAI-Centric(AIを中心とする)ネットワークの目標を発表し、「バイトとトークンを二本柱に据えた」事業展開により主要な競争力を獲得するビジネスモデルを構築した。
第5に、電気通信事業者はモバイルサービスの新たなモデルと新たな利用場面を模索する必要がある。通信事業者は単なる通信量による事業展開からAIとの高度なやり取りによりトークンを得る事業展開などの新たなモデルへと転換せねばならない。つまりビジネスモデルの「量」から「質」への転換だ。差別化された場面ごとのサービスを提供することで、利益を持続して生み出す事業の好循環と価値の成長を実現する必要がある。上り回線の大容量化は重要な能力であり、スマートグラス(AIが利用できる眼鏡)を用いた翻訳や展示会の見学にはリアルタイムで多くの情報を組み合わせたやり取りが必要となり、上り回線で20Mbpsが必要になる。場面ごとの必要に応じてユーザーに満足をもたらすサービスモデルを実現し、5G-A利用者の体験を重視する事業展開を既存顧客の維持管理の体系に組み込むことで収入の増加を維持する。顧客満足度の向上については、例えばシンガポール・テレコムが自律型AIの導入後にわずか6週間足らずで7万回の顧客対応を完了させ、最終的な問題解決率は70%を超えたなどの実例がある。











