90年代中頃から00年代前半にかけて、木村拓哉は一つの社会現象でした。まず、彼のトレードマークともいうべきロン毛。
一体どれだけ多くの若者が、長髪・色黒という彼を模倣したと思しきスタイルにイメチェンしたことでしょうか。
また、主演したドラマの影響力も半端ではありませんでした。『ロングバケーション』のロケ地はちょっとした観光スポットになり、『ビューティフルライフ』が放送されれば美容師、『GOOD LUCK!』のO.A後には航空業界志望者の若者が増加するという、まさに時代のカリスマとして認知されていました。

キムタクで人気に火が付いたパラパラ


そんなキムタクが流行らせたものの一つに、パラパラがあります。パラパラとは、1980年代後半に日本で誕生したダンスの一種。ユーロビートなどに合わせて、上半身は手や腕を一定の振りで動かし、下半身は2ステップと称される左右移動を行うというスタイルの踊りです。
もともとは80年代後半、高級ディスコから発祥したとされるこのダンスは、ジュリアナ東京に代表される巨大ディスコの誕生&衰退、テクノポップスの流行とクラブ文化の隆盛といった時代の趨勢に翻弄されるカタチで、流行り廃りを繰り返してきました。


キムタクが出演した『SMAP×SMAP』のあるコント


世紀末の世においては、既に「オワコン」化し、存在そのものも忘れ去られていたパラパラ。しかし“時代のカリスマ”の手に掛かれば、人気を再燃させることなど造作もありませんでした。
ブームの発端となったのは『SMAP×SMAP』で放送されたコント。ここでキムタクは「バッキー木村」なるキャラクターに扮して、なぜか幼稚園でコギャル風のダンサーを引き連れてパラパラを披露します。どうやら「バッキー木村」は、この園の園長先生らしいのです。

ディズニーキャラとパラパラを踊るバッキー木村


そんなバッキー園長の踊りを見て、ポカンとする園児たち。その中の一人の女の子が言います。「ワタシは!バッキーよりもミッキーが好き!!」「バッキーじゃなくて、ミッキーに逢いたい!」。

すると突如、幼稚園のスタジオが二つに割れ、その背後に巨大なステージが現れます。そこでミッキー&ミニーをはじめとしたディズニーのキャラクターたちと共に、ユーロビートのミッキーマウスマーチに合わせてパラパラを踊るバッキー木村ことキムタク。そのパフォーマンスに魅了され、真似する人が続出したのは言うまでもないでしょう。

『名探偵コナン』のOPでもパラパラを使用


これをきっかけとしてパラパラは、学生を中心に人気を博していきます。特に、イベントサークル・新世代のギャルたちから熱烈に受け入れられ、クラブなどで夜な夜な踊りまくる若者が急増する事態に。最盛期には振り付け講習会も頻繁に行われ、どこも盛況だったといいます。


また、子供向け番組との相性もよかったようで、『名探偵コナン』のオープングで愛内里菜の『恋はスリル、ショック、サスペンス』に合わせて、コナンたちがパラパラを踊るアニメーションが使用されました。そして『ポンキッキーズ』においても、ガチャピンが『およげたいやきくん』のパラパラバージョンを披露するなど、様々なシーンで多用されていました。

今となってはすっかり廃れてしまったパラパラですが、キムタクによって「延命措置」が取られなかったら、存在すら知らなかったという人が多いのではないでしょうか? そう考えるとやはり、キムタクとは時代を動かすカリスマだったのでしょう。
(こじへい)