シンガポール華字メディアの聯合早報は25日、中国で「ホルムアルデヒド白菜」が物議を醸している問題で、中国の食品安全問題がいつも輸送段階で発生する背景について論じる記事を掲載した。
このほど、中国の動画投稿アプリ「抖音(中国版TikTok)」で430万人のフォロワーを持つブロガー「漁猟斉哥」氏が、河北省張家口市康保県の農作物の産地で白菜を出荷する際に、発がん性が指摘されているホルムアルデヒド溶液に浸す違法行為が行われていると告発した。
事件の経緯
「漁猟斉哥」氏の動画では、作業員が白菜を1つずつ手に取り、ホルムアルデヒド溶液に浸している様子が映っており、作業員は「2~3日は鮮度を保てる」と説明していた。現場では「ホルムアルデヒド」と表示されたプラスチック製の容器も撮影されていた。「漁猟斉哥」氏は動画の最後で、「安徽省合肥市の市場で購入した河北省産の白菜からも高濃度のホルムアルデヒドが検出された」と述べていた。
ホルムアルデヒドは有機化合物の一種で、世界保健機関(WHO)の国際がん研究機関(IARC)が定める「グループ1」の発がん性物質に分類されている。事件が発生した康保県は内モンゴル自治区に隣接し、中国北部の主要な野菜生産地だ。標高が高く気温が低いため、中国の大部分で夏季に野菜の生育が限られる時期でも、同地では白菜やキャベツ、ブロッコリーなどが大量に栽培・出荷され、各地へ運ばれている。
康保県政府は動画が公開された当日に、「調査の結果、動画で取り上げられた状況は事実であり、野菜の輸送中の鮮度を保つため、買い付け業者が積み込みの際に行った違法行為だった」と発表した。現在、公安当局が事件についてさらに捜査を進めているほか、さらに上級の中国国務院食品安全委員会弁公室、農業農村部、市場監督管理総局なども調査に介入している。
過去にも同様の事例、なぜ解決されない?
記事によると、中国では過去にも同様の事例が存在する。2012年には、山東省青州市である業者が白菜を長距離輸送する前にホルムアルデヒド溶液を散布して鮮度を保っていたことが明らかになった。事件が発覚した後、山東省および雲南省で生産され、広東省広州市に運ばれてきた計122.4トンの白菜についても同様の問題が指摘された。業者の中には、ホルムアルデヒドによる白菜の鮮度保持を「3~4年前から続けている」と話す者もいた。
記事は、この問題が長年にわたって解決されない背景には、コストの問題があると指摘。
例えば、河北省康保県から江蘇省宿遷市へ30トンの白菜を運ぶケースでは、通常のトラックでの輸送費は約7600元(約18万円)だが冷蔵車を用いると約1万2000元(約28万5000円)と6割増しになる。冷蔵車内の予冷などの工程を含めると、さらに6000元(約14万円)ほどコストが増える場合もあるという。卸売業者の純利益率は10%未満である調査では平均約3.4%とも言われている。過去にはある白菜卸売業者の実際の利益について500グラム当たり約0.07元(約1.6円)しかないと報じられた。
高コストのコールドチェーンに対し、ホルムアルデヒドによる鮮度保持は低コストで、あるセルフメディアの試算では白菜10トンにかかる処理コストはわずか3.5元(約80円)とされている。
食品安全問題、多くが輸送段階で発生
記事は、中国の食品安全問題は輸送・流通段階で発生することが多いとし、2024年7月にタンクローリーが石炭系油などの化学液体を荷下ろしした後、タンク内を洗浄せず、そのまま食用大豆油を積み込んで輸送していたことが明らかになった事件を指摘。また、今年5月に福建省漳州市で発生した「薬漬けヤマモモ」事件でも、買い付け業者が鮮度を長持ちさせ、見た目を良くするために防腐剤や甘味料を違法に添加していたことに触れた。
そして、「これらの事件は形こそ異なるものの、いずれも業者のコスト削減と関係している。ホルムアルデヒドや防腐剤は使用コストが極めて低い一方、予冷や冷蔵車、産地の冷蔵施設などには多額の設備投資が必要となるためだ」と言及。「今回の事件が明らかになった後、当局は迅速に介入したが、人々からは集中的な取り締まりが終われば、また同様のことが繰り返されるのではないかとの懸念の声も上がっている」とし、2011年に薬剤を使用したヤマモモの問題がすでに発覚していたにもかかわらず、その15年後に再び同様の事件が起きたことを指摘した。
記事は、「タンクローリー事件から薬漬けヤマモモ事件、ホルムアルデヒド白菜事件に至るまで、同様の食品安全事件に対する監督・管理がなかったわけではないが、個別の事件を処罰するだけでは違法行為の背景にある損得勘定を変えることは難しい」とし、「根本的な対策は規則に従った方法をより安くし、違法行為の代償をより重くすることであるが、これは一部の業者を摘発することよりもはるかに難しいのだ」と論じた。











