老後はどの程度の節約をすれば破綻しないのか。家計再生コンサルタントでFPの横山光昭さんとFPの関口博美さん夫婦は「生活費を削減することで、老後資金の不足はほぼ解消できる。
収入だけで暮らしていければ、老後資金を取り崩す必要もない。必要な削減割合を紹介しよう」という――。
※本稿は、横山光昭・関口博美『おふたりさまの老後資金は「これ」で増やす』(小学館)の一部を再編集したものです。
■効果を得られやすい「支出削減」
老後資金を増やす方法は、「支出削減」「収入確保」「資産運用」の三つに尽きます。中でも多くの人が取り組みやすく、効果を得られやすいのが支出削減です。
新NISAが始まり、資産運用に目が向きがちですが、家計のあり方を見直し、支出を削減していくほうが、効果は確実に得られます。何よりリスクがありません。
定年間際の方の家計を見ていると、住宅ローンの返済も終わり、子どもが独立したにもかかわらず、現役時代のあり方と何ら変わらない収支の方が大勢います。
大きな支出がなくなった安心感からか、ムダ遣いが膨らんでしまっているのでしょう。「定年後は生活費が自然に減る」と当て込んでいたのに、老後資金が予想以上のペースで減っていく……。
現役時代に貯めた資金で老後は十分に暮らせそうな方、たくさんの退職金や企業年金を受け取れるのに80歳までに破綻してしまいそうな方。老後の家計のあり方は十人十色、千差万別ですが、支出を見直すことの大切さは改めて認識させられます。

では、老後はどのくらい支出を減らせばよいのでしょうか。総務省の家計調査のデータをもとに結論から申し上げると、一般的に生活費などの支出を「2割」削減できれば、老後資金の不足はほぼ解消できると思われます。
この「2割」という数字を厳しく感じる方もいらっしゃると思います。ですが、実行してみると意外に現実的な数字だと実感できます。
■毎月の収入だけで暮らしていける
図表1はふたり以上の世帯のうち、65歳以上の無職世帯の家計収支をまとめたものです。
65歳以上全体を見ると、「実収入」から社会保障や税金などの「非消費支出」を引いた「可処分所得」は、23万1198円。一方の「消費支出」は26万4149円のため、収支は3万2951円の赤字となっています。
この消費支出を工夫して2割削減できれば、消費支出は21万1319円となり、収支は1万9879円の黒字に転換します(図表2参照)。これが1年続けば年間23万8548円、10年なら約239万円、20年なら約477万円もの黒字となります。
毎月の収入だけで暮らしていけるわけですから、老後資金を取り崩す必要はありません。単純な計算ですが、生活費を削減することの重要性がご理解いただけると思います。
■20年で約858万円の赤字
一方、仮に2割の支出削減をしなかった場合、65~69歳は毎月5万1287円、70~74歳は同3万7245円、75歳以上は同2万7225円の赤字が続きます(図表1参照)。
この数字に基づき、65歳からの20年間の赤字の総額を試算すると、約858万円です。
収入を増やしたり、貯蓄を切り崩したりしながら、この赤字をまかなわなければなりません。医療費や介護費、住宅リフォーム代などがかさめば、さらに数百万円が必要となるでしょう。
私たちは「老後に必要な資金はいくらか」と聞かれたとき、生活費を補填するお金に加え、娯楽や医療・介護、住宅リフォームなどの臨時支出に対する予備費として、夫婦で1000万円ほど準備しましょうと伝えています。
さらに20年分の赤字約858万円を加算すると、少なくとも1858万円以上は準備したいというのが私たちの試算となります。
■老後資金は3000万円が目安
ちなみに、かつて世間を騒がせた「老後2000万円問題」は、家計調査の高齢者の赤字の平均額が夫婦の場合に毎月5万5000円ほどあり、30年分で計算すると約2000万円になるという話でした。
これに予備費の1000万円を加えると、老後資金は3000万円ほど必要とも考えられます。
一方、収入の柱となる「年金」の受給額は働き方や加入期間により大きく異なります。先の表(図表1)にある65歳以上の社会保障給付は21万3731円。これは平均的な数字ですが、じつはご自身がどれくらいの年金を受け取れるか、全然把握していない方が少なくありません。
まだ受給年齢に達していなくとも、年金加入の実績を記す「ねんきん定期便」を見れば、50歳以上の方は具体的な受給額がわかります。それにより、老後の生活費の使い方も検討しやすくなります。

■家計管理で老後の不安は解消できる
詰まるところ、赤字がいくらになるかは収入と支出のバランスに尽きます。「老後2000万円問題」がクローズアップされた2017年の指標や、家計調査の数字と比較してもあまり意味はありません。支出削減、収入確保、資産運用にコツコツ取り組むのが鉄則です。
ところが、支出削減が「老後資金不足の解消の決め手になる」と伝えても、浮かない顔をする方がいます。そんな方たちは、生活費を削減すると聞くと、いろいろな予算を切り詰めた”ケチケチ生活”になると誤解しがちです。
しかし、支出削減はそう難しいことではありません。見直しの手順やコツを間違えなければ、現役時代の生活レベルとさほど変わらずに暮らせます。
老後資金が不足するのではないかという不安は、老後の暮らしがよくわからないことによる漠然としたものに過ぎず、きちんと家計を管理していけば、不安の大部分は解決できるものです。
■〈関口の見方〉老後資金に楽観論は禁物
「老後2000万円問題」が騒がれる以前から、それ以上の老後資金が必要だと指摘する専門家はたくさんいました。年金だけでは生活費が不足するほか、医療や介護などの臨時支出に備えなければならず、これらを合算すると3000万円ほど必要だという声がもともと多くあったのです。
老後資金を考えるうえで大切なことは、「何とかなる」「きっと大丈夫」といった楽観論ではありません。必要なことにお金をかけつつも、さほど必要でない支出をあぶり出して削減するという”お金の使い方のメリハリ”です。

削減するべきか迷う支出も、思い切って削減してみると、すぐに慣れて問題なく生活できます。「なくてもいいかな」と思えるものから試しに減らしてみましょう。
自分ではなかなか気づけない部分もあるので、夫婦で話し合いながら進めると、効果は倍増するかもしれません。

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横山 光昭(よこやま・みつあき)

家計再生コンサルタント、株式会社マイエフピー代表

お金の使い方そのものを改善する独自の家計再生プログラムで、家計の確実な再生をめざし、個別の相談・指導に高い評価を受けている。これまでの相談件数は2万6000件を突破。書籍・雑誌への執筆、講演も多数。著書は90万部を超える『はじめての人のための3000円投資生活』(アスコム)や『年収200万円からの貯金生活宣言』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)を代表作とし、著作は171冊、累計380万部となる。

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関口 博美(せきぐち・ひろみ)

ファイナンシャルプランナー、DCアドバイザー

看護師を経て、夫・横山光昭の運営するマイエフピーに入社。確定拠出年金(iDeCo、DC)をはじめ、公的・私的年金制度、教育費などの分野を得意とする。6児の母として、育児と仕事を両立してきた。

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(家計再生コンサルタント、株式会社マイエフピー代表 横山 光昭、ファイナンシャルプランナー、DCアドバイザー 関口 博美)
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