運転中の通話、信号無視、車間距離不足、飲酒運転……。いずれも、罰金や罰則の対象となる、ドイツの交通違反です。
それぞれの違反項目には、一定の罰金額が規定されていますが、中には「罰金として、一カ月分の給料を徴収する」という、ユニークかつ厳しい罰則も見られます。一体どんな交通違反をすると、一カ月間タダ働きするはめになってしまうのでしょうか。

その答えは、「相手への侮辱行為」。のろのろ運転をするドライバーにイライラしたあまり、その車を追い越す際に「のろま!」とののしったり、「あっかんべー」と舌を突き出したりする行動。これらが、交通法規上「相手への侮辱」にあたります。

そして、「侮辱行為に対しては、給料一ヶ月分の罰金」と規定されてはいるものの、実際には、その内容や程度によって罰金額にかなり幅があります。
それでは、実際にどんな行為が相手への侮辱にあたるのか、実例をあげつつ罰金額を比較してみましょう。

相手を侮辱するジェスチャーの例
(参考まで:1ユーロ=約110円で換算)

(1)「相手にむかって舌を出す」〜およそ15,000〜30,000円の罰金

解説:日本でもおなじみの、いわゆる「あっかんべー」。幼い子ども同士がやる分には微笑ましいですが、大人が真似ると罰金の対象に。

(2)「人差し指と親指で、丸い輪を作る」〜およそ67,500〜75,000円の罰金

解説:日本では「OK!」を表すポジティブなサインですが、ドイツでは相反する二通りの解釈に分かれます。日本式に「良いこと」を示す一方で、丸い輪がお尻の穴の形を表す場合もあり、世にも下品なジェスチャーに早変わりしてしまうのです。「OK! 大丈夫!」という意味ばかりではないことを、くれぐれもお忘れなく。


(3)「人差し指で、自分のこめかみや額を指す」〜およそ75,000円の罰金

解説:「頭の回転が悪い人は、頭の中に鳥が巣を作っている」という、一種の民間信仰のような言い伝えが元になっている行為。人差し指で頭部(こめかみや額)を指し示すことによって、「あなたの頭の中には、鳥の巣があるんでしょ!」という意味になり、相手を見下す行為に当たります。

(4)「広げた手のひらを、自分の目の前で行ったり来たりさせる」およそ35,000〜100,000円の罰金

解説:広げた手のひらを、自分の目の前で行ったり来たりさせるジェスチャーは、車のワイパーの動きを模倣したもので、「あなた、前方がまるで見えていないでしょ?」、「あなた、状況がまるっきりわかっていないのね」という意味につながります。

(5)「中指を突き出して見せる」〜およそ60,000〜440,000円の罰金

言わずと知れた、侮辱ジェスチャーの代表選手です。罰金額には幅がありますが、ひと月分の給与では済まないほどの高額になるケースも。 とりわけ、交通警察官相手にこのジェスチャーをした場合は、否応なしに実刑に至る可能性もあるほどの悪質行為ですので、決してふざけ半分に使うべきではありません。


国境を越えれば使用言語が変わるように、ジェスチャーの意味も180℃変わることがあります。外国語を教える語学スクールのみならず、ジェスチャースクールが存在してもいいかもしれませんね。
(柴山香)