朝ドラ『カムカムエヴリバディ』第2週「1939-1941」

第8回〈11月10日(水)放送 作:藤本有紀、演出:安達もじり〉

朝ドラ『カムカムエヴリバディ』第8回 悲しい旅に出る安子 開始12分過ぎでかかる主題歌が切ない
写真提供/NHK
※本文にネタバレを含みます

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安子、政略結婚をすすめられる

ラジオから流れるニュースは国家総動員法に基づく生活必需品の統制などに関する不穏なもの。店先で縫い物をしている安子(上白石萌音)は飾り棚にお菓子が少ないことを気にかける。とそこへ金太(甲本雅裕)が見合いの話を持ちかけてくる。
砂糖が手に入りにくくなったので砂糖問屋に嫁にいけというのだ。

【レビュー一覧】朝ドラ『カムカムエヴリバディ』のあらすじ・感想(レビュー)を毎話更新(第1回〜8回掲載中)

「はっきり言うて、これは政略結婚じゃ」と言葉を選ばない杵太郎(大和田伸也)。戦国時代でもあるまいに……だが、この時代にもなお家と家との利害関係に基づいた結婚が行われていた。金太と小しず(西田尚美)もそうだったことが語られる。

ちなみに、杵太郎とひさ(鷲尾真知子)は恋愛結婚。第7回では説明になりそうな場面を説明にしなかった『カムカム』だが、第8回ではいかにも説明を開き直ったように行う。
それが軽いコント仕立てに見えるので結果、説明場面が説明場面ではなくなるのであった。お見事。この回はもう一度、そういういかにもな説明場面がある。

見合いを強要されて思いつめた安子が大阪へ稔(松村北斗)に会いに行った折り、下宿「おぐら荘」の大家さん・小椋くま(若井みどり)が安子に話しかける場面だ。いかにも大阪の元気なおばちゃんという雰囲気のくまは、安子を鈴木という人物の女友達と思い込み、べらべらと鈴木という人物の浮気グセを語る。

その後、稔が現れ、稔がいかに真面目な好青年か、鈴木という人物との対比で語られる。
くまのひとり語りも説明セリフなのだが、くまのキャラと相まって退屈しない。かなりベタだけれど。セリフも途中でぶつっと切られてしまう。

ドラマの進行上、出さざるを得ない説明セリフの場面をどうやって乗り切るか、それが作家の実力であるということについて第7回、8回の2回にわたって痛感させられたわけだが、この回の作家の力はそこがメインでは決してない。そこは前菜。メインは安子と稔の次第に募っていく恋である。


安子、大阪へ

岡山から大阪、いまでは新幹線で1時間ほどだが、1941年だと鈍行で3時間はかかったのではないだろうか。安子は生まれ育った街から初めてひとりで旅に出たのだろう。自転車も乗れなかった安子がどんどん世界を広げていく。でもそれは悲しい旅だった。

安子と稔は再会を喜びながら、映画を観て、稔の行きつけの食堂で蕎麦を食べ、地元の旭川に似た川べりを散歩して、きれいな夕日を見る。稔は着ていたマントを安子に着せかける。

夕日を見ながら英語をつぶやく安子。
ふたりの会話のクライマックスは英語。それはふたりだけの共通言語のようである。つまり「月がきれい」と同じようなことである。それだけ取り出せばシンプルな言葉だけれど、誰がどこでどんな背景をもとに語るかで意味合いが変わってくる言葉。

夕暮れの川辺。よくあるシチュエーションだが、安子がたどたどしく覚えた英語を語るだけで、安子の稔との距離が近づいていることを感じる。
「beautiful sunset」を何度も繰り返すふたり。この言葉が違う意味をもって聞こえてくるような場面だった。真の「キュン」とは、ここまで独自の表現として煮詰めた先にあるものではないだろうか。



稔と別れてひとり汽車に乗り、稔のマントにくるまれながら泣いてしまう安子。汽車の走行音と入れ替わるように主題歌「アルデバラン」の前奏が鳴り始め、そのままタイトルバックへ。ドラマの開始12分過ぎではじまるタイトルバックはエンディングのようであった。


<君と私は仲良くなれるかな この世界が終わるその前に>というやや不穏ながら切実な歌詞が、戦争が激化してきている社会情勢と重なって心配になる。でも岡山に着いた安子の前に現れた人物は……。稔がいかに安子をよく見ているか。夏祭りの時も安子の髪飾りがなくなっていることにすぐに気づいていた。じつに誠実な人物である。

朝ドラ『カムカムエヴリバディ』第8回 悲しい旅に出る安子 開始12分過ぎでかかる主題歌が切ない
写真提供/NHK

安子、映画館へ

安子と稔がお正月に観ようと約束していた映画。モモケンこと桃山剣之介(尾上菊之助)が「黍之丞、見参」(岡山→吉備団子→きび?)とカッコよく決める時代劇。モモケンの太刀さばき、足さばきが昔の時代劇俳優の基礎ができているように見えるのは伝統を引き継ぐ歌舞伎俳優ゆえであろう。体と刀が一体化したように流れるような華麗な殺陣である。最近の映画はカットを割って迫力を出すが、昔の時代劇は俳優の全身の動きを長回しでちゃんと見せ続ける。そういう雰囲気がよく出ていた。ついでに言うと、映画を観ながら観客が拍手しているところも古き良き映画館らしい。

尾上菊之助は歌舞伎界の名門・尾上家に生まれ、寺島しのぶを姉に持つ。話題になった「ナウシカ歌舞伎」こと「新作歌舞伎『風の谷のナウシカ』」(19年)を企画から立ち上げ、昼夜通しで一挙に上演、自らナウシカを演じるという偉業も行っている。ナウシカ役からもわかるように女形に定評がある俳優だが、モモケンの二枚目っぷりもきまっている。
(木俣冬)

『カムカムエヴリバディ』をさらに楽しむために♪



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番組情報

連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ

2021年11月1日(月)~

<毎週月曜~土曜>
●総合 午前8時~8時15分
●BSプレミアム・BS4K 午前7時30分~7時45分
●総合 午後0時45分~1時0分(再放送)
※土曜は一週間の振り返り
<毎週月曜~金曜>
●BSプレミアム・BS4K 午後11時~11時15分(再放送)
<毎週土曜>
●BSプレミアム・BS4K 午前9時45分~11時(再放送)
※(月)~(金)を一挙放送
<毎週日曜>
●総合 午前11時~11時15分
●BS4K 午前8時45分~9時00分
※土曜の再放送

制作統括:堀之内礼二郎 櫻井賢
:藤本有紀
プロデューサー:葛西勇也 橋本果奈 齋藤明日香
演出:安達もじり 橋爪紳一朗 深川貴志 松岡一史
音楽:金子隆博
主演:上白石萌音 深津絵里 川栄李奈
語り:城田優
主題歌:AI「アルデバラン」


Writer

木俣冬


取材、インタビュー、評論を中心に活動。ノベライズも手がける。主な著書『みんなの朝ドラ』『ケイゾク、SPEC、カイドク』『挑戦者たち トップアクターズルポルタージュ』、構成した本『蜷川幸雄 身体的物語論』『庵野秀明のフタリシバイ』、インタビュー担当した『斎藤工 写真集JORNEY』など。ヤフーニュース個人オーサー。

関連サイト
@kamitonami