『おかえりモネ』第15週「百音と未知」

第73回〈8月25日(水)放送 作:安達奈緒子、演出:一木正恵〉

『おかえりモネ』第73回 りょーちんが東京へ。よりによって百音が菅波と会う前夜に(どうなるの〜)
イラスト/AYAMI
※本文にネタバレを含みます

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百音(清原果耶)菅波(坂口健太郎)と初めて約束して会うことになった矢先、亮(永瀬廉)が東京にやって来た。「え? ああ、モネ!」「やば、まじでいた」という亮の言い方が現代っ子という感じ。

【レビュー一覧】『おかえりモネ』のあらすじ・感想(レビュー)を毎話更新(第1回〜第73回掲載中)

その前に明日美(恒松祐里)が語った長台詞「人の気持ちなんか、フワフワしたもんなんだよ。
自分が大好きで、相手も自分のこと好きでいてくれる瞬間なんてね、ホント一瞬しかないんだからね。奇跡だからね……この一瞬を逃したら、次の日にはいろんなことが変わっちゃかもしれないんだよ。それで、変わっちゃったらもう、元には戻らない」が百音と未知(蒔田彩珠)に刺さる。言ってみれば「覆水盆に返らず」の現代訳か。

亮の近況

亮はスマホを見ながら歩いてきて、汐見湯の前にたどりついた。百音から住所を聞いていたか。もしくは築地、銭湯、シェアハウスで検索して見当つけて来たか。
優秀な漁師だから勘はいいかもしれない。

ところでなぜ亮は東京にやって来たのだろう。はっきりしたことは第74回を待ちたいが、亀島に母・美波(坂井真紀)の母・横山フミエ(草村礼子)が来たことが原因のひとつであろう。百音の家に父・新次(浅野忠信)と来て、そこにフミエがやって来た。仮設住宅ではなく百音の家で住職・後藤秀水(千葉哲也)もやってきて、震災で行方不明になった美波に関する重大な用件があるようだ。

フミエを待つ間、耕治(内野聖陽)は百音のデビュー映像を新次たちに見せびらかしていた。
そこで百音に医者の彼がいることを知ったときの亮の微妙な表情。亮はいつも何かあると口角をちょっと上げる。あえて微笑もうとするのである。それが余計に切ない。

いつも口角が微笑んでいるように上がっているアルカイックスマイルは鈴木京香もそうなのだが、永瀬廉のそれはより高度で、口角をいかにも微笑みという一定の高さをキープしている感じではない。笑っているかいないかわからない微妙な線が観る者には気になるし、ある瞬間、ふっと上げる意思が観る者の心を動かすのである。
あと、祖母を見るときの微笑みは慈悲の心そのものであった。亮こそお坊さんになるといいように思う。

『おかえりモネ』第73回 りょーちんが東京へ。よりによって百音が菅波と会う前夜に(どうなるの〜)
写真提供/NHK

雅代が亀島に戻っている?

さて。ここで疑問なのは、雅代(竹下景子)が東京に置いてある笛に生えた芽に転生したにもかかわらず、なぜかまだ亀島に意識があること。百音が東京にいるから語りを東京の笛の芽にしたのはいいが、やっぱり亀島でも語りが必要になるのである。

それぞれの気持ち

百音が菅波と会うと知った明日美がそのとき気持ちを伝えるべきと勧めると、百音は「伝えるつもりなんてないよ」と言う。つまり、百音は菅波への気持ちを自覚はしているということである。

「人の気持ちなんか、フワフワしたもんなんだよ〜〜〜」明日美の言葉ももっともで、慎重になり過ぎて壊してしまうこともある。

未知も亮のことを想っているが、明日美と過去付き合っていたらしいことが気にかかったり、百音との仲の深さにもかなわないとコンプレックスを抱いたりして前進できない。



『おかえりモネ』第73回 りょーちんが東京へ。よりによって百音が菅波と会う前夜に(どうなるの〜)
写真提供/NHK

菅波のほうも、百音を大事にしたいと思うあまり、2年7カ月もはっきりした意思表示をしないままになっている。こういう人は保護者たちにとってはありがたい存在である。サヤカ(夏木マリ)も彼の難しい話は理解できなくても彼の生真面目さをよくわかっている。

でも菅波は百音のことばかりでなく、診療所に専念しようか悩み始めていた。ぼーっと上を向いて呆けたような菅波の顔がやばかった。


そんなときに亮が東京へ。よりにもよって百音が菅波と会う前夜に。

百音「入る?」
亮「いい?」
百音「うん大丈夫」
亮「じゃあお邪魔しま~す」

汐見湯がシェアハウスだからこその気安さ。幼馴染ならではの気安さもあるし、亮が人の懐に入り込むのがうまいのだろう。ちょうど明日美と未知が汐見湯にいないというのも……。やっぱり明日美の「人の気持ちなんか、フワフワしたもんなんだよ」のセリフが重みを持つ。

(木俣冬)

『おかえりモネ』をさらに楽しむために♪










番組情報

連続テレビ小説『おかえりモネ

2021年5月17日(月)~

<毎週月曜~土曜>
●総合 午前8時~8時15分
●BSプレミアム・BS4K 午前7時30分~7時45分
●総合 午後0時45分~1時0分(再放送)
※土曜は一週間の振り返り
<毎週月曜~金曜>
●BSプレミアム・BS4K 午後11時~11時15分(再放送)
<毎週土曜>
●BSプレミアム・BS4K 午前9時45分~11時(再放送)
※(月)~(金)を一挙放送
<毎週日曜>
●総合 午前11時~11時15分
●BS4K 午前8時45分~9時00分
※土曜の再放送

出演:清原果耶
内野聖陽 鈴木京香 蒔田彩珠 藤 竜也 竹下景子 永瀬 廉 恒松祐里 前田航基 高田彪我 浅野忠信 夏木マリ 浜野謙太 でんでん 坂口健太郎 平山祐介 塚本晋也 西島秀俊 今田美桜 清水尋也 森田望智 井上 順 高岡早紀 玉置玲央 阿部純子 マイコ 菅原小春
※登場人物のプロフィールやあらすじなど、詳細はこちら

:安達奈緒子
演出:一木正恵 梶原登城 桑野智宏
音楽:高木正勝
主演:清原果耶
語り:竹下景子
主題歌:BUMP OF CHICKEN「なないろ」


Writer

木俣冬


取材、インタビュー、評論を中心に活動。ノベライズも手がける。主な著書『みんなの朝ドラ』『ケイゾク、SPEC、カイドク』『挑戦者たち トップアクターズルポルタージュ』、構成した本『蜷川幸雄 身体的物語論』『庵野秀明のフタリシバイ』、インタビュー担当した『斎藤工 写真集JORNEY』など。ヤフーニュース個人オーサー。

関連サイト
@kamitonami