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『エール』未来をつくろう――久志(山崎育三郎)の歌う「栄冠は君に輝く」がすべての人達をひとつに

       
『エール』未来をつくろう――久志(山崎育三郎)の歌う「栄冠は君に輝く」がすべての人達をひとつに
写真提供/NHK

音、久志を羨ましがる

音は、裕一が久志の歌の才能を高く買っていることを「羨ましかった」と言う。歌をやっている音らしさが出たセリフだ。今の音はすっかりおとなしく専業主婦のようになっているが、もともとは、自分も仕事をもって夫と並んで歩きたいと思ってきた人物である。本当は夫の曲で自分が歌いたくて歌いたくて仕方ないだろう。

ところが裕一はいっこうに自作の歌手に妻を推薦しようとはしない。ここ、重要ポイントである。100回まで来て、『エール』のなにがいいかといえば、裕一がどんなに大家になっても、どんなに夫婦仲が良くても、音を贔屓しないところである。裕一は決して自分の仕事に音を誘わず、音も身内のコネを利用しようとはしない。この清潔感は『エール』の大きな美点である。

久志は音と同じ音楽学校の先輩で、ともにレッスンしてきて、音が妊娠して晴れ舞台をふいにしたことも見てきているから、彼女が羨ましいと言うことで、それだけ裕一の心がこもった曲と、久志への信頼感の説得力は増大する。

でもまだ久志は動かない。そこで裕一は――。

甲子園へーー

「また甲子園に行ったの?」と華(古川琴音)。裕一は、久志を連れて甲子園に行き、足を失い野球の夢を絶たれた「栄冠は君に輝く」の作詞者・多田良介(寺内崇幸)の話をし、彼の絶望からの再生を、戦争からの絶望からの再生を、歌にこめてほしいと説く。

「紺碧の空」でも足の負傷で野球を諦めた人物への想いが綴られ、「栄冠は〜」の先取りをしていたのだが、『エール』の世界線でも「栄冠〜」の作詞家は足の怪我で野球を断念していた。これもまた大事なことを繰り返すリフレイン手法。

『エール』がリフレインを多用するのは、物語が、主人公たちのものだけではないという意味の現れだろう。「どん底まで落ちた我々にしか伝えられないものがあるって信じている」という裕一。どん底に落ちたのは、裕一だけじゃない。久志だけでもない。無数の夢を絶たれた人たち。戦争に敗けた日本人たち。すべてである。

「苦しめてしまって本当に申し訳なかった」
裕一は、久志の堕落は裕一が戦時歌謡に誘ったからだと思っていて、それを謝罪する。主人公として裕一はすべての責任を背負わされている。傷ついて、この辛さを誰かのせいにしたくて、誰かにちゃんと謝ってほしくて、そんなひとたちの想いを、裕一が受け止めている。

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朝ドラ「エール」

朝ドラ「エール」

NHK「連続テレビ小説」第102作目のテレビドラマ。窪田正孝、二階堂ふみが、昭和の音楽史を代表する作曲家・古関裕而と、歌手としても活躍したその妻・古関金子を演じる。2020年3月30日~6月26日(放送中断)、9月14日〜11月28日放送。

2020年10月30日のレビュー記事

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