珍獣「麋鹿」(中国語名)は、角はシカ、顔はウマ、ひづめはウシ、尾はロバに似ていることから、中国では古くから「四不像(四つの動物のどれにも似ていない)」と呼ばれ、日本でも「シフゾウ」と紹介されている。中国文化において麋鹿(以下、シフゾウ)は、吉祥や皇権、魔よけなどの象徴としても知られている。

シフゾウは約300万年前から中国の長江・黄河中流域の平野や湿地に生息し、最盛期には1億頭を超えていたともいわれる。しかし、気候変動に加え、人間による乱獲や生息地の開発・占有などによって個体数は急速に減少。野生のシフゾウは中国から姿を消していった。

記録によると、18世紀初頭には、現在の江蘇省泰州市橋頭鎮周辺の野生個体が最後となり、中国国内の野生のシフゾウは絶滅したとされる。地球上からも野生のシフゾウは姿を消した。

状況が大きく変わったのは1986年だった。この年、英国の七つの動物園で飼育されていた39頭のシフゾウが中国に戻され、江蘇省大豊のシフゾウ保護区に移された。

当時の保護区は、広大な干潟が広がるだけの荒涼とした土地で、保護施設も十分に整っていなかった。それでも研究者らが長年にわたって飼育・繁殖と生態環境の保全に取り組んだ結果、シフゾウは徐々にこの地で数を増やしていった。

87年には繁殖に成功し、92年には個体数が100頭を突破。2006年には1000頭を超えた。そして現在、その数はさらに大きく増えている。

江蘇大豊シフゾウ国家級自然保護区によると、今年のシフゾウの出産シーズンがほぼ終了し、新たに生まれた幼獣のうち約720頭が生存している。これにより、江蘇省沿岸部に生息するシフゾウの総数は8800頭を突破した。

中国で一度は絶滅した珍獣、野生個体が急増…今や8800頭超に

特に注目されるのが、保護区の外に生息する野生の個体だ。現在、区外の野生のシフゾウは4000頭を超えており、野生個体群は歴史的な規模にまで回復した。(翻訳・編集/RR)

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