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禁断の「夜めし」をマンガ化　本物より美味しそうな絵を描くイシヤマアズサ

2015年04月22日(水)11:20

「食べ物のシズル感が尋常じゃない！」と話題になっているマンガがある。イシヤマアズサというイラストレーター・マンガ家による『真夜中ごはん』という一冊だ。

タイトルが示す通り、午前2時とか3時の真夜中に小腹が減って食べてしまうあの「魔のグルメ」の魅力を描いたマンガである。目次に並んだメニューを見ても、「たまごかけうどん」「ツナマヨとしいたけのトースター焼き」「秋鮭としめじのホイル焼」など、夜中に食べたら罪悪感を覚えること間違いなしの料理が並ぶ。しかしこの背徳感こそが美味しさに一層の拍車をかけるのは、真夜中ごはん派のみなさんならご存じのはず。

そんな“罪なご馳走”の数々を描くイシヤマさんの画力はすごい。溶けて伸びるチーズ、雑炊にしたご飯の柔らかさ、塩昆布とあえたキャベツのシャキシャキした食感などが匂い立つように活き活きと描かれている。むしろ本物よりも美味しそうなほどである。

紹介されているメニューはどれもお手軽に調理できるものばかりなので、深夜にこのマンガを読んでいたらたまらず「真夜中ごはん」を作ってしまいそうで怖い。

2015年3月末に発売された本書だが、amazonでも一時品切れ状態になるなど、大きな反響を呼んでいる。その反響の多くは純粋に「食べ物の絵が本当に美味しそう！」というもので、その点からもイシヤマさんの画力の高さがうかがえる。

今回は、その『真夜中ごはん』の作者であるイシヤマアズサさんに、素朴な疑問をぶつけてみた。

――食べ物の絵を描き始めたのはいつ頃からですか？
「大学時代から同人誌を作ってマンガを描いていたのですが、昔住んでいた団地や近所の商店街をテーマにした作品を描いている時、お肉屋さんのコロッケを描いたらその絵がすごく好評だったんです。それから、私は食べ物の絵が得意なのかなと思うようになりました」

ちなみにこの「お肉屋さんのコロッケ」は『真夜中ごはん』の中でも紹介されている。

お店がなくなり、もう今は食べることができなくなってしまったコロッケの美味しさが懐かしい思い出とともに描かれる、ちょっと切なくなる一篇だ。

――食べ物の絵を描くこと自体は昔からお好きだったのですか？
「家に置いてあった『オレンジページ』とかの料理の写真を見るのが好きだったんです。ああいう写真って本物のごはんよりも美味しそうだったりしますよね。それをずっと眺めていたので、食べ物自体が好きだったんだと思います（笑）」

――どんな食べ物でも美味しそうに描くイシヤマさんですが、描くのが苦手な食べ物ってあるんでしょうか？
「白いものが難しいんです。お米やうどん、豆腐、大福とか。あと、熱いものより冷たいものの方が難しいです。

なので、例えばバニラアイスは結構難しいですね」

――逆に得意なものはありますか？
「パンは描きやすいです。茶色いものが描きやすいですね。焦げ目がついたものとか、焼きそばとかは質感が出しやすいんです」

――絵を描くときは実物を見ながら描くんですか？
「はい。食事する時は写真を撮っておいて、いつか描くかもと思ってストックしています。今そのストックが膨大になってきて困っています（笑）」

――食べ物の絵を描く上で、影響を受けた方や、好きなイラストレーターはいますか？
「ジブリ映画のごはんは本当に美味しそうですよね。ただ、『となりのトトロ』でサツキがお父さんとメイに作るお弁当の桜でんぶがすごく美味しそうで、真似してみたら思った味と違ってガッカリしたことも。

私はピンク色の食べ物は絶対美味しい、と常々思っているんです。鮭、たらこ、明太子とか全部大好物なのに……桜でんぶだけは例外ですね。ジブリの他に、たかぎなおこさんの描く食べ物の絵も大好きです」

――絵を描いていて、その料理を食べたくなったりしますか？
「食べたくなります！　でも、その気持ちがないと美味しそうに描けないんです」

――真夜中に食べるごはんは美味しいですが、お身体とか、体重とか、気になりませんか？
「普段は夜食はしないように気を付けています（笑）」

今後はストーリーマンガにも挑戦していきたいというイシヤマさん、これからの作品もとても楽しみにしつつ『真夜中ごはん』を読み返したい。

まるで魔法のように食べ物の美味しさを引き出すイシヤマアズサさんの原画展が大阪・中津のミニコミショップ「シカク」で開催されている。原画ならではの味わいを堪能できるチャンスなのでぜひ足を運んでみて欲しい。