小倉智昭、行司セクハラに「公表する必要あったのか」 古すぎる認識に批判殺到
「とくダネ!」公式サイトより。

フリーアナウンサーの小倉智昭さんが、大相撲行司が泥酔してセクハラを働いた問題について、「内々の話で留められなかったのか」と発言。セクハラ擁護ともとれる主張に対して、ネット上で批判が巻き起こった。


公表せず内部で処理すべき問題だった?


日本相撲協会は、現役最高位の行司である立行司・式守伊之助が昨年12月の冬巡業中に泥酔して、10代の行司にキスするなどの行為を働いたことを発表した。1月8日放送のフジテレビ系「とくダネ!」では、この問題が取り上げられたが、小倉さんは「日馬富士の暴行事件があったんで、相撲協会も発表したんだろうけど、なんで内々の話で留められなかったのかな。僕はそう思う」「ここまで公表する必要があったのかと思う」と残念そうに語った。

しかし、笠井信輔アナウンサーは真っ向反論。「相撲協会は公表しないこともできたと思う。それで若手の行司さんが『もみ消されようとしている』と考えたなら、被害届を出したかもしれない。そうなると内々のモンゴル事件と同じような行司事件をやるんですかと。同じ道をずっとたどっていく可能性が出るので、『何とかしなきゃ』と正々堂々と公表した協会側の姿勢は正しいと思う」と公表に至った協会を評価した。

小倉さんは納得いかないようで、「被害届を出すような話なのか。警察に行ったって相手にもしないでしょうし」と反論。また、式守伊之助が立行司という高い位にあったことから、「これが表立ったら、ご本人が引退でもしないと、結びの一番で式守伊之助が土俵に上がったら、絶対に『セクハラー!』って野次が飛びますよ。そういう事態を招くことになる」と持論を展開した。

男性間のセクハラを軽視しているからこその発言か


小倉さんの一連の発言に対して、Twitter上を中心に「セクハラを軽んじている」「隠ぺい体質を通せと言わんばかり」といった批判の声が続々と上がっている。また、「男性から男性へのセクハラを軽視している」という旨の指摘もあった。


確かに、今回の問題を単純に“酔った上での失敗”と捉えている人々の中にも、被害者が女性だった場合は考えが変わる人は多いのではないだろうか。業界内でも強い力を持った60歳近い人間が、酔って10代の相手にキスする出来事があった。そのニュースを取り上げた際、キャスターは「内々の話で留められなかったのか」と主張し、むしろ加害した側の今後を気遣うような発言をした……。想像するだけで、ゾッとする世界だろう。被害を受けた側が女性だったら、小倉さんも一連の発言は絶対にしなかったのではないか。

だが、昨夏、性犯罪に関する刑法において、女性のみを被害者としてきた規定が撤廃された。「性犯罪や性的いやがらせは、男から女に行われるもの」という認識は、もはや遅れていると言わざるをえない。60歳近い人間が、立場が遥かに低い10代の相手にキスをしたというのは、性別関係なくアウトだ。

「あんなに胸を強調されたら……」発言にも批判


また、1月9日放送の同番組では、「ゴールデン・グローブ賞」授賞式にて、セクハラへの抗議運動として多くの出席者たちが黒い衣装に身を包んだ出来事が取り上げられた。その際の小倉さんの「確かにセクハラはダメですけど、女優さんにあんなに胸を強調されたら男の人はたまりませんよね」という発言に対しても、「セクハラ問題に声を上げているニュースなのに」とTwitter上で批判が殺到した。

テレビに限らず、メディアというものは、少なからず“情報の受け手の共感を誘う”ことを意識して作られている。おそらく上記で引用してきた小倉さんの発言も、ジェンダーやセクハラといった問題に関心がない層にとっては共感できるものなのだろう。
テレビを見ながら「やっぱりそう思うよねぇ」と頷けるような。

しかし、セクハラを取り巻く歴史、現代の取り組みを鑑みると、やはり小倉さんのような認識は古いと言わざるをえない。そして、古いままの認識を持った人々に対して「やっぱりこう思うでしょ?」と、ただ共感させるだけのメディアに何の価値があるというのだろう。そういった人々に対して、新しい知識を与えた上で改めて判断させることこそが、メディアの役割ではないだろうか。

(HEW)
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